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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第五章 憎悪の炎のヴァルキュリア
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第六十九話 頑丈すぎる鎧

 カレンが、構えた後、ヴィオレットも、構える。

 カレンを今度こそ殺すために。


「来い!!ヴィオレット!!」


「言われなくても!!」

 

 ヴィオレットは、すぐさま、地面を蹴り、カレンに向かっていく。

 だというのに、カレンは、立ったままだ。

 ヴィオレットに向かう事もなく、ただただ、構えているだけであった。

 一体、どういう事なのだろうか。


――あいつの能力はわかってる。防御力が高いはずだ。


 ヴィオレットは、なぜ、カレンが、立ったままなのか、わかっている。

 それは、カレンのもう一つの能力ゆえの事だ。

 カレンのもう一つの能力は、ディフェンダーモード。

 ヴィオレットの予想通り、防御力に特化した能力だ。

 カレンの宝石を狙うには、まずは、鎧を砕かなければならない。

 カレンが、身に纏っている鎧を砕くとは、簡単ではない。

 それほど、防御力が高いという事であろう。


――魔法や魔技では、勝ち目がないだろう。だったら……。


 あの鎧を砕くには、魔法や魔技ではなく、さらに、上の技を発動するしかない。

 だとすれば、ヴィオレットが、発動できるのは、固有技のみだ。 

 ヴィオレットは、カレンを追い詰めるのではなく、鎧を砕くことを決意した。


「はあっ!!」


 ヴィオレットは、固有技・スギライト・ライトニングを発動する。

 宝石と化した鎌が、出現し、カレンの鎧に向かって振り下ろされた。

 だが、鎌と鎧が、衝突した瞬間、鎌が、砕かれ、さらには、その衝撃で、ヴィオレットは、吹き飛ばされてしまった。

 カレンは、何もしてない。

 ただ、立ったままだったというのに。


「なっ!!」


 ヴィオレットは、あっけにとられそうになるが、体勢を立て直す。

 予想もしていなかったのだろう。

 まさか、固有技が、通用しないなどと。

 しかも、吹き飛ばされている。

 一体、カレンは、何を仕掛けたのだろうか。

 ヴィオレットは、思考を巡らせようとするが、カレンが、魔法・バーニング・ショットを発動する。

 火の弾が、ヴィオレットに向かって飛ぶが、ヴィオレットは、すぐさま、回避し、カレンの背後に回り込み、固有技を発動しようとする。

 だが、その時だ。

 カレンが、ヴィオレットの腕をつかんだのは。


「甘い!!」


「ぐあああっ!!」


 カレンは、魔技・バーニング・ブレイドを発動する。

 刃と化したオーラは、ヴィオレットの体を切り刻む。

 ヴィオレットは、絶叫を上げながら、血を流して、仰向けになって倒れた。

 その間に、カレンは、ヴィオレットの元へ迫った。

 容赦なく。


「私の能力を読み取って、固有技を発動しようとしたな」


「……」


 カレンは、ヴィオレットの作戦を見抜いていたようだ。

 固有技ならば、自分の鎧を砕けると思ったのだろう。

 作戦を見抜かれたヴィオレットは、荒い息を繰り返しながら、黙っていた。

 答えるつもりなどなかったのだろう。


「それが、甘いって言うんだ、ヴィオレット」


 カレンは、ヴィオレットの甘さを指摘する。

 まるで、自分が、ヴィオレットの上に立っているような気分だろう。

 今、カレンは、不敵な笑みを浮かべていたのだから。


「確かに、以前の私なら、それで、一発で、殺されていただろうな」


 カレンの言った通り、二年前のカレンであったなら、それが、可能であっただろう。

 ヴィオレットの固有技で、鎧を砕けたはずだ。

 カレンも、それは、認めている。

 二年前であれば、すぐに、殺されていただろう。

 だが、あくまで、二年前の話であった。


「だが、言ったはずだ。鍛えてきたと」


 カレンは、話した通り鍛えてきたのだ。

 自身の能力を高める為に。

 それは、鎧の防御力を高める修行でもあった。

 血のにじむような努力が、今、ようやく、実を結んだのだろう。

 ゆえに、笑わずにはいられない。


「貴様の力では、決して、殺せないぞ」


 もう、ヴィオレットの力では、自分を殺すことはできない。

 カレンは、そう言いたいのだろう。

 それでも、殺せるものなら殺してみろ。

 カレンは、ヴィオレットにそう言いたいようだ。

 カレンの心情を読み取ったヴィオレットは、立ち上がる。

 傷は、すでに癒えていた。


「なるほどな。確かに、見くびっていたようだ」


 ヴィオレットは、ため息をつく。

 確かに、カレンの能力を見くびっていた。

 自分の甘さに反吐が出る。

 だが、それでも、ヴィオレットは、構えた。

 今、勝ち目がないと、わかっていながら。


「まだ、戦うつもりか?」


「あきらめるとでも思ったのか?」


「そうだったな」


 カレンは、呆れている。

 あれほど、自分の能力が、ヴィオレットよりも、上だと見せつけたというのに、まだ、ヴィオレットは、戦うつもりなのだ。

 自分を殺そうとしているのだろう。

 その方法などないというのに。

 だが、ヴィオレットは、あきらめが悪いのだ。

 カレンを殺せば、帝国を滅ぼす事さえも、可能になりうる。

 ゆえに、あきらめきれなかった。

 ラストと、アマリアも、自分に託してくれたのだから。


「貴様を絶望の淵に落としてやる!!」


 カレンは、構える。

 今度こそ、ヴィオレットを殺すために。

 ヴィオレットも、構えて、すぐさま、地面を蹴った。

 すると、今度は、カレンも、地面を蹴った。

 カレンは、魔法・バーニング・スパイラルを発動する。

 炎がヴィオレットを焼き殺そうとするが、ヴィオレットは、すぐさま、回避。

 カレンの懐に入り込み、固有技を発動しようとする。

 だが、再び、カレンの鎧にはじかれ、ヴィオレットは、後退して、カレンと距離を取った。


――今までのように力では、あいつには、適わない。それに、あいつは、厄介だ。


 ヴィオレットも、十分にわかっていた。

 カレンを殺すには、今の力では、通用しない。

 自分の素早さを生かしたところで、はじかれてしまうだけだ。 

 それほど、カレンの力は、協力であり、ヴィオレットにとって、厄介であった。


――だが、あるはずだ。どこかに弱点が!!


 それでも、ヴィオレットは、探している。

 どこかに、弱点があるはずだと。

 だからこそ、あきらめなかった。

 ヴィオレットは、カレンの背後に回り込み、再び、固有技を発動しようとする。

 それでも、カレンの鎧にはじかれ、カレンは、魔技・バーニング・アローを発動する。

 ヴィオレットは、回避しきれず、火の矢は、ヴィオレットを肩を刺した。


「ぐはっ!!」


「もらった!!!」


 ヴィオレットは、血を吐き、体勢を崩してしまう。 

 カレンがその隙を逃すはずもなく、魔技・バーニング・ブレイドを発動。

 刃と化しオーラは、ヴィオレットの体を切り刻んだ。


「ぐああっ!!」


 ヴィオレットは、絶叫を上げる。

 再び、体を切り刻まれ、倒れ込んだ。

 カレンに追い詰められてしまったのだ。

 カレンは、ヴィオレットを見下ろす。

 まるで、嘲笑っているかのように。


「残念だったな。弱点を探してたんだろ?」


「くっ……」


 カレンは、ヴィオレットの思考を見抜いていた。

 どこかに弱点があるはずだと。

 カレンに見抜かれたヴィオレットは、舌を巻く。

 どこまでも、見抜かれているような気分がして、君が悪かったのだ。


「一つだけ、教えてやる。今の私は、無敵だ。弱点などどこにもない」


 カレンは、ヴィオレットに真実を突きつける。

 それも、衝撃的な。

 カレン曰く、弱点などどこにもないというのだ。

 鎧で覆われた自分に弱点などあるはずないと言いたいのだろう。

 ヴィオレットは、衝撃を受けた。

 これでは、カレンを殺すことができないと、察して。


「これで、終わりだ!!ヴィオレット!!」


「ぐあああああっ!!」


 カレンは、とうとう、固有技・ガーネット・イグニスを発動する。

 宝石と化したハルバートが出現し、ヴィオレットを切り裂いた。 

 ヴィオレットは、絶叫を上げる。

 激痛が、ヴィオレットを苦しめているのだ。

 固有技の為、回復速度も、落ちている。

 このままでは、カレンに殺されてしまうだろう。


「ふふ、ふふふ」


 カレンは、不敵な笑みをこぼしながら、ヴィオレットを見ている。

 まるで、勝ったと思い込んでいるかのようだ。

 ヴィオレットは、歯を食いしばった。

 激痛により、起き上がることもできない。

 力も入らない状態だったのだ。


「これで、殺せる。今度こそ……」


 カレンは、狂気の笑みを浮かべる。

 ヴィオレットを殺せるからであろう。

 カレンは、再び、固有技を発動しようとした。

 だが、その時だ。

 ヴィオレットが、歯を食いしばり、カレンに向けて、魔技・スパーク・ブレイドを発動したのは。

 しかも、刃と化したオーラは、カレンの鎧を切り裂いていしまった。


「っ!!」


 カレンは、目を見開いて、驚く。

 一体、なぜ、鎧が、切り裂かれてしまったのか。

 今まで、はじいていたというのに。


「本当に、そう思ったか?」


「な、なぜ……」


 ヴィオレットは、カレンに問いかける。

 自分を殺せると思っているのかと、問いかけているようだ。

 だが、カレンには、理解できなかった。

 なぜ、ヴィオレットが、立ち上がれたのかも、鎧が切り裂かれたのかも。

 ヴィオレットは、重傷を負ったはずだ。

 それも、回復速度が落ちてきている。

 ゆえに、カレンは、勝ったと思い込んでいた。

 それなのに、ヴィオレットは、立ち上がり、鎧を切り裂いた。

 何か、仕込まれたのだろうか。

 思考を巡らせるカレンであったが、答えが見つからなかった。

 その時だ。

 ヴィオレットが、再び・魔技・スパーク・ブレイドを発動したのは。

 刃と化したオーラが、カレンと鎧を切り裂いた。


「ぐはっ!!」

 

 カレンは、血を吐いて、うずくまる。

 だが、ヴィオレットは、容赦なく、カレンに迫った。


「確かに、弱点は、なかった。だが、隙だらけだ。だから、お前は、気付いていない」


「何がだ?」


 ヴィオレットは、カレンに打ち明ける。 

 なぜ、自分が、カレンに殺されなかったのか。

 確かに、防御力が高く、弱点がなかったため、ヴィオレットは、追い詰められた。

 だが、その後、カレンは、隙だらけだったのだ。

 ゆえに、カレンは、ある事を見抜けなかった。

 それは、今もだ。

 カレンは、何に気付いていないのか、理解できず、ヴィオレットに問いかけた。


「その鎧の防御力が、落ちてきていることにな!!」


 ヴィオレットは、衝撃的な言葉を口にする。

 なんと、カレンの鎧の防御力が、落ちてきているというのだ。

 これには、さすがのカレンも、衝撃を受けていた。


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