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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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397 三つの翼と、真銀の刃

ここまで読んでいただき感謝です!

残り3話です。本当にブクマや評価ありがとうございます<(_ _)>

 金色の翼をはためかせ、ミリーがアザトースのもとへと飛び立つ。俺がその背中を見送ると、サラが声をかけた。


「それじゃ、私は万が一に備えて被害が広がらないように、この部屋全体に結界を張るわ。あとはアッくん、ミザリー、フォルテのサポートね」


 振り向くと、彼女にそっと抱き締められる。その手は震え、鼓動は激しく胸を叩いていた。


 彼女の背中に優しく手を添え、耳元に顔を近づける。


「ありがとう、サラ。君が俺たちを守ってくれる。それだけで勇気が湧いてくる」


 自然と口をついて出た言葉だった。


 いつも彼女は、誰かを守り、救おうとしていた。たとえ力が及ばない状況でも、必死にその運命に抗ってきた。その姿は尊かった。


「ええ、任せて。だから、無事に帰ってきて」


 彼女も耳元に顔を寄せ、小さな声で告げた。そして、そっと俺の頬に唇を当てた。


 背中に回した手からサラに真神気を渡し終えて離れると、彼女は神槍レーヴァテインをくるりと回し、竜を象った石突きを天に向けた。


 その瞬間、彼女の背中に紺碧の翼が広がり、部屋が海色に染まった。周囲には、慈愛に満ちた彼女の真素(まそ)が漂い始める。


 その姿に頷き、背を向け、真銀の十二翼を広げて飛び立つ。そのとき、視界の端に漆黒の翼を捉えた。


「アーク。アザトースへの道は私が拓きます。あなたは核である光の胎児を斬ることだけに集中してください」


 振り向くと、フォルテが背後から翼をはためかせ、ゆっくりと近づいてきていた。手を伸ばし、彼女の手を握り締めると、こちらへと導く。


「ありがとう、フォルテ。でも無理はしないでほしい。君が一番傷つき、疲れているのだから」

「いいえ、大丈夫です。私もあなたの力になりたいんです」


 首を横に振り、真っすぐ俺を見つめるフォルテ。俺は苦笑いを浮かべ、思い切り引き寄せた。


 彼女の顔が胸元に埋まり、その頭を優しく撫でた。


「……わかった。君はあの頃(・・・)から、一度言ったら曲げない性格だったね。でも、そのおかげで迷わず突き進むことができた」


 優しく語りかけると、フォルテは顔を上げ、じっと俺を見つめる。そんな彼女に口元を綻ばせ、その額に唇を寄せ、真神気を流し込む。


 やがて、フォルテの漆黒の翼は白金(プラチナ)に変化し、その瞳も同じく白く輝き出した。


 十二枚の白金の翼を揺らめかせ、彼女はすっと離れた。そして、離れ際に俺の頬を両手で包み込み、額にキスを返した。


「それでは行ってきます。必ずこの世界を救いましょう」


 その笑顔は、かつての魔界の王とは思えないほど、優しく穏やかだった。俺も笑みを返し、彼女に続くと、間もなくアザトースのもとに辿り着いた。


 無数の正方形に囲まれた光の胎児を見て、息を呑む。やつはわずかに成長し、胎児から幼児へと変化しつつあった。


 俺がナナシを抜いて構えたとき、頭上からミリーの声が聞こえた。


「アーたん、アザトースは封じたにゃ。だけど、やつは力を吸収できないと分かった途端、ため込んだ力を暴走させ始めたにゃ!」


 彼女はアザトースの真上に浮かぶ神盾アイギスの上に立ち、やつを包み込むように陽光の防壁を展開していた。


「おそらくミザリーの防壁を利用して内圧を高め、強力な力を生み出そうとしているようですね」


 視線を背後に向けると、フォルテが神銃アクケルテをライフルに変え、その照準器からアザトースを見つめていた。


「これほどの膨大な力、もう私の結界でも防ぎようがないわ! 私は三人のサポートに徹するわ!」


 サラの声が耳に届くと、海色に染まった部屋がわずかに色褪せる。だが、代わりに俺たちを守り支えるように、紺碧の真素が集まり始めた。


 彼女たちを見渡し、ナナシを握りしめた。もはや俺たちに残された時間は、あとわずかだ。


「ミリー、今から防壁の中に飛び込み、やつを斬る。一瞬でいい。できるだけ力が流れ込まないよう、小さな隙間を作ってくれ!」


 ミリーは頷き、アイギスに手を当てて展開した防壁の制御に入った。その姿に頷き、視線を落とす。


「サラは、俺の支援はいいから、防壁の隙間から流れ込む力をできるだけ抑えてほしい!」


 サラの瞳が揺れた。だが、彼女は小さく首を横に振り、俺を守るように漂っていた真素を、陽光の防壁のほうへと移動させた。


 心配そうに見つめるサラに笑顔を向け、前方を見据える。金色に輝く防壁の一部に魔法陣が浮かび上がる。


「アーたん、一秒にゃ。そこに隙間を作るにゃ!」


 ミリーが叫ぶと同時に、魔法陣の周りを紺碧の真素が輪となって包み始める。再び視線は下へと流れた。


 そこには紺碧の翼を広げ、レーヴァテインを地面に突き立て、祈るように両手を胸の前で組むサラの姿があった。


(準備は整ったようだな……)


 真銀の翼をはためかせ、ナナシを構える。そのとき、背中にフォルテの声が響いた。


「私はその一瞬で道を作ります。信じて、飛び込んでください」


 振り返ることはなかった。ただ瞳を閉じ、フォルテ、サラ、ミリーの姿を思い浮かべ、胸の奥に刻み込んだ。


 そして、瞼を上げると、迷うことなく魔法陣へ身を投じた。


 眼前に迫る陽光の壁。だが、速度を落とすことはなかった。次の瞬間、防壁は開かれ、俺の周囲をいくつもの白金の弾丸が通り過ぎた。


 ちらりと後ろに視線を向ける。すでに防壁は閉じられ、その上を紺碧の真素が幾重にも漂っていた。


 再び、前を向く。刹那、白金の閃光が迸り、行く手を阻む無数の正方形が打ち砕かれた。


 アザトースへと続く道が拓かれた。


 真銀の翼を大きく羽ばたかせ、一気に加速した。幼児から少年へと変わりつつあるアザトースに、ナナシを振り上げる。


 そのとき、やつは笑った。目も鼻もないが、口だけが顔に浮かび上がり、三日月のように吊り上がる。


(……ええい、まやかしだ。迷うな!)


 俺は真銀の刃を伸ばし、真っすぐ振り下ろした。その瞬間、ナナシの刃が消え、アザトースの体をすり抜ける。


 突然のことに息を呑み、体勢が大きく崩れる。かすかにフォルテたちの悲鳴が聞こえたが、振り返る余裕はなかった。


 やつに背中を見せてしまった。背筋が凍る。急いで体勢を立て直そうと翼を広げたとき、床に浮かぶアザトースの影を視界の端に捉えた。


 そこにはいくつもの目が浮かび、こちらをじっと見ていた。


 ナナシの意思を瞬時に悟り、翼を大きくはためかせると、ぐるりと身体を回転させ、その勢いのままナナシを床へと投げつけた。


 刹那、ナナシに真銀の刃が浮かび上がり、陽光の壁をすり抜ける。そして、アザトースの影を突き刺した。


 耳を劈くほどの絶叫が部屋中に木霊する。


 ふと視線を上げ、少年の姿に変わりつつあった光を見る。それは喉を両手で押さえ、苦しんでいた。


 その姿を見て、確信する。やはり本体は別にあった。そして思い知る。斬りたいものを斬るナナシは進化し、斬るべきものを斬る剣へと至った、と。


 フォルテたちに声をかけようとしたとき、アザトースの影に白金の銃撃が降り注ぎ、紺碧の斬撃が大気を切り裂いて襲いかかる。


 そして、光の少年を囲んでいる陽光の防壁が、ゆっくりと影へと落ちていく。


 俺はわずかにできた防壁の隙間から外へ飛び出し、アザトースの影――その本体を見下ろす。


 それはフォルテの銃弾に穿たれ、サラの斬撃に切り刻まれていた。


 もはやボロボロになったアザトースの本体は、ミリーが展開した巨大な球体の防壁に圧し潰された。ふと、防壁の中を見やる。


 そこには幼児に戻り、さらに小さくなっていく光球の姿があった。


 そのとき、かすかに声が届いた。


「この世界、理解不能。アーク、消去……不能……」


 それがアザトースの最後の言葉だった。

ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
   いよいよ残り三話。  サラさん、ミザリーさん、フォルテさんの協力を得て、  アザートスと立ち向かうアークくんたちのその先は……  次話も楽しみにしております☆*:.。. o(≧▽≦)o .。…
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