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大迫力のミナの技にバンリオルもびっくり

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で認められ、ブリア侯行政顧問となった。ミナはブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。ミナを保護する大商人バンリオルは、ルーガン商会の残党に取り付け騒ぎを仕掛けられ、あっという間に国の崩壊の危機に発展した。ミナの「国家銀行」案を国王は承認し、王弟レオストを銀行に派遣する。しかし、バンリオル銀行は民衆に取り囲まれ、ミナたちはたどり着くことができなかった…。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください!


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!

「ミナさん!」

 バンリオルはミナの手を支えた。カイルも振り返ってそれに気づく。


「ニキール、走れ! 先に行って、護衛を呼んで来い」

 カイルが喧噪の中で叫ぶ。

「わかった!」


 ニキールは人込みをかき分けかき分け、どんどん走って行った。


 馬車から離れれば、バンリオルの顔を知っている者はそういないはずだった。

 しかし、後ろの群衆の中から声がする。


「あそこ! バンリオルよ!」

 女の声だった。女が指さして群衆を扇動する。


 すると、群衆たちが後ろから追いかけてきた。カイルは前にいる。後ろにはミナしかいない。


(私がボリックさんを守る!)


 ミナはバンリオルの前に立ち、一歩前に出ると、民衆から伸ばされた腕を次々と合気道の技で倒す。

 あっという間に3人を倒した。ミナはすっくと立ち、怒鳴る。


「皆様がた! わたくしを誰だとお思いなの?! 無礼は許しませんよ!!」


 とミナが大声で啖呵を切った。扇を出して、扇で指さす。

(『誰だ』と聞かないでよ…)と思いながら。


 貴族の華奢な令嬢が大きな男たちを3人も軽々とあっという間に投げ飛ばしたのを見て、民衆は唖然として止まっている。


「ま、まほう…つかい?」

「か、かぜまほう?」


 誰かが言うと、次々におののいて後ずさりする。何か間違ったものを見たかのようだ。

 バンリオルも呆然としてミナの後ろ姿を見る。


「何か人違いをしておいででは?! お引き取りください!」


 というと、わざと大きくマントをひるがえし、前を向く。

 熊を追いはらうには上着を脱いで大きく見せろ、というアレだ。


「さあ、まいりますわよ!」


 そう言って、あたかも自分の従者の腕をつかむように、バンリオルの腕を乱暴にがっしりと掴み、彼を引きずるように堂々と歩いていった。


 民衆は止まったまま、呆然と見送る。

 堂々とした態度のミナに、すがりつくようなバンリオルの姿を見ると、誰も彼をバンリオルだとは思わない。


 カイルは後方にまわり、民衆をけん制しながら、二人を前に進めた。


 ミナがプンプンとした顔で歩き、さも当然のように「お下がりくださる?!」とビシッと言いながら、扇で左右に「散れ」と合図をするので、前にいる民衆も道を開ける。


 非常識なものを見ると、皆、頭が回らなくなり、さっきまでの感情がどこかに飛んでしまうのだ。


 そうしていると、ニキールが商会員たちを5,6人連れて戻ってきた。そして、ふたりを取り囲んで歩いて行った。本社の裏口から中に入っていく。


 そして、そこからはふたりともぐったりとして応接間に入って椅子に倒れるように座る。


「ふう…」

 汗をぬぐうバンリオル。


「なんとか戻れましたわね」

 緊張がまだ解けないながらも、目と口元だけは茶目っ気のミナ。


「ミナさん……。ブッ、アハハハ! さすがです!」

 緊張がほぐれると、バンリオルは涙目で爆笑を始めた。


 カイルもこらえきれず噴き出した。

「ミナは天然だから…」


 と、ひとこと小さな声で言った。


 カイルは、かつてミナがクルムを圧倒したときのことを思い出していた。あのときもものすごい迫力だった。


「なんですかな、あの技は。カイルから学んだのですか?」

 ミナはちらりと斜め上に目線を上げ、カイルを見た。


「いいえ、旦那様。私がミナから教わりました」

 ミナはその美しい言葉遣いに目をみはる。


 その声は落ち着きに満ちていて、いつもより数倍清涼な声に聞こえた。

 それが嬉しくて、ミナはカイルを愛情深いまなざしでみつめる。


 しかし、バンリオルはその言葉に驚いて、驚きの表情でミナを見た。

「…ミナさんの技?」


 その言葉でミナは我に返る。


「オホホ…。ほんの座興ですわ」

 そう言って扇で口元を隠してごまかした。


「会長。銀行の前には王都警備兵が並んで、銀行業務は停止しております」

 番頭が報告した。


「そ、そうか…。なら、預金は守られたな」


「はい。これからレオスト殿下が儀式をなさるということで、台座などが用意されております」

「そうか。ではもう取り付け騒ぎは起こるまい」


 午後3時頃、遠くから角笛が鳴る。

 一度。プオー……。

 二度。ブオー。

 三度。バオー!

 街のざわめきが止まる。


「会長、レオスト殿下が到着されます。銀行に参りましょう」


「わかった。…ミナさんはここでお待ちください。カイル、ついてこい」

「はい!」

 ふたりは出ていった。



 通りの向こうから、近衛兵の隊列が現れた。中央には王国の旗。群衆が自然に道を開く。

 立派な馬車が中央を通る。その中に王弟レオストがいた。


 王家の紋章のついた馬車が銀行の手前で止まり、従者が馬車を降り、扉を開けて貴人が下りるのを待つ。


 赤と金のモールで飾られた軍服のレオストが、堂々と馬車から降りる。そして、銀行の前に置かれた台座に上る。

 そして、周りに集まった群衆をゆっくりと見回した。


 侍従がそばにやってきて、丸められた羊皮紙を渡す。赤い封蝋を破り、レオストはその羊皮紙を広げた。


「王弟レオストである。この事態の収拾に参上した。国王アルースト陛下の王命を読み上げよう」


 群衆は一言も発せず、レオストの言葉を待つ。

 読み上げが始まる。よく通る大きな声で高らかに言う。


「一。王国はバンリオル銀行の支払い能力を確認した」

 一つ言うと、レオストは群衆を見て、「聞いたか」と言わんばかりに見渡す。


「二。緊急時、国庫は当該銀行に対し必要な流動性を供給する」

 民衆は互いに顔を見合わせる。


「どういう意味だ?」

 こそこそささやく。レオストはそれを無視して続ける。


「三。銀行の支払いは国家の信用のもとで継続される」

 誰も何も言わない。よくわからないが、支払いが継続されるということはわかった。


「四。虚偽の破綻情報の流布は国家信用を害する行為とみなし、厳罰に処する」

 レオストは羊皮紙を少し下げ、声を張り上げた。


「よいか! この度の騒ぎは、虚偽の破綻情報である。これ以上、うそ偽りを広めるものは、処罰されると心得よ!」

 そう言って、レオストは羊皮紙を巻き上げた。


「そのほうらによくわかるよう、後で札を立てておく。二度とこのような騒ぎを起こすな。以上だ」


「か、かねは?!」

 誰かが声を上げた。誰かの後ろに隠れたまま、思わず叫んだのだ。


 レオストはその声にきちんと答えた。


「金は十分に用意されている。それを国王陛下が保証するとおっしゃっておられるのだ。引き出したいものは引き出すがいい。

 しかし、引き出して盗まれるより、銀行に預けておく方が安心であろう。虚偽に騙される愚か者になるな」


 レオストはそう言った。

「お、おお…。王様の保証…」


 群衆から安堵の声やため息や泣き声がどっとあふれた。


「なら倒れん」

「国がついているなら安全だ」

 口々に安堵の声が漏れる。


 レオストが壇上で言う。

「皆の者、安心せよ。アラゴンキアは安泰だ。王国の信用は揺るがぬ。皆も安心して商いを続けるがよい」

「おお~!!」


 レオストは壇上を降り、銀行内に入っていった。


なんとか、バンリオルは守られそうです…。しかし、バンリオルもこのままでは終わらない…。


よかったら、ブックマークをしてくださると喜びます! m(__)m


用語集

ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て起業する。ブリア領主にブリア侯行政顧問に任命される。合気道が得意

ボリック・バンリオル…大商人でミナの知恵を高く評価している

カイル…ミナを助けた冒険者で恋人。今はバンリオルの私兵

ニキール… バンリオルの番頭

レオスト … 王弟。アル―ストの弟

クルム … ミナの住む村の村人でミナが合気道で倒した

アラゴンキア… ミナの住む国

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