392 解析と消去
また、評価を頂きました。すごく嬉しいです(T▽T)
アーク視点のままです。最後まで頑張ります<(_ _)>
一斉に攻撃を仕掛ける俺たちを前に、アザトースはどれが本物か分からず、呆然と立ち尽くしていた。
緩急をつけ、素早く動くことで相手に残像を見せる分身の術。その術を真神気を使って、俺なりに改良した。
アザトースを囲む残像には、俺の殺気をわずかに纏わせてある。四方から放たれる殺気に、やつは混乱しているようだ。
その姿にほくそ笑むと、アザトースの胸元から巨大な腕が現れ、周囲の残像たちを薙ぎ払う。
それはフォルテを存在ごと握り潰そうとした歪な手と同じ形をしていた。一瞬で残像は消され、やつの周りには誰もいなくなる。
しんと静まり返った部屋の中、アザトースが呟く。
「分身の術を解析開始。全容把握に至らず」
その声は虚しく響き渡るだけだ。
俺は多くの殺気を孕んだ残像の中、唯一気配を消し、やつの足元の影に潜んでいた。ただ立ち尽くすアザトースを見上げると、瞬時に飛び出し、やつの正方形の頭に手を当てた。
次の瞬間、勢いよく踏み込み、腰を回す。そのまま肩と肘を内側にねじ込みながら掌底を押し出した。
超至近距離からの渾身の一撃が、アザトースの頭に叩き込まれる。
それは打撃と違い、衝撃を貫通させ、体内から破壊する。加えて真神気も重なり、威力は計り知れないものになった。
直後、やつの頭が無数の正方形に分離して弾け飛ぶ。わずかによろめくアザトース。その隙を逃さず、ひとつの正方形に狙いを定め、手刀を突き出した。
それはリューハの気配がするものだった。白銀のオーラを纏った手刀は、正確に正方形を捉え、深々と刺さった。
その瞬間、正方形は砕け散った。一瞬、虚空に竜人の姿が見えた。彼は微笑み、ひと言だけ残して姿を消した。
『……見事だ』
その言葉が胸に沁みる。リューハに敬意を払いながら、彼を実験体にし、そのコピーを作ったメフィストとアザトースに怒りを覚えた。
再び分身の術を展開し、アザトースを取り囲む。すると、やつの胸元から巨大な腕が生え、縦横無尽に部屋の中を蠢き出した。
次々と消される残像。だが、すぐに新たな残像を生み出す。消えることのない残像と、ひたすら消し続けるアザトースの歪な手。
どちらが追い込まれているのか、俺にも分からない。だが、止まることなく動き続けると、無数の真銀の羽が舞い散る。
走りながら、その中の一つを握り、真神気を込めると、それは星型の金属板――手裏剣へと変わった。
笑みを浮かべ、部屋中を舞う羽を掴み、手裏剣へと変えてアザトースに投げる。
それは四方から迫り、やつの体中に突き刺さった。だが、それでもアザトースは俺を探し求める歪な手を止めることはなかった。
俺は無数の残像を残し、瞬時に殺気を消して天井へ移動すると、そっと息を潜め、やつを観察する。
アザトースの首から上には無数の正方形が浮かび、その中心には、ほのかに光る球体があった。あれが本体かどうかは分からないが、試す価値はある。
手裏剣を握り、狙いを定めて一瞬で腕を振り抜いた。それは音を置き去りにして、アザトースに迫る。
確実に捉えた。そう思ったとき、やつの声が部屋中に響いた。
「解析完了。手裏剣、我、認めぬ」
その瞬間、白銀の手裏剣はぴたりと止まり、灰色に色褪せて床に落ち、アザトースの全身に突き刺さっていた手裏剣も同時に抜け落ちた。
俺は気配を消したまま、顎に手を当ててアザトースを見る。
やつが消したのはナナシと手裏剣の力だ。だが、形は残っている。そして、何度も拳を交えた俺の力を消すことはできていない。
もう一度、羽を掴んで十字の手裏剣に変えて投げた。それは真っすぐ進み、アザトースの首の上に浮かぶ球体に近づく。
息を殺し、目を細める。そのとき、球体の周りに浮かぶ正方形が素早く動き、手裏剣を弾いた。
やはり初めて見る形は、たとえ同じ手裏剣だったとしても認識できず、力を消すこともできないらしい。
口角を上げる。
そのとき、床を蠢いていた巨大な腕が突然、こちらを目がけて迫る。
気が緩んでいた。わずかに体から漏れ出ていた殺気と気配に気づくと、俺は一気に地面へ降り立ち、十字の手裏剣をアザトースに投げる。
「手裏剣。我、認めぬ」
手裏剣は、やつに届く遥か手前で力を失い、床に落ちた。解析の速度が速くなっている。形は違えど、同じ手裏剣を一度解析したからだろう。
力を消すためには詳細な解析が必要だが、その情報は蓄積され、他のものにも使うことができると考える。
予想だが、今後は別の形に変えても、やつは攻撃を受けることなく無力化するだろう。もはや手裏剣での攻撃は意味がないかもしれない。
無尽蔵に情報を集め、すべてを解析する化け物。それがアザトースの正体だと察する。
やつは解析した存在には興味がない。いや、不要なものだと判断し、消すのかもしれない。
嫌な考えが脳裏をよぎり、アザトースに尋ねた。
「……お前がいた世界は、どうなった?」
「すべてを解析――その後、消去した。我、新たな情報を求め続ける存在」
その瞬間、俺は駆け出した。
やはり、こいつはこの世界にいてはいけない存在だった。ただ無機質に情報を集め、無感情に消去するだけの異物。力こそ強大だが、やつに意志はない。
まだ、メフィストやデミウルゴスのほうが、ずっとまともだった。邪悪とはいえ、あいつらには感情や意志があった。
俺は宙に舞う真銀の羽を両手で掴むと、一瞬でクナイに変え、アザトースに向かって駆け出した。
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