第11話 村役場の嬉しい提案
異世界にやってきたミナ。得意のMBAの知識もまったく使えず…。
「この世界は私に何を求めているの?」
そこから始まり、ミナはこの世界の経済をもっと発展させようと考えた。その最初の試みが「野菜一括買い取り」だ。農協のような仕組みを作れば、きっと喜ばれる…。そう考えたのだが…。
商会との打ち合わせ、農民への説明会をしたあとは、村との打ち合わせだ。
プレゼンの6日後、ミナはドナオンの手配で、村の担当者に会うことになっていた。
ミナは一人で村役場にやってきた。ドナオンが案内してくれて、会議室に通された。
村長ガルベルトは意外にもドナオンと同じくらいの年齢で、きちんと髪を七三に整えた30歳前後の立派な紳士だった。
聞くところによると、村長と言っても村の出身ではなく、村の所有者である領主の息子アンドリオンから派遣された行政官なのだそうで、週に二度、役場にやって来る。
実質の村長は副村長のジャービスで、こちらは50代である。
顎髭を蓄え、日に焼けた肌の農民あがりの男だ。二人でミナに対応する。
「早速ですが…。ドナオンから報告を受けていますし、書類も提出していただいています。村の施設を借りたいということですが…」
「はい」
ミナはまだ許可が下りるかという結論は聞いていない。
「参加農家は11軒と聞いています」
「はい、今のところ、その通りです」
「村としては、一部の者、あるいは特定の営利企業に村の施設を貸すというのは問題があります。公共性が必要なのです。それはおわかりでしょうか?」
「はい」
「ご存じのように、村の人口は減っています。若者はタンブリーに出て行ってしまうので…。老人ばかりが村に残ります。ですから、この事業は意味があるものだと思っています。
協力はしたいのですが、先ほど述べたように、村の事業でないうちは、特別扱いができません。
ということで、ご相談なのですが、これを村の事業とさせていただけないでしょうか。
ミナさんが商会を設立し、村がそこに事業を委託する、という形です」
「え? …ということは…」
(つまり、第三セクター方式か…)
「この形でしたら、村の荷馬車や机、倉庫などをお貸しできます。使用料は粗利の1割でいかがでしょうか」
(それはかなりラッキー! 荷馬車が借りられる!)
これはミナにとって悪くない条件だ。
役所が参加してくれれば、村人にとって安心できる要素だ。
村人に不満があれば、役場が間に立ってくれるし、支払いも村から支払われるので安心だ。
その安心感による参加者の積極的な増加を考えれば、ミナの心の負担はかなりラクになるだろう。
(少なくとも、私という存在がアウェイじゃなくなる…)
これはちょっぴりうれしかった。
* * *
ミナはいよいよ、会社設立の準備にかかった。
それにはまず、身分証明書をもらわなくてはいけない。
翌朝、早速カイルとタンブリーにある教会へ向かった。ミナにとっては、初めての教会だ。いったい何が祀られているか楽しみである。
カイルが道々説明してくれたところによると、ここの教会は五神道というもので、五つの神を祭る教会なのだ。
その五神とは、太陽、月、水、火、土なのだ。太陽が主神で、次は月、あとの三つは同列である。それを聞いて、ミナはちょっと安心した。
(日本に似てる…)
アンモダリ教会は天井が高く、祭壇はない。
ただ、正面の壁にシンボルが大きく掲げられている。
カイルがミナの保証人になり、彼の家の一員であるということで、身分の登録をお願いした。
導師様の指導で正式な礼拝の作法で五神にそれぞれ祈りをささげると、合格となり、信者として認められる。
そして、教会に名前を登録され、お布施を支払って証明書のような石の札をもらう。
なにやら数字と文字の混ざった長い文字列が書いてある。
これをもらったら終わりだ。役所での手続きもこの番号で通るらしい。
「カイル、ありがとう。いつも助けてくれて…」
ミナは心から感謝した。カイルがいるおかげで、本当に助かっている。
「ミナは村を助けてくれるんだろ? 期待してる」
「うん、頑張るわ!」
カイルは微笑んだ。
石の札を見ながら、ミナは思った。
(今やっと、この世界に足を付けたってとこ?)
今まで、自分はこの世界の幽霊のようなものだった。存在しているようで、存在していなかったのだ。
これは、ひとりの女性が小さな事業から始めて、どんどん国家戦略を考え、最終的には侵略から国を守るというお話。長いお話ですが、ぜひお付き合いください。
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