第六十九話 頑丈すぎる鎧
カレンが、構えた後、ヴィオレットも、構える。
カレンを今度こそ殺すために。
「来い!!ヴィオレット!!」
「言われなくても!!」
ヴィオレットは、すぐさま、地面を蹴り、カレンに向かっていく。
だというのに、カレンは、立ったままだ。
ヴィオレットに向かう事もなく、ただただ、構えているだけであった。
一体、どういう事なのだろうか。
――あいつの能力はわかってる。防御力が高いはずだ。
ヴィオレットは、なぜ、カレンが、立ったままなのか、わかっている。
それは、カレンのもう一つの能力ゆえの事だ。
カレンのもう一つの能力は、ディフェンダーモード。
ヴィオレットの予想通り、防御力に特化した能力だ。
カレンの宝石を狙うには、まずは、鎧を砕かなければならない。
カレンが、身に纏っている鎧を砕くとは、簡単ではない。
それほど、防御力が高いという事であろう。
――魔法や魔技では、勝ち目がないだろう。だったら……。
あの鎧を砕くには、魔法や魔技ではなく、さらに、上の技を発動するしかない。
だとすれば、ヴィオレットが、発動できるのは、固有技のみだ。
ヴィオレットは、カレンを追い詰めるのではなく、鎧を砕くことを決意した。
「はあっ!!」
ヴィオレットは、固有技・スギライト・ライトニングを発動する。
宝石と化した鎌が、出現し、カレンの鎧に向かって振り下ろされた。
だが、鎌と鎧が、衝突した瞬間、鎌が、砕かれ、さらには、その衝撃で、ヴィオレットは、吹き飛ばされてしまった。
カレンは、何もしてない。
ただ、立ったままだったというのに。
「なっ!!」
ヴィオレットは、あっけにとられそうになるが、体勢を立て直す。
予想もしていなかったのだろう。
まさか、固有技が、通用しないなどと。
しかも、吹き飛ばされている。
一体、カレンは、何を仕掛けたのだろうか。
ヴィオレットは、思考を巡らせようとするが、カレンが、魔法・バーニング・ショットを発動する。
火の弾が、ヴィオレットに向かって飛ぶが、ヴィオレットは、すぐさま、回避し、カレンの背後に回り込み、固有技を発動しようとする。
だが、その時だ。
カレンが、ヴィオレットの腕をつかんだのは。
「甘い!!」
「ぐあああっ!!」
カレンは、魔技・バーニング・ブレイドを発動する。
刃と化したオーラは、ヴィオレットの体を切り刻む。
ヴィオレットは、絶叫を上げながら、血を流して、仰向けになって倒れた。
その間に、カレンは、ヴィオレットの元へ迫った。
容赦なく。
「私の能力を読み取って、固有技を発動しようとしたな」
「……」
カレンは、ヴィオレットの作戦を見抜いていたようだ。
固有技ならば、自分の鎧を砕けると思ったのだろう。
作戦を見抜かれたヴィオレットは、荒い息を繰り返しながら、黙っていた。
答えるつもりなどなかったのだろう。
「それが、甘いって言うんだ、ヴィオレット」
カレンは、ヴィオレットの甘さを指摘する。
まるで、自分が、ヴィオレットの上に立っているような気分だろう。
今、カレンは、不敵な笑みを浮かべていたのだから。
「確かに、以前の私なら、それで、一発で、殺されていただろうな」
カレンの言った通り、二年前のカレンであったなら、それが、可能であっただろう。
ヴィオレットの固有技で、鎧を砕けたはずだ。
カレンも、それは、認めている。
二年前であれば、すぐに、殺されていただろう。
だが、あくまで、二年前の話であった。
「だが、言ったはずだ。鍛えてきたと」
カレンは、話した通り鍛えてきたのだ。
自身の能力を高める為に。
それは、鎧の防御力を高める修行でもあった。
血のにじむような努力が、今、ようやく、実を結んだのだろう。
ゆえに、笑わずにはいられない。
「貴様の力では、決して、殺せないぞ」
もう、ヴィオレットの力では、自分を殺すことはできない。
カレンは、そう言いたいのだろう。
それでも、殺せるものなら殺してみろ。
カレンは、ヴィオレットにそう言いたいようだ。
カレンの心情を読み取ったヴィオレットは、立ち上がる。
傷は、すでに癒えていた。
「なるほどな。確かに、見くびっていたようだ」
ヴィオレットは、ため息をつく。
確かに、カレンの能力を見くびっていた。
自分の甘さに反吐が出る。
だが、それでも、ヴィオレットは、構えた。
今、勝ち目がないと、わかっていながら。
「まだ、戦うつもりか?」
「あきらめるとでも思ったのか?」
「そうだったな」
カレンは、呆れている。
あれほど、自分の能力が、ヴィオレットよりも、上だと見せつけたというのに、まだ、ヴィオレットは、戦うつもりなのだ。
自分を殺そうとしているのだろう。
その方法などないというのに。
だが、ヴィオレットは、あきらめが悪いのだ。
カレンを殺せば、帝国を滅ぼす事さえも、可能になりうる。
ゆえに、あきらめきれなかった。
ラストと、アマリアも、自分に託してくれたのだから。
「貴様を絶望の淵に落としてやる!!」
カレンは、構える。
今度こそ、ヴィオレットを殺すために。
ヴィオレットも、構えて、すぐさま、地面を蹴った。
すると、今度は、カレンも、地面を蹴った。
カレンは、魔法・バーニング・スパイラルを発動する。
炎がヴィオレットを焼き殺そうとするが、ヴィオレットは、すぐさま、回避。
カレンの懐に入り込み、固有技を発動しようとする。
だが、再び、カレンの鎧にはじかれ、ヴィオレットは、後退して、カレンと距離を取った。
――今までのように力では、あいつには、適わない。それに、あいつは、厄介だ。
ヴィオレットも、十分にわかっていた。
カレンを殺すには、今の力では、通用しない。
自分の素早さを生かしたところで、はじかれてしまうだけだ。
それほど、カレンの力は、協力であり、ヴィオレットにとって、厄介であった。
――だが、あるはずだ。どこかに弱点が!!
それでも、ヴィオレットは、探している。
どこかに、弱点があるはずだと。
だからこそ、あきらめなかった。
ヴィオレットは、カレンの背後に回り込み、再び、固有技を発動しようとする。
それでも、カレンの鎧にはじかれ、カレンは、魔技・バーニング・アローを発動する。
ヴィオレットは、回避しきれず、火の矢は、ヴィオレットを肩を刺した。
「ぐはっ!!」
「もらった!!!」
ヴィオレットは、血を吐き、体勢を崩してしまう。
カレンがその隙を逃すはずもなく、魔技・バーニング・ブレイドを発動。
刃と化しオーラは、ヴィオレットの体を切り刻んだ。
「ぐああっ!!」
ヴィオレットは、絶叫を上げる。
再び、体を切り刻まれ、倒れ込んだ。
カレンに追い詰められてしまったのだ。
カレンは、ヴィオレットを見下ろす。
まるで、嘲笑っているかのように。
「残念だったな。弱点を探してたんだろ?」
「くっ……」
カレンは、ヴィオレットの思考を見抜いていた。
どこかに弱点があるはずだと。
カレンに見抜かれたヴィオレットは、舌を巻く。
どこまでも、見抜かれているような気分がして、君が悪かったのだ。
「一つだけ、教えてやる。今の私は、無敵だ。弱点などどこにもない」
カレンは、ヴィオレットに真実を突きつける。
それも、衝撃的な。
カレン曰く、弱点などどこにもないというのだ。
鎧で覆われた自分に弱点などあるはずないと言いたいのだろう。
ヴィオレットは、衝撃を受けた。
これでは、カレンを殺すことができないと、察して。
「これで、終わりだ!!ヴィオレット!!」
「ぐあああああっ!!」
カレンは、とうとう、固有技・ガーネット・イグニスを発動する。
宝石と化したハルバートが出現し、ヴィオレットを切り裂いた。
ヴィオレットは、絶叫を上げる。
激痛が、ヴィオレットを苦しめているのだ。
固有技の為、回復速度も、落ちている。
このままでは、カレンに殺されてしまうだろう。
「ふふ、ふふふ」
カレンは、不敵な笑みをこぼしながら、ヴィオレットを見ている。
まるで、勝ったと思い込んでいるかのようだ。
ヴィオレットは、歯を食いしばった。
激痛により、起き上がることもできない。
力も入らない状態だったのだ。
「これで、殺せる。今度こそ……」
カレンは、狂気の笑みを浮かべる。
ヴィオレットを殺せるからであろう。
カレンは、再び、固有技を発動しようとした。
だが、その時だ。
ヴィオレットが、歯を食いしばり、カレンに向けて、魔技・スパーク・ブレイドを発動したのは。
しかも、刃と化したオーラは、カレンの鎧を切り裂いていしまった。
「っ!!」
カレンは、目を見開いて、驚く。
一体、なぜ、鎧が、切り裂かれてしまったのか。
今まで、はじいていたというのに。
「本当に、そう思ったか?」
「な、なぜ……」
ヴィオレットは、カレンに問いかける。
自分を殺せると思っているのかと、問いかけているようだ。
だが、カレンには、理解できなかった。
なぜ、ヴィオレットが、立ち上がれたのかも、鎧が切り裂かれたのかも。
ヴィオレットは、重傷を負ったはずだ。
それも、回復速度が落ちてきている。
ゆえに、カレンは、勝ったと思い込んでいた。
それなのに、ヴィオレットは、立ち上がり、鎧を切り裂いた。
何か、仕込まれたのだろうか。
思考を巡らせるカレンであったが、答えが見つからなかった。
その時だ。
ヴィオレットが、再び・魔技・スパーク・ブレイドを発動したのは。
刃と化したオーラが、カレンと鎧を切り裂いた。
「ぐはっ!!」
カレンは、血を吐いて、うずくまる。
だが、ヴィオレットは、容赦なく、カレンに迫った。
「確かに、弱点は、なかった。だが、隙だらけだ。だから、お前は、気付いていない」
「何がだ?」
ヴィオレットは、カレンに打ち明ける。
なぜ、自分が、カレンに殺されなかったのか。
確かに、防御力が高く、弱点がなかったため、ヴィオレットは、追い詰められた。
だが、その後、カレンは、隙だらけだったのだ。
ゆえに、カレンは、ある事を見抜けなかった。
それは、今もだ。
カレンは、何に気付いていないのか、理解できず、ヴィオレットに問いかけた。
「その鎧の防御力が、落ちてきていることにな!!」
ヴィオレットは、衝撃的な言葉を口にする。
なんと、カレンの鎧の防御力が、落ちてきているというのだ。
これには、さすがのカレンも、衝撃を受けていた。




