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第13話 村娘ミナの起業

異世界に来てしまったミナ。今までのMBAのキャリアがパーに…。でも、ミナはこの世界で自分ができることを探した。そして、農民のための野菜一括買い取りを始めることにした。

すると、役所が協力してくれて…。

一方、村人のクルムは、ミナを助けているカイルに恨みを持っていた。そして、ミナの邪魔をする。


 身分証明を得たミナは、タンブリーの役所内の商業登録課で商会の登録をすることになった。


 重厚な部屋の中で、担当者がミナにペンを渡した。立派な口髭を蓄えた、いかにも役人という雰囲気の中年の男性職員だ。

 ミナはそこに名前や会社名を書いて渡す。


 しばらく待たされた後、職員が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらがその登録証となります。これで登録は完了です。」

 担当者は平たい長方形の石の上に商会名が書かれたものをミナに渡した。


「ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします」


 ミナは膝を曲げてスカートの端をつまむこの世界式の挨拶をしてお礼を言った。


 これでやっと、あちこちと契約ができる!


 役所のロビーでカイルが待っていた。


「見て! 登録証よ!」

「テンソル商会? …悪くない」

「でしょ?」


 ミナは得意だった。道はまだまだ遠いのだが、なんとか入り口には立てた。

 プレゼンした商会からの返事は今月中にはもらえるはずである。


 ミナは村役場に寄って、集積所や保管庫を見せてもらい、荷馬車の寸法を測り始めた。


 木箱がいくつ載るのか、どのようにすればより野菜の傷みが少ないか、いろいろ考えなければいけない。


(専用馬車がほしいな。雨除けがついていて、サスペンションのある…)

 それは贅沢な望みだ。


 道々、カイルに聞く。


「春になると、カイルは忙しくなるよね。もうこうやって、付き添いしてもらえなくなるよね…」


「そしたら、レイに来させればいい。まだレイは畑の仕事しかしてないんだからさ」


「うん…そうね」

 ちょっぴり残念な気がした。


「やっぱり、一人で歩いて街まで行くのはだめ?」

「ダメ。危険なんだから。それがわかっていない」


「誰が襲うの?」

「そりゃあ、いろいろ襲うだろ」


「魔物とか?」

「ん~、変な男とか」


「そんな人、いるんだ…」

「ほら、そういうところ。頭が天然なんだから」


「頭が天然…」


 コンサル会社で新人の頃にも「天真爛漫はやめろ」と言われたことがある。

 ビジネスにおいて「無知、天然、天真爛漫は失敗の元」だと教えられた。

 実務についた3年間の間になんど怒られたことか。


(仕方がない。一人でこっそり移動しようかと思ったけど、カイルの言うことを聞くか。私はなんといってもこの世界ではアウェイなんだから…)


 家に帰ると、ミナは書字板でせっせと計算する。


「ええっと…。私の取り分は…」

「月に500個扱うとしたら…」

「あ、荷馬車一台じゃ足りない…」


* * *


 カイルは腹を立てていた。クルムがミナに対して何かしたことはわかっていた。


 ミナはそれを語らなかったが。リネットが事業に参加していたのに、それをわざわざ断ったというのはクルムに原因があるに違いなかった。


 ミナを家に送り届けると、彼はクルムに会いに行った。

 扉をどんどんと叩いて、クルムを呼ぶ。


「クルム!」

 ドアが開いて、クルムが出て来る。


「何しに来たんだよ…」

 クルムはドアの取っ手を片手で持ったまま、カイルをにらむ。


「お前、ミナに何をしたんだ」

 クルムは黙っていた。そして、「フン」と顔をそむける。


「なにもしてねぇ。お前に関係ないだろ」

「関係ないわけないだろ。お前、ミナに余計なことを言っただろ!」


「余計なことなんか言ってねえ! 必要なことだけ言ったんだよ」

「俺がファルクの仇ってか?」

「事実だろ」


「お前、まだそんなこと言ってんのか…」

「ファルクは帰ってこねえんだよ!」


 そう言って、クルムはドアをパタンと閉めようとした。それをカイルが取っ手を引っ張って阻止する。


「いい加減にしろよ。俺を恨むのは筋違いだろ。それでも俺も我慢してきたが、ミナは関係ない。お前のおふくろさんだってミナの事業に参加したかったのに、お前がじゃましたんだろ!」


「うるせえよ! お前に関係ない!」


 クルムはバタンと大きな音を立てて力いっぱい扉を閉めた。


「今度ミナにおかしなことを言ったら、次はない。……それだけだ」

 カイルは扉の向こうに聞こえるように言った。


 クルムは黙ったままだった。扉の向こうで扉をしっかりと閉めている。

 カイルはそのまま帰って行った。

 

* * *


「やっと、商会本部の了承を得ました」


 そう言って、トージャーは村の役場にやってきた。

 村長と副村長、ミナと最終的な詰めをする。


「こちらの取り決めで間違いはないでしょうか」


 貴重な紙を使って、トージャーがまとめた条件が書いてあった。

 それをみんなで一つ一つ確認していく。最終的な合意がなされ、やっと契約書にサインをする段階になった。


 契約書は羊皮紙を使う。これはかなり高価だが、役所がお金を出してくれた。


 三者が契約書にサインして、契約が成立した。


(こ、これがこの世界で初めてもらった契約…!)

 これでビジネスができる。やっと自分らしく生きられる!


そのことが嬉しかった。


これは、ひとりの女性が、経済の知恵で国を侵略から守るまでのストーリー。長いお話ですが、ぜひお付き合いください!


ブックマークしてくださると、とても喜びます!! よろしく!

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