396 理解できぬ神、金色の翼
本当にここまで読んでいただき感謝です!
来週月曜日に最終話を投稿する予定です。
風真とルキフェル。握り締めた二人の手から、お互いの感情や記憶が流れ込んでくる。一時的とはいえ、二つに分かれていた心が、再び一つに紡がれていく。
それは、より強く固い確かなものへと変化する。
(『真の一体化』……今、ようやく成した)
全身から溢れ出す真神気を一気に解放した。それは岩肌に囲まれた薄暗い部屋を銀色に染め上げた。
周囲に漂う魔素は真素へと変わり、冷たく乾いた魔界の空気を温かく和やかなものへと変えていく。
戦いの最中にもかかわらず、心はいつになく穏やかだった。笑みを浮かべると、アザトースが言葉を放つ。
「アーク。我、認めぬ」
その瞬間、フォルテたちが小さな悲鳴を上げる。だが、それだけだった。
「無駄だ。お前にはもう俺を解析、いや理解できない」
アザトースの顔が弾けた。いくつもの正方形に分かれて組み替わり、もう一度、やつは同じ言葉を放つ。だが、それは虚しく部屋に響くだけだった。
突然、アザトースが胸元から無数の腕を伸ばし、俺を襲う。眼前に迫る歪な手を見つめ、ナナシを横薙ぎに振る。
それだけで、すべての腕は切り裂かれて霧散した。アザトースは自らの胸元に視線を落として、確かめるように手を当てる。
「悪いな。俺もそれは解析した」
もはや二度と、やつの腕が生えることはない。そのままアザトースのもとへ歩き始める。
やつは顔に手を伸ばし、顔の一部――正方形を取り出して握り締めた。それはフォルテの神銃アクケルテへと姿を変える。
アザトースは銃口を向け、引き金を引く。乾いた音が響き渡り、紫電を帯びた魔弾が迫る。
だが、それは俺に当たることなく、軌道を変えて通り過ぎた。
「さすがだな、アザトース。まさしく本物のアクケルテだ。だが、皮肉だな。フォルテの愛銃が、俺を傷つけるはずがないだろう?」
やつに教えてやる。神器は意思を持つ武器だ。主人の意にそぐわぬことは絶対にしない。だが、やつには理解できなかったようだ。
アザトースはサラのレーヴァテインやミリーのノヴァナックルを生み出し、攻撃する。だが、どれも俺には届かなかった。
形だけを真似ても、そこに込められた想いまでは奪えない。本物であれば、尚更だ。
いくら言葉で伝えても、分からないものがある。だが、受け止め、感じることはできる。アザトースには理解できないだろうが――。
ゆっくりと歩を進め、やつの前に立つ。
俺が一歩近づくたびに、アザトースはかつての盟友――ベルゼガの武器や魔法で攻撃してきた。当然、それも俺を傷つけることはなかった。
アザトースの依り代にされたベルゼガ。だが、彼の心までは解析できなかったようだ。魔素へと還る彼の姿と言葉がよぎった。
『ごめん、アーク』
唇をぎゅっと噛みしめ、ナナシをアザトースへ向ける。
「もうベルゼガは戻らない。だが、その体は返させてもらう」
「我、理解不能――」
最後まで聞く必要はなかった。無言でナナシを振り抜いた。その瞬間、やつの首と胴体が分かれた。
ゆっくりとこちらに倒れてくる身体を抱きしめ、そっと床に寝かせる。青銅だった身体は次第に肌色へと戻り、ベルゼガのものへと変わっていく。
ふと視線を上げる。フォルテ、サラ、ミリーが駆け寄ってきていた。
三人はベルゼガの亡骸をじっと見つめる。
フォルテは唇を引き結び、怒りでも悲しみでもない複雑な眼差しを向けていた。その隣では、サラが彼の冥福を祈り、両手を組んでいる。
ミリーは何も言わず、ただフォルテとサラを見守っていた。
沈黙が落ちる。
「アーたん、あれを見るにゃ!」
次の瞬間、ミリーが声を張り上げ、上を指さす。その先には、頭だけとなったアザトースが、無数の正方形に分かれて浮いていた。
中央に浮かぶ光球が、ゆっくりと形を変えていく。胎児のように見える。そのとき、アザトースの声が無機質に響きわたる。
「この世界は解析不能。不要とする」
嫌な予感がよぎる。やつはかつて、ここではない別の世界を滅ぼしている。無言でミリーたちを庇うように前へ出る。
「故に、この世界。我、認めぬ」
無数の正方形が激しく回り始めた。そして、膨大な力が生まれ、光の胎児を中心に集まっていく。
それは周囲に漂う真素すらも取り込み、力へと変えていく。
「すべての情報を力へ。力を破壊へ。破壊は世界へ。そして無へ」
光の胎児は、感情のない声で言い放つ。呆然と見上げる俺に、フォルテが叫ぶ。
「あれは危険です! すでにこの魔界を消し飛ばすほどの力となっています!」
振り向くと、彼女は震えていた。
「それに、今も周囲の力を取り込み、膨れ上がっているわ! このままだと、人界も神界も巻き込まれるわ!」
サラの声にも恐怖が滲んでいた。
「なら、今しかないにゃ! これ以上強大になる前に押さえ込むにゃ!」
ミリーが拳を握り締め、咆哮した。
その瞳は強く輝いていた。だが、腰から伸びた尻尾がわずかに震えていることを、見逃さなかった。
彼女の言葉に勇気をもらう。どんな状況でも、それを乗り越えようと足掻くミリーの姿は、とても美しかった。
彼女を抱きしめ、そっと呟く。
「ミリー。悪いけど、アザトースを君のアイギスで囲んでくれ。これ以上、やつに力を渡さないように」
背中に回した手から、彼女に真神気を流し込む。その瞬間、彼女の背中から金色の十二翼が広がる。
「任せて、アーたん」
ミリーは俺の頬にキスをすると、そのままアザトースのもとへ飛び立った。
ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)
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