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楽園世界のヴァルキュリア―破滅の少女―  作者: 愛崎 四葉
第五章 憎悪の炎のヴァルキュリア
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第七十話 憎まれても、殺す

「な、何を言って……」


 自分の防御力が下がった。

 そんな事を言われたカレンは、戸惑う。

 当然であろう。

 自分の力が弱まっているなど、あり得るはずがない。

 なぜ、ヴィオレットは、そのような事を言いきれるのだろうか。

 カレンは、思考を巡らせるが見当もつかなかった。


「お前は、私が、固有技を発動する度に、固有技を発動して、はじいていたんだろ?」


「っ!!」


 ヴィオレットは、カレンと死闘を繰り広げている中で、気付いたのだ。

 自分が、固有技を発動する度に、カレンも、固有技を発動していた事を。

 ヴィオレットに気付かれないように、一瞬だけ、発動していたのだろう。

 これにより、カレンは、防御力を高め、ヴィオレットの固有技をはじき返していたのだ。

 ヴィオレットに見抜かれたカレンは、目を見開いた。


「図星か」


 カレンの様子を目にしたヴィオレットは、気付く。

 やはり、自分の読みは、当たっていたのだと。


「だが、固有技の連発で、防御力が落ちてきているんだ。私以上に力を使った影響でな。私も、スピードが落ちた事があったからな」


 ヴィオレットは、さらに話を続ける。

 一瞬だけとはいえ、自分の固有技をはじくには、多くの力を使う必要がある。

 しかも、何度も、連発したのだ。

 それゆえに、力が減少してしまい、鎧の防御力が落ちてしまったのだろう。

 かつて、ヴィオレットも、何度も、スピードを上げて、力を発動した為、経験があったのだ。

 スピードが落ち、追い詰められた事があった。

 ルチア達のおかげで、難を逃れたが。

 だが、その経験があったからこそ、カレンの防御力が落ちている事に気付いたのだ。

 ヴィオレットに見抜かれたカレンは、何も反論できなかった。


「さて、そろそろ、終わりにしよう」


「な、なめるなあああああっ!!」


 ヴィオレットは、構える。

 カレンを殺すために。

 だが、カレンは、感情をむき出しに、ヴィオレットに向かっていった。

 信じたくないのだろう。

 自分が、ヴィオレットよりも、弱いなど。

 ヴィオレットを殺せるはずだと思っているのだ。

 だが、ここで、ヴィオレットは、スピードを出し、魔技・スパーク・ブレイドを発動して、カレンに斬りかかった。


「うぐっ!!ああっ!!」


 ヴィオレットは、何度も、移動しながら、カレンに向けて、魔技を発動する。

 カレンは、回避する事も、防御することもできず、体を切り刻まれ、バランスを崩し倒れかけた。


「これで、終わりだ!!」


「うあああああっ!!」


 ヴィオレットは、固有技・スギライト・ライトニングを発動する。

 固有技を受けたカレンは、絶叫を上げ、仰向けになって倒れた。


「く、くそ……」


 カレンは、歯を食いしばる。

 固有技を受けたせいで、回復速度が落ちている。

 激痛により、起き上がることさえ、できないのだろう。

 完敗だ。

 カレンは、初めて、負けを認めた。

 ヴィオレットは、カレンに迫った。

 今度こそ、カレンを殺すために。


「何か、言いたいことはあるか?」


「……聞きたいことがある」


「なんだ?」


「なぜ、お前は、帝国を滅ぼそうとしている」


 ヴィオレットは、カレンに問いかけた。

 情けをかけたのだろう。

 カレンは、ヴィオレットに憎悪を宿していたのだから。

 最後に何か、怒りをぶつけたいのではないかと悟って。

 だが、意外な事に、カレンは、ヴィオレットに問いかけた。

 知りたいのだろう。

 なぜ、自分達を殺してまで、帝国を滅ぼしたいのか。


「この帝国は、狂っているからだ」


「なんだと?」


 ヴィオレットは、真実を語る。

 帝国は、狂っているのだと。

 だが、カレンには理解できなかった。

 なぜ、帝国は狂っていると言えるのだろうか。

 ヴィオレットは、何を知っているのだろうか。

 見当もつかなかった。


「ここの帝国の奴らは、すでに、死んでいる。私達も、含めてな」


「え?」


 ヴィオレットは、衝撃的な真実を明かす。

 なんと、ヴィオレット達も、含めて、帝国の民は、一度、死んだのだと。

 これを聞いて、カレンは、驚く。

 自分達が、一度、死んでいるとは、一体どういう事なのだろうか。

 いや、そもそも、死んだ記憶など、自分にはなかった。


「私達は、すでに死んで、作られた体に入れられたんだ。生きているのは、皇族とアマリアとラストだけだ」


「そ、そんな……。そんなの嘘だ!!」


 ヴィオレット曰く、皇族とアマリア、ラスト以外は、すでに死んでおり、作られた体に入っているという。

 確かに、ヴィオレットは、ベアトリスに、帝国の民は、作られた体に入っていると聞かされていた。

 だが、誰も、予想していなかっただろう。

 死んだ者の魂が、入っているなどと。

 可能性はあったが、事実だとは、カレンも、受け入れたくないようだ。

 自分達が、死んでいるなど。


「嘘ではない。その証拠に、私達は、不死身だ。宝石の力もあるが、作られた体だからだ」


 ヴィオレットは、カレンの意見を否定する。

 宝石の力と作られた体により、強化されているが、同時に不死身でもある。

 一度、死んでいるから。

 ヴィオレット達の魂は、作られた体と宝石にとらわれていたのだ。

 カレンは、衝撃を受けていた。


「作られた体であるからこそ、死んだ者の魂であるからこそ、異常をきたし、地上で妖魔と化した。帝国では、妖魔にならないように、何かしらの魔法をかけられていたようだが」


「そんな……馬鹿な……」


 作られた体と死んだ者の魂が、適合するわけがない。

 何かしらの異常が発生しているのだ。

 作られた体が、暴走しているのだろう。

 異常が発生したまま、地上に降り立った者は、時間が経てば、妖魔となってしまう。

 それが、帝国と妖魔の真実であった。

 だが、帝国にいる間は、妖魔にならない。

 なぜなら、何かしらの魔法がかかっているからであろう。

 妖魔にならないように。

 ヴィオレットは、そこまで知っていたようだ。

 それを聞いたカレンは、愕然とした。

 絶望しているかのようであった。


「もういいか?」


「ああ。殺せ。どうせ、死んでいるなら、生きている価値など、もうない」


 ヴィオレットは、カレンに尋ねる。

 カレンの回復速度は落ちてきているが、傷が癒え始めていたのだ。

 だが、カレンは、抵抗する気力を失っていた。

 自分達が、死んでいるというのであれば、生きている価値などないからだ。

 ゆえに、ヴィオレットにゆだねた。

 自分を殺してほしいと。


「……わかった」


 カレンの懇願を受け入れたヴィオレット。

 固有技を発動し、宝石の鎌が、カレンの宝石を貫いた。

 カレンの宝石にひびが入り砕け散った。


「っ!!」


 宝石を砕かれ、カレンは、目を見開いたまま、そのまま、倒れる。

 カレンが、死んだ瞬間だった。

 これで、帝国を守っていたヴァルキュリアは、全員、死んだ。

 もう、帝国を守る者は、いないだろう。

 動かなくなったカレンを見ていたヴィオレット。 

 彼女の表情は、とても辛そうであった。

 その時であった。


「ヴィオレット!!」


「アマリア、ラスト」


 アマリアの声がして、ヴィオレットは振り向く。

 ラストとアマリアが駆け付けに来たのだ。

 どうやら、無事に切り抜けてこれたようだ。

 ヴィオレットも、アマリアとラストの元へと駆け寄った。


「ご無事ですか」


「ああ。二人は?」


「私は、無事ですが、ラストが……」


「気にすんなって。俺は、不死身だからさ~」


「だそうだ」


 二人の身を案じるヴィオレット。

 アマリアは、無事のようだが、ラストは、怪我を追ったようだ。

 返り血も浴びているが、自分の血も混じっているらしい。

 アマリアを守りながら、戦ったからであろう。

 だが、ラストは、おどけてみせる。

 アマリアが、心配しないようにとの配慮だろう。

 ヴィオレットも、静かにうなずいた。

 これで、アマリアが、安堵するとは、思えないが。


「死んだか」


「ああ」


「どれどれ」


 ラストは、カレンを目にして気付いたらしい。 

 カレンは、ヴィオレットに殺されたのだと。

 ラストに問いかけられたヴィオレットは、静かにうなずく。

 アマリアは、どこか辛そうな表情で目を閉じた。

 カレンを救うには、殺すしかないと思っていたようだが、情を捨てたわけではない。

 故に、心が痛んでいるのだろう。

 こんな形でしか、救えない事を嘆いて。

 ラストは、飄々とした様子で、しゃがみ込み、カレンの様子をうかがう。

 カレンの死を確認するためであろう。

 その時であった。

 地面が大きく揺れたのは。


「この揺れは……」


「結界が、解かれたみたいだな」


 ヴィオレットは、察した。

 トパーズエリアの結界が解かれたのだ。

 実は、ラストは、クライド達も、宮殿に侵入させていたのだ。

 結界を解かせるために。

 ゆえに、遅くなってしまったようだ。

 これにより、全ての結界が、解かれた。

 王宮エリアは、元々結界が張られていない。

 特殊なエリアであるがゆえに。

 今頃、地上では見えなかった帝国が姿を現している頃であろう。


「てことは、いよいよ……」


「帝国を滅ぼすことになる」


「そっか……」


 結界は解かれ、帝国が姿を現した。

 もう、ヴァルキュリアもヴィオレットのみ。

 と言う事は、帝国を守る者は、いないであろう。

 最後の標的は、女帝・コーデリアのみとなったのだ。

 ヴィオレットが、呟くと、ラストは、うつむいた。

 何か、覚悟を決めたかのように。


「戻るぞ」


「ええ」


 ヴィオレットは、すぐさま、クライド達と合流し、屋敷に戻る事を決意した。

 アマリアも、同意見のようだ。

 ヴィオレットとアマリアは、宮殿から離れようとした。

 だが、その時だ。

 ラストが、背後から、ヴィオレットに迫った。

 それも、短剣で、背中を突き刺して。


「っ!!」


「ヴィオレット!!」


 背中に激痛が走り、ヴィオレットは、目を見開く。

 アマリアは、衝撃を受け、立ち止まってしまった。

 ヴィオレットも、アマリアも、予想していなかったのだ。

 ラストが、ヴィオレットを刺すなど。


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