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突然の襲来で、会場騒然 (第83、84話)

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で起業する。ミナの賢さに気づいたブリア領主アンドリオンはミナを行政顧問に迎えた。ミナは、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。その第二段階として、外国商人が泊まれる高級宿の入札会を開催した。

 その中でも隣国イルマランの商会は、金融操作を仕掛ける様子がうかがえ、ミナたちは緊張するのだった。


 このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください!


 初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


「しかし…。なんとも腹立たしい。このような脅しを受けるとは…」

 バラントンの言葉に、「う~む」と3人で唸る。


  確かにこのままでは相手の言いなりだ。


「とりあえず、我々が今できるのはそのくらいでしょう。そして、王都に戻り、財務庁金融部の知恵を借りねばなりますまい」


  セグリオはジオルダンを連れて王都に帰らなければならない。そのときに金融の相談もするつもりだ。


「いずれにしても、国際港として繁栄するならば、金融の仕組みに関してはきちんとした制度を作る必要がございますね」

 とミナも思う。


 戦争は剣だけではない。金融でもできるのだ。

 そもそも自由都市を作るというのは金融で国を守ること。金融で国を守れるならば、金融で国を殺すこともできるのだ。


 そう思うと、ミナはゾクッと背筋が寒くなった。

(私はまだ、金融の本当の恐ろしさがわかっていなかった…)


 自分のあまりの無謀さに、いまさらながらあきれる。この二人のベテラン官僚がいてくれなければ、自分は浅はかな考えでアラゴンキアをつぶしていたのではないかと思うとぞっとした。


  為替戦争は大変な問題だ。金融の知識がないものが手を出してはならない。

  いずれは取り組まなければならない課題だったものが、思いがけず早く表面化したということなのだ。


「で、どのように言いますかな? セグリオ卿。奴が持っておる魔道具、あれを逆に利用できないか?」

「つまり、イルマランの意図をきちんと制限しておく、ということですな? ふむ。やってみましょう」


 ミナにとっては頼もしいベテラン官僚たちなのであった。



 再び応接室に呼ばれたエルバンは、椅子に座って言葉を待つ。


「待たせてすまぬ。我らだけでは金融の知識が足りぬのでな」

  セグリオは相手にこちらをわざと侮らせる言葉を言う。油断を引き出すのだ。


「で、もう一度確認したいのだが、そなたの意図は、まず国際交流のできる宿を建てたいということであったな?」


「はい。交流の場と両替商の設備のある宿でございます」

「両替商の設備がついている宿なのだな」


 セグリオは「設備」という言葉をゆっくり発音した。


「はい。そうでございます」

「で、その両替商はこの度の宿の入札では許可は下りぬことは理解していると申したな」

「はい、申しました」


「両替商の許可は下りないまま、両替商の設備のある宿を作りたい、ということなのだな」

「……さようでございます」


「ふむ。理解した。では、宿の建設については後日の落札発表で結果を知らせよう。そして、両替商の出店に関しては、別に入札を考えるゆえ、その発表を待つが良い。それでよいな?」


「は、……結構でございます」

 話を終え、エルバンは立ち上がり、ドアに向かう。


 ドアの前で振り向いて、ひとこと言った。

「両替商入札のお知らせを、イルマランの全商会を代表して、心よりお待ちしておりますぞ」

 一礼すると、彼は出ていった。


  パタリとドアが静かに閉じられると、3人は再び、ため息をついた。


「ありがとうございました。セグリオ卿」

 ミナは冷や汗をぬぐう。


「ジオルダンの言葉にも驚きましたが、このモーカドールも侵略を狙っているとは…。油断ができませんね。おふたりがいらっしゃらなければ、金融侵略が始まっておりましたわ」

 とミナはふたりの官僚に向かって頭を下げた。


「国際港として成長するためには、通らねばならぬ関門ですな。その時期が早く来たと言えるでしょう」

 セグリオは腕を組み、固い表情で頷く。


「しかし、この時間稼ぎがいつまで持つか…。急がねばなりますまい」

 バラントンも厳しい表情で二人に言うのだった。


(国はこうやって水面下で守られる。問題が表に出てきたときにはすでに遅いのだ。前の世界にいたときには、そんなふうに官僚たちが国を守っていることに気づきもしなかった…)


  ミナは、自分がいつの間にかとてつもない戦いの最前線に身を置いていることにようやく気づいたのだった。



 第84話 落札の勝者



 港湾庁の広間には、多くの人々が集まっている。各商会の代表はもちろん、その部下たち、護衛たちだ。それに次回の入札に参加を検討している他の商会の者たち。


 そして、宿の建設が始まれば必要となる、建材を扱う商会の番頭たち。

   人夫を手配する元締め。落札会は誰でも入れるよう、公開されている。

  ある意味、聴衆が証人になるからだ。


  そして、ミナたち3人を守る護衛たちもその中に潜む。

 そんな人々が大勢集まる中、ミナとセグリオ、バラントンは入場した。


 ざわついていた会場が静まる。


 アラゴンキアの紋章を織り込んだタペストリーの前で、3人は机についた。その後ろには王府派遣の衛兵が10人並ぶ。ミナを真ん中にして、向かって左にセグリオ、右にバラントンだ。


 正面には少し離れて椅子が並べられ、そこに各商会の代表が座っている。始まるとわかると、バラバラしていた部下や護衛が代表の周りを取り囲んだ。


「皆様、お集まりいただき、ありがとうございます。わたくしはブリア侯行政顧問ミナでございます。これから、国際自由港を目指すコブルーにおいて最初となる、宿の落札発表会を行います」


 ミナは緊張しながらも、声をしっかりと張り上げた。


「最初に申し上げました通り、私どもは、どの提案が一番この港に利益をもたらすかを考慮し、各区画に最適なものを選ばせていただきました。コブルーで大切なのはコブルーの法の力であって、他国の支配力や財力ではございません。そのうえで、落札者を発表いたします」


 会場は静まり返り、3人の様子に目線が集まる。

 セグリオが書類を持ち上げ、立ち上がって発表を始めようとする。


 ミナはそのとき、目の前に座るジオルダンが、目を泳がせたのを見た。


 そして、そのとき、数人の船乗りたちが、どどっと広間に入ってきた。

「な、何事だ?!」 

 バラントンも立ち上がり、飛び込んできた船乗りたちを見る。


「大変だ~! 今、港に上がってきた商船の船乗りたちから報告が! モーガダイの船が沖に大量に並んでいると。武装船だ!」

「な、なんと?!」


 一挙に会場がざわつく。

「それはどういうことだ?!」

 バラントンが怒鳴るように言う。


 すると、ジオルダンが立ち上がる。


「決まってるじゃねえか。グリダッカルがモーガダイをついに説き伏せたってこったよ。この港は襲われるぜぇ!」

「な、なんだと?!」


 ハチの巣をつついたような騒ぎとはこのことだろう。

「え、衛兵! 港湾局長に知らせよ!」


 セグリオが怒鳴る。


(いったい何が起きたの?! 戦争が始まるってこと…?!)

 ミナはどう対処していいかわからなかった。

急展開の入札会。いったいコブルーはどうなるのか?

次回は、思わぬ展開に…。


よかったら、ブックマーク、お願いします…m(__)m


用語集

ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て起業する。ブリア領主にブリア侯行政顧問に任命される。

セグリオ… 王都から派遣された商務官僚

バラントン … ブリア領主から派遣された補佐官

ジオルダン …元海賊のトガリア商会長

アラゴンキア…ブリア領のある国

イルマラン…アラゴンキアの西の隣国

エルバン…イルマランのモーカドール商会の代表

コブルー…ブリア領内の港で、ミナが自由港にしようとしている

モーガダイ … アラゴンキアの東にある国で傭兵船団を持つ

グリダッカル…アラゴンキアの北にある国で侵略者。


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