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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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399 紅蓮銀翼の戦い

ここからはエピローグ的な話です。第三者視点です。

四人目のヒロイン、スカイ君との話です(≧∇≦)

 世界が繋がってから半年。人々の生活にはまだ大きな変化はなく、誰もが普段と変わらぬ営みを送っていた。


 ただ、ベストレア獣王国だけは違った。今日は竜覇王虎武術大会。多くの観客が集まり、闘技場は大きな歓声に包まれていた。


 その中央に立つのは、アークとスカイ。アークは二代目武導王として、大会を制したスカイを迎え撃つ。


「どちらが勝つと思う、ミザリー?」

「うーん、分からないにゃ。普通ならアーたんだけど、この闘技場には私が施した魔法陣が刻まれているにゃ。真神気も神気も魔力も使えないにゃ。鍛え抜いた肉体と力と技だけで戦うにゃ」


 じっと闘技場の様子を見ていたガリュウが尋ねると、ミザリーは頭の後ろに回していた両手を解きながら答えた。


「スカイが勝つある。あの神技のような槍術は、アークでも防げないある」

「まあな。俺に勝ったんだ。できれば、スカイに勝ってほしい」

「でも、でも、アーにぃの鎖鎌も凄いですにゃ。初めて見る武器だけど、遠距離にも近距離にも使えて、隙がないですにゃ」


 ミザリーを挟むように座るリリノイアとサリアナが、ガリュウと熱心に話し出した。その姿をぼんやりと眺めていたミザリーは、つまらなそうに欠伸をした。


「あまり興味がないようね、ミザリーは」

「まあ、自分が戦うわけじゃないので仕方ありませんか」


 彼女の後ろの席に座るサラとフォルテが、苦笑いを浮かべて呟いた。


「ミザリー先生らしいですね。僕は正直、複雑な気分です。兄と親友、どちらを応援すべきか」

「ふふ、私もです。二人とも大事な生徒なので」


 ジークが眼鏡をかけ直しながら、心配げにアークとスカイを見つめる。その隣に座るヘスティアも眉を下げ、闘技場に視線を向けていた。


 それぞれが複雑な気持ちで二人を見つめる中、闘技場に試合開始の鐘が鳴り響いた。


 まず、最初に動いたのはスカイだった。一気にアークとの距離を詰め、深紅の槍を突き出す。


 大気を裂き、迫りくる刺突を、アークは半身になりながら鎖鎌でいなし、スカイの顔を目がけて分銅を投げた。


 腕を伸ばし、前のめりになったスカイは、さらに一歩踏み出し、その分銅を額で受けた。鈍い音が闘技場に響き、彼の額から血が滲み出る。


 だが、アークとの距離は詰まった。彼は迷わず、槍を手放してアークに手を伸ばした。次の瞬間、アークの体が宙を舞う。


 激しい音と共に、アークの背中が石畳に叩きつけられる。スカイはアークが鎌を振り下ろすと同時に懐に入り、投げ飛ばしていた。


 急いで起き上がるアークだったが、スカイのほうが早かった。彼は床に落ちた槍を拾い上げ、一気にアークへと振り下ろす。


 激しい衝撃音が上がり、石畳が砕ける。アークは間に合わないと判断した瞬間、起き上がることを諦め、体を横へ投げ出していた。


 アークが石畳を転がりながら、鎖を勢いよく引く。すると、スカイの後ろに転がっていた分銅が戻ってきた。


 それはアークを追うスカイの足元に迫り、鎖ごと足首に絡みつく。大きく体勢を崩され、スカイは堪らず石突きを地面についた。


 その僅かな隙を見逃さず、アークは起き上がり、スカイに向かって駆け出す。


 一瞬で二人の距離は消える。槍での攻撃は不利だと悟ったスカイは、槍を投げ捨て、足首に絡みつく鎖を掴んだ。


 火花が散る。


 鎖を両手に持ち、横に伸ばしたスカイの眼前に、鎖鎌が迫っていた。じりじりと近づく、三日月の刃。


 会場の誰もが勝負はついたと思った瞬間、スカイは鎖を手放した。観客から悲鳴が上がる。


 頬を切り裂き、通り過ぎる鎖鎌。だが、スカイは気にすることなく立ち上がると、前方に倒れかけるアークの襟首を掴み、思い切り引いた。


 地面に突っ伏すアーク。スカイはその背中に飛び乗り、再び鎖を掴むと、アークの首に巻き付けた。


 アークは首を締め上げる鎖を、必死に外そうとする。一方、スカイは額と頬に血を流しながらも、鎖を離さない。そんな二人を、観客たちは固唾を呑んで見守っている。


 会場は異様な雰囲気に包まれた。そのとき、一人の女性の影が闘技場に落ちた。


 彼女はオレンジ色の髪をなびかせて二人のもとに降り立つと、スカイの肩を掴んで叫んだ。


「そこまでにゃ、スカイ! それ以上は危険にゃ!」


 そこで誰もが気づく。この闘技場の中では等しく魔法が使えず、二人は生身の身体で戦っているのだと――。


 もし、万が一が起きても、闘技場を出なければ治癒魔法は使えない。最悪の場合、命を落とす危険すらある。


 事前に知らされていたことだが、二人の激闘を前に、誰もがその事実を忘れていた。


 スカイはミザリーの言葉に我に返り、鎖を緩める。だが、よほど強く握り締めていたのか、その手を離すことはなかった。


 一方、アークは咳き込みながら、上体を起こして首を擦った。


「俺の負けだ、スカイ」

「いいや、俺の負けだ。危うくお前を殺すところだった。明らかに規則違反だ」


 アークが苦笑いを浮かべて告げると、スカイは眉間に皺を寄せ、首を横に振った。二人とも頑なに、自らが負けだと言い張る。


 そんな二人を見て、ミザリーはため息をつく。


「なら、引き分けでいいにゃ。どちらも勝ちで、どちらも負けにゃ」


 彼女が腰に手を当て、言い放つと、観客から拍手が起こった。それは次第に大きくなり、会場を揺らすほどとなる。


 耳を劈くほどの歓声と拍手の中、スカイは手を伸ばし、アークを立ち上がらせた。それだけで、さらに大きな歓声が起こる。


「次は、全部だ、アーク」

「ああ、すべての力を使って戦おう。スカイ」


 小さな声で二人は約束する。それは真神(まじん)アークと天使長スカイの、長く続く戦いの歴史の始まりだった。


 そして、この世の頂点に立つ二人の戦いは、のちに『紅蓮銀翼の戦い』として、多くの吟遊詩人たちに歌われ、語り継がれることとなる。


 だが、まだそのことを知る者は、この会場にはいなかった。

あと一話。ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます(//Д//)

ブクマや★で応援いただき感謝です!

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― 新着の感想 ―
 戦闘シーンが相変わらずお上手で、臨場感に引き込まれました。  スカイ君の『竜覇王虎武術大会』の出場は気になっていましたので、  私的にはこのエピソードが読めて嬉しかったです。  残り一話、楽しみ…
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