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コブルーの守護者 (第82話)

MBAを取得し、アメリカで働いていたミナは、異世界で起業する。ミナの賢さに気づいたブリア領主アンドリオンはミナを行政顧問に迎えた。ミナは、ブリア領を侵略から守るため、コブルー港を自由港とする構想を立てる。その第二段階として、外国商人が泊まれる高級宿の入札会を開催した。すると、元海賊だという商会が現れ…。戦々恐々の中、元海賊ジオルダンはとんでもないことを言った。


このお話は、ミナがブリア領の行政顧問となり、ブリアを侵略から守るため、自由港を作り上げるという壮大なお話です。長いお話ですが、よかったら、お付き合いください!


初めてお読みになる方は、下に用語集があります!


「あんたら、おめでたいな。そんなことにも気づかなかったのかよ」

 ジオルダンは上から目線で言った。


「う~む……確かに。これは失態だ…。本当ならば、だが」

 バラントンは唸る。


「もちろんアラゴンキアにも情報網はございますが、あなたがお持ちの船乗りたちの情報網がすごいのですね?」

 そう言ってミナは感嘆した表情を見せた。


「まあな。船乗りには船乗りの世界ってもんがあるんだよ」

 と、ジオルダンは少し自慢気に言った。


「とにかく、俺はモーガダイの好きにはさせねえ。ま、復讐みたいなもんだな。


 あのままグリダッカルの申し出を断るなら、モーガダイもここには来ねえだろうが、用心するに越したことはねえ。


 だから、このおめでたい平和ボケの港を、俺様が守ってやろうってんだよ。俺もアラゴンキアには恩がある。海賊は普通捕まったら縛り首だが、俺らは助けられた。ま、俺らの敵はモーガダイだけだからな」


「う~~む」

 セグリオもバラントンも、ふたりで腕組みをして唸っている。


「それはありがたいとは思いますが…」

 ミナは首を傾げて言った。


「でも、それならば、あなたは宿を経営するのではなくて、この街の警護をしてくださったほうが直接的ではございませんこと?」


「まあな。それはそうだが、元海賊の言葉を聞く奴なんていねえだろ? 

 それによ、俺は商売ってのが楽しくなっちまってな。


 このアルソーが頭が良くて、いろいろ動くのがおもしろくてな。

 商売のおもしろさが一番、モーガダイへの復讐が二番、アラゴンキアへの恩返しが三番ってとこだな」


「そうなのですね。なるほど…。納得いたしました」


 アルソ―というのは、そばに従えている目の鋭い男のことらしい。


「ねえちゃん、あんた、頭がやわらかいな。あんた、なんで女だてらに顧問なんかやってやがるんだ?」


「わたくしも、グリダッカルの侵略を阻止するのにお役に立てると思ったからですわ」


「ふうん。なら、俺の気持ち、わかるだろ? 海から帰ったら、国がねえ。そんな思い、二度としたくねえさ」

「ごもっともですとも」


 ふたりでうんうんと頷いた。


「でも…、もし仮に、あなた方が望む最高の形が許されるとしたら、あなたはいったいどのような形を望まれますか?」


「そうだな。俺だって別に私兵はたくさん雇いたくねえ。金がかかりすぎるからな。


 だから、砦の宿を経営して、貿易して、そんで、通常は私兵10人で警備して、もし侵略者が来たら、正規の兵を俺の指令で動かすってのが理想だな。絶対負けねえ!」


「ばかものめ! 誰がお前なんぞに軍を任せるか!」とバラントンが言う。


「まあまあ、バラントン卿。ジオルダンは理想を語っただけですわ」

 ミナがとりなす。


「ジオルダン、少しお時間をいただけますか? わたくしたち3人で少し話し合いたいのです」


「わかった。終わったら呼んでくれ」

 そう言って、ジオルダンは部屋を出ていった。



「いやはや。なんと礼儀知らずな…」


「お怒りはごもっともです。バラントン卿。しかし、船乗りの言葉しか知らないのです。外国語のようなものだと思ってご寛恕くださいませ」


ミナは微笑みながらなだめた。


「それよりも重要なのは、あの情報網ですわ。確認は必要ですが、かなりあり得ることだと思いますわ」


「確かに。最近、グリダッカルが静かだと思っておったら…。陸はあきらめて海から来ようとしておったとは…」

 とセグリオも腕を組んでため息をつく。


「いかがでしょうか。ここはあの者をしっかりと引き入れて、あの情報網を手にするのです。

 見たところ、ジオルダンは多くの者の支持を集めているように思います。


 彼がいる限り、船乗りたちの情報が入ります。 それに対して、対価を与えるのです。


 そして、あの者の望むとおりの宿を建てる許可を出します。有事の際は正規の警備兵がその武器庫を使い、防御する。


 そして、指揮権は、もしジオルダンが王に忠誠を誓うならば、与えても良いのではないかと思いますが、お二人はいかが思われますか?」


「ふむ…。確かに、船乗りの情報網は貴重ですな」


「しかし、セグリオ卿、あの者が王に忠誠を誓うと思いますかな?」


「もし、素直に従い、忠誠を誓うなら指揮権を与えても良いと?」

 とミナが確認する。


「まだ実力はわかりませぬ。ですので、当初は指揮権は派遣された軍の隊長に任せ、有事にはジオルダンに臨時で一定の権限を与える、ということでいかがでしょうか。


 実力がわかり次第、指揮権を預けることも可能でしょう」


「それならば、私も同意しますぞ。セグリオ卿」


「では、とりあえず、ジオルダンが王に忠誠を誓うことを承諾したとして、区画は3がよろしいでしょう。ここに塔があれば、沖まで見渡せます」


「うむ。それでよいでしょう」

 ミナの言葉に、二人の官僚は頷いた。



 こうして、再びトガリア商会を呼び寄せる。

「話は決まったかい? ねえちゃん」


「はい、決まりましたわ。お座りになりますか?」

 ミナは笑顔で椅子を勧めた。


「お、おお…」

 少し照れたように身体を緩めて、ジオルダンは椅子に座り、後ろにアルソーが立つ。


「こ、こんなりっぱな椅子に座ったのは初めてだよ…。猫足ってやつだな…。折れねえか?」

 とジオルダンは椅子の足を心配そうに見回す。


「わたくしどもからのご提案を申し上げますね。トガリアには、3番区画を与え、望み通りの宿を建てていただきたいと思います。


 ただし、いくつか条件がございます。王都から派遣される軍が、その武器庫を使います。


 ですから、鍵を二重にし、双方がいてはじめて開けられるようにします。

 その兵が有事の時にはその宿を砦に、港を守ります。武器庫は軍から使用料をお支払いいたします。


 その指揮権ですが…。


 わたくしどもは、あなたに任せることも検討しましたが、残念ながら、どのような経験をお持ちなのかわかりません。


 海賊の経験はおありのようですが、陸上の正規軍の指揮の経験は不明です。そのため、まずは正規軍の指揮官に従っていただきます。


 ただし、指揮官が不在の時などに生じた有事の際には、臨時の特権が与えられます。


 そして、その条件として、アラゴンキアの王に忠誠を誓っていただきたいのです。

 王都に行き、王家への忠誠をお示しください」


「お、王家への忠誠…?? お、お、俺が王家の人に会うってか…?」


「さようでございます。王に忠誠を誓い、『王の剣』としての役割をいただくのです。これは、いずれ指揮権を得るための一歩となるでしょう」


「お、お、お…」

 ジオルダンはあまりにも驚きすぎて、声が出ないほど興奮している。


「お、俺が…、俺が王の剣に…」


「これはまだ指揮権ではございません。あくまで指揮権への一歩でございます。


 そして、まずは、あなたがお持ちの船乗りたちの情報網、こちらを王の剣の役目として、ご提供ください。

 それに対しては月額で対価が支払われます。情報の種類によっては臨時報酬もあるでしょう。


 …これでいかがですか?」


「お、ま、いや、ほ、ほんとに…ほんとか?」

 ジオルダンは夢でも見ているように呆然としている。


「ただし、今日お聞きしたばかりのお話ですので、こちらで情報の精査をさせていただきます。うそ偽りがないとわかったうえでの話となります」


「わ、わかった! 俺はうそなんかついてねえぞ!」


 ジオルダンは何度も首を縦に振る。アルソーも驚きのあまり、目を見開いたままだ。


「なにかご質問は?」


 ミナがにっこりすると、ジオルダンは止めていた息をどっと吐いて、


「ねえ!……です!」

 と言った。


思わぬことからグリダッカルの次なる侵略計画を知ったミナ。

トガリアが強い味方になると知って、王の剣としての役目を与え、コブルーの守護者とすることに決めた。


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用語集

ミナ … 主人公。MBAを取得したあと、異世界に来て起業する。のちのブリア侯行政顧問

セグリオ… 王都から派遣された商務官僚

バラントン … ブリア領主から派遣された補佐官

トガリア商会 … コブルーの宿泊施設入札に参加した商会

ジオルダン … トガリア商会代表で元海賊

ブリア …このコブルー港のある領地

バンサラー … 港の対岸にあるアーガリア大陸の国。

ヒーズリー教 … バンサラーの宗教で禁忌が多い

ザッカリム…バンサラー国クッシャリエ商会代表

グリダッカル … アラゴンキアを狙う北の隣国

アラゴンキア …ミナの住む国

モーガダイ…アラゴンキアの東に2つ隣の国。ドーハイを滅ぼした


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