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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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398 新たな世界の扉

残り2話です。本当に読んでいただき、感謝しかないです(T_T)

ありがとうございます!

 地面に浮かぶ影は消え、ミリーが展開した防壁の中からは、無機質で無感情、冷たくて不気味なアザトースの気配は感じられなかった。


 ただ、膨大な力だけが封じられている。


 アザトースは完全に消滅した――そう確信し、俺は肩の力を抜く。


「ようやく、すべて終わったにゃ」

「本当に疲れたわ」


 アザトースを囲んでいた球体の上に立っていたミリーが飛び降り、地面に座り込むサラに手を差し伸べた。


「でも、この力はどうしましょうか? このままにしておくわけにはいきません」


 そんな二人を眺めていた俺に、フォルテが声をかけた。彼女はミリーが作り出した防壁の中に渦巻く、アザトースが残した強大な力を見つめていた。


 たしかにその通りだ。これは巨大な爆弾のようなものだ。いつ暴走して世界を破壊するか分からない。


 顎に手を当て、瞼を閉じる。そのとき、頭の中に声が響いた。


『よくぞ、世界の危機を救った。ルキフェル――いや、アークよ。それにフォルテ、サラ、ミザリー』


 その声に息を呑む。慈愛に満ち、荘厳な声は我が主のものだった。俺は膝をつき、頭を垂れる。


『そう畏まることはない。我が息子よ。よくぞ、異界からの侵入者を退けてくれた』


 小さく首を横に振る。俺は自分の愛する者たちを守っただけ、当然のことをしたまでだ。


『ふふ、相変わらず謙虚なことだ。だが、だからこそ、この世界をお前に託す。我は、さらなる高みを目指すべく、高位の次元へと旅立とう』


 びくりと肩が跳ね、不敬にも顔を上げる。ここはパンデモニウムの地下だ。我が主がいるはずはなかった。


 サラの真素で青く染まった天井を見つめる。


『お前を蘇らせたのは、この世界を救い、託すため。我よりもこの世界を愛し、悪魔すらも救おうとしたお前こそ、この世界の神に相応しい』


 俺は大きく首を振り、叫んだ。


「いいえ、この世界を最も愛しているのは、貴方です! 俺じゃありません!」

『ふふ、我は悪魔を討伐し、魔素に還すことこそ救いと思っていた。だが、お前は違った。

 それに気づいていないかもしれないが、今、お前は我に異を唱えた。それこそが、我と並んだ証だ……』


 きゅっと唇を結び、拳を握り締める。


『悲しむことはない。我が望んだことだ。我と並び、この世界を託せる者を。そして、お前が生まれた。不安などなかろう。お前には守り、支えてくれる者たちがおる』


 我が主の言葉が、静かに心に染みわたる。自然と視線は彼女たちへ流れる。フォルテも、サラも、ミリーも頭を下げ、地面に膝をつけていた。


『我はひとりだった。だが、お前は違う』

「俺にできるでしょうか」

『お前なりでいい。いや、お前たちが思うままに……』


 我が主が告げる。俺は頷き、立ち上がった。迷いや不安が消えたわけじゃない。だが、たしかに俺には彼女たちがいる。


 膝をつく三人のもとへ歩き、手をかざす。


「フォルテ、サラ、ミリー。俺とこの世界を愛し、守ってほしい」


 右手から真神気が溢れ出し、彼女たちに降り注ぐ。


『……感謝する。そして、この世界を頼む、アーク。さらばだ』


 我が主の気配が消えた。


 心に大きな穴が空いたような喪失感に襲われ、頬に涙が伝った。


「大丈夫にゃ、アーたん。私たちがいるにゃ」

「ええ、この世界があるかぎり、ずっとよ。アッくん」

「たとえ、世界が滅んでも――です」


 三人は立ち上がり、俺を守るようにそっと抱き締めた。その優しさと愛に、心は満たされていく。


 まだ、すべてが埋まったわけではない。だが、それでも我が主が去った悲しみは和らいだ。


 フォルテ、サラ、ミリーを順に見つめ、笑みを浮かべる。


「そうだね、ずっと一緒だ。それに世界は滅びないよ。俺たちが永遠に守り続けるんだからね」


 彼女たちも微笑み、さらに強く俺を抱き締めた。


「大好きにゃ、アーたん」

「ああ、俺もだよ、ミリー」


 ミリーは頭の獣耳を揺らし、頬を摺り寄せる。


「もう離さないから、アッくん」

「俺も離さない、サラ」


 サラは目に涙を浮かべ、腕に回した手に力を込める。


「愛してます、アーク」

「愛してる、フォルテ」


 フォルテは瞳を閉じ、そっと顔を俺の胸元に埋めた。


 俺と三人の心が溶け合い、ひとつに紡がれていく。金色と紺碧と白金、そして真銀の真神気が重なり、再び俺たちの中へと戻っていった。


「まずは、アザトースが残したこの力だね。どうしようか?」


 俺たちは離れ、ミリーが展開した防壁の中に渦巻く強大な力を眺める。


「そうですね。真素に変えて、魔界の荒れた大地や海を豊かなものにするのはどうでしょうか?」

「うーん。でも、それだけだとまだ力が余っちゃうわ」


 フォルテとサラは顎に手を当て、首を傾げている。そんな二人の姿に口元を綻ばせると、ミリーが元気よく叫んだ。


「なら、いっそのこと、魔界、人界、神界を繋ぐにゃ! そのほうが守りやすいにゃ!」


 その言葉に目を剥く。誰も言葉が出ず、沈黙が落ちる中、ミリーは胸の前で腕を組み、得意げに頷いている。


「……たしかに一理あるかも。いつまた、異界から神が訪れるか分からない。なら、互いに見守れるよう、魔界と人界と神界は近いほうがいい。それにこの真素なら、どの世界の住民の力にもなる。ねえ、やってみようか?」


 思案の末、ミリーの提案に賛成し、フォルテとサラを見る。彼女たちは眉を下げながらも、頷いてくれた。


「なら、ミリーは俺たちの真神気が通りやすいように、防壁を操作して」


 ミリーは親指を立て、金色の翼を広げると、そのまま飛び立つ。そして球体の上にある神盾アイギスに降り立ち、両手を当てた。


 その瞬間、陽光の壁に無数の魔法陣が浮かび上がる。


「サラは、この力を真素に変えてくれる? できれば、癒しの力も付与してほしい」


 サラは頷き、壁に浮かぶ魔法陣に手を添えた。


 彼女が紺碧の翼を広げると、防壁の中に渦巻く力は青く変わり、大海を思わせるほどの命の波動が伝わってくる。


「フォルテは、この真素で魔界を創り変えて。誰もが安心して暮らせるような、豊かな世界に」


 フォルテは笑みを浮かべ、こくりと首を縦に振る。


 そして十二枚の翼をはためかせ、白金の羽を防壁の周りに舞わせる。すると、それぞれの羽が線を結び、巨大な魔導回路が組み上がった。


「準備はできたようだね。俺は残りの真素を使い、魔界、人界、神界を繋ぐ。ミリー、準備はいい?!」


 顔を上げ、球体の上に立つミリーに声をかけた。彼女はすぐに親指を突き出し、元気よく頷く。


「なら、いくよ、みんな!」


 防壁が消えた。


 一瞬で紺碧の真素が溢れ出すと、フォルテの魔導回路が輝き出した。


 そして、真素が魔界各地へと転送され、荒廃した世界を創り変えていく。


 その光景を見た俺は、溢れかえる残りの真素の中に飛び込み、真銀の翼を広げた。


 次の瞬間、新たな世界の扉が開かれた。

ここまで、読んでくださりありがとうございます(//Д//)

ブクマや★で応援いただき感謝です!

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― 新着の感想 ―
 一つの大きな戦いが終わり、ミザリーさんや、サラさん、フォルテさんの愛を確かめつつ、『主』の言葉を背に、新たな世界に飛び込むアーク君は一体何を見るのか。あと二話を楽しみにしております☆*:.。. …
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