↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

396/407

389 虚実の女帝

またまたブクマと評価していただき、感謝です(//Д//)

ここでリリス視点は終了です(* >ω<)b

 私は銀蛇の鞭を構えながら、素顔を見せたメフィストに声をかけた。


「ふふ、まさか貴方が魔人とは思わなかったわ。その顔だと蝙蝠族かしら。山羊の頭蓋骨より、よほど素敵よ」


 笑みを浮かべながら、再び鞭を打ちつけると、鋭く大気を切り裂き、メフィストを襲う。だが、やつは赤黒いマントを広げて飛び立ち、回避した。


 まさに蝙蝠のように天井にぶら下がり、私を睨みつける。


「俺は脆弱な魔人だ。だからこそ、上位種の悪魔を騙し、異界の神を利用し、力を得たのだ。お前のせいで、また始めからやり直しだ。まずはお前の虚飾の力を調べ、俺のものにしてやる」


 今までと言葉遣いが変わった。粗野で野蛮だが、こちらのほうが本心が滲み出ていてよかった。


 これでこいつの本当の断末魔を聞くことができる。


 私は銀蛇の鞭を握り締め、メフィスト目がけて振り上げた。その瞬間、やつはマントをはためかせて飛び立つと、大きく横へと回避する。


 広げたマントから無数のメスや注射器が飛び出した。すぐに私は瞳を紺碧に変え、虚飾の権能で攻撃を塗り替える。


 目の前に迫るメスや注射器は、私の体をすり抜けると、メフィストの頭上へと現れて降り注いだ。


 ハリネズミのように体中にメスや注射器が刺さったやつは、それでも床に落ちることなく、宙を飛んでいた。


 その表情は苦痛に歪みながらも、満足げだった。


「なるほど、そういうことか」


 メフィストは再びマントを広げて攻撃を仕掛けた。さきほどと変わらない攻撃だ。やつへの攻撃にすり替える。


 再び、自らの攻撃の的となったメフィスト。メスや注射器が全身に突き刺さっても、笑顔を崩さない。何か企んでいるようだ。


 少しだけ嫌な予感がする。銀髪を一房握り、魔力を込めてもう一つ銀蛇の鞭を作り出すと、両腕を振り上げ、連続で鞭打を放つ。


 その瞬間、背中にかすかな痛みを感じる。だが、構わず鞭を振るい続けた。私の猛攻に耐えていたメフィストだったが、ついに力尽き床に落ちる。


 血塗れとなり、肩で息をするメフィスト。


 静かに近づき、息の根を止めようと鞭を振り上げた。不意に視界がぐにゃりと歪み、膝が折れた。


「きしし、ようやく毒が回ってきたか。攻撃に耐えながら、お前に気づかれぬよう、これ(・・)を刺すのは少しだけ苦労したぞ」


 青い血で顔を染めたメフィストは、ゆっくりと起き上がる。そして、醜く顔を歪ませて、マントの中から一本の注射器を取り出した。


「これはアークに打ったものと同じ毒――いや、ウイルスだ。そして、今、お前の背中に刺さっているものだ。いくら虚飾の権能といえど、自ら攻撃しているときは使えず、その瞳も赤く変わる。気づくのは簡単だったよ」


 頬を伝う青い血を手の甲で拭い、得意げな表情を浮かべるメフィスト。その姿にほくそ笑む。


「そうね、私の権能は、虚実を合わせたもの。嘘の裏――事実を暴かれたら、敗北するしかないわね」


 そう告げて、右肩に刻まれた大蛇の刺青をそっと撫でた。その瞬間、それは実物と化してメフィストを襲った。


「ふん、最後の足掻きか。たかが蛇ごときで俺が倒せるものか」


 豚のような鼻を鳴らし、迫りくる紫色の大蛇にメスを振り上げる。だが、それは大蛇を傷つけることなく、通り過ぎた。


「なるほど、虚か。それに何の意味が――」


 メフィストが言い終える前に、大蛇はやつの喉元に噛みついた。


「ふふ、嘘だと思ったの? でも、その痛みはどう?」


 私は赤と青、虚実を合わせた紫の瞳でメフィストを見つめる。やつは必死に大蛇を引き剥がそうとするが、手をすり抜け、虚しく宙を掴む。


「あら、そういえば、私は毒を打たれたんだわ。いえ、ウイルスだったわね。それは虚飾で塗り替えさせてもらうわ」


 そう告げて右の瞳を虚飾の碧(あお)に、左の瞳を真実の紅(あか)に変え、虚実を切り分けると、体内を蝕んでいたウイルスを、腕に巻きついた大蛇へと流し込む。


 体内に残ったウイルスは嘘へと塗り替えられ、大蛇へ移したものだけが真実として残る。それは大蛇の体を伝い、深々と刺さった牙からメフィストへと注がれていく。


「マアナが苦しんだ毒よ。いえ、ウイルスだったかしら。どちらでもいいけど、あなたもしっかり苦しんでね」


 紫色の大蛇に体を巻き付かれたメフィストに、私は満面の笑みを返す。


 だが、やつは喉元を噛まれ、喋ることはできず、ただ恐怖で滲む目をこちらに向けるだけだった。


 その間もウイルスは、やつの体を蝕んでいく。徐々に体は崩壊し始め、手足から魔素へと還っていく。


 このままだと再び病魔が魔界に蔓延するかもしれない。


 メフィストの断末魔を聞くことを諦め、部屋を出る。ここはパンデモニウムの屋根裏。ここを準備したのは私だった。


 そっと扉を閉め、その隣にある小さな窪みを押した。その瞬間、部屋の中から轟音が聞こえてきた。


 それは部屋を密閉するために流れ込む大量の特殊な土の音だった。部屋の中を埋め尽くした土は、数日をかけて固まり、石へと変わるだろう。


 たしか偽神パズスは、『コンクリート』と言っていた。あいつに仕えるふりをして得た知識だが、役に立った。


 それにメフィストも本望だろう。新たな知識を得たのだ。『コンクリート』の中で、しっかりと味わうといい。


 ほとんどの魔力を使い果たし、壁に背を預けて座り込む。胸の魔核が激しく脈打ち、呼吸が乱れる。


 それでも、マアナの仇は取った。


 だが、満足よりも虚しさが心を満たす。無性にリリムとエジェイルに会いたくなった。


 虚実を同時に扱い、病魔そのものを書き換えた代償だろう。体に刻まれた大蛇の刺青は消え、虚飾の権能も消えてしまった。


 けれど、惜しくはなかった。これで娘たちが安心して暮らせる。そんな魔界が訪れるはずだ。


 私は目を閉じ、これからの魔界――いや世界を導いてくれるアー君とフォルテちゃんの無事を祈った。

ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)

ブクマや★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 リリスさんの虚飾の技、圧倒的な勝利!  読んでいて気持ちが良かったです。  リリスさんが見事な敵討ちを果たしましたが、  最後、目を閉じて祈る祈る描写に、ウルルでした。  素敵なエピソードありがと…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。