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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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388 斬ったのは命ではなく(リリス視点)

ブクマと評価していただき、感謝です(//Д//)

ここから、リリス視点です(`・ω・´)ゞ

 私はアー君の胸に突き立てたナナシを見つめる。


 斬りたいものを斬る神剣。


 本来なら、彼にしか扱えない剣だ。けれど、わずかに刃を伸ばすことくらいなら、私にもできた。


 目を見開くアー君に小さく笑みを浮かべる。


 何も説明しなかったことは悪いと思っている。けれど、メフィストを欺くためには、こうするしかなかった。


 私はすっとナナシを引き抜いた。


「安心して。斬ったのは、あなたの命じゃないわ」


 彼は胸元に手を当て、その傷口を確かめる。かすかに血は滲んでいるが、それだけだ。


 あのとき、彼の心臓は一瞬だけ動きを止めた。そして、再び動き出すと、隣に並ぶ魔核とひとつに融合を始めた。


 それは神臓(ピュアストーン)。


 神性体となったアー君だけが持つ特別な臓器だ。彼の体内に真の魔神気――真(ま)神(じん)気(き)が、静かに巡り始める。


「ふふ、気づいたかしら。自らの体の変化に。メフィストの目的は二つ。一つはアザトースたち異界の神をこの世界で実体化させること。そして、もう一つは、アー君の真の力を封じ、自らのものにすることだったの」


 私はここに来る前にメフィストの研究室に忍び込み、やつの企みを知った。


 異界の神たちからアー君の真の力を聞かされたメフィストは、ずっと昔からこの計画を立てていた。


 まず、魔核を狂わせる病魔を作り、魔界にばらまいた。そのせいで、私の娘マアナは犠牲となり、命を落とした。


 その後も、アザトースたちからこの世にない知識を授かり、仲間である悪魔たちに様々な実験や手術を施した。


 その過程で生まれた魔物や悪魔は、人界にある十王の遺跡に廃棄された。やがて、異界の神の依り代を作るための方法が完成した。


 そして、異界の神たちを実体化させる。その犠牲になったのは、魔界に残ったアー君やフォルテちゃんの仲間である堕天使たちだった。


 そのことを伝え終えた私は、最後に彼の胸元に、トンと指を立てる。


「つまり、今まで魔法や神気が使えなかったのは、メフィストが生み出した病魔のせいよ。あなたを捕らえるために、ずっと昔から準備していたみたい。あのころより、さらに改良されているようだけどね。なんとか斬る(・・)ことができたわ」


 そう言って、ナナシを彼に手渡し、背を向ける。


「ここはいいから、早くフォルテちゃんたちのもとに行ってあげて。彼女はあなたの万年筆を持っていたわ。それにエジェイルに渡した通信の魔導具も。きっとあなたを導いてくれるはずよ」


 アー君が口を開きかけるが、私は背を向けたまま手を上げて制した。もしアザトースが実体化してしまえば、フォルテちゃんでも敵わないかもしれない。


「……わかった。それでリリス、君はどうするんだ?」


 彼の言葉が背中に響く。そんなことは決まっている。唇を噛みしめ、メフィストを睨むと、マアナの顔が脳裏をよぎる。


(マアナ。あなたを奪った男を、ようやくここまで追い詰めたわ)


 私は口を閉じ、やつから視線を逸らさない。


「……そうか。俺はフォルテたちのもとに向かう。死ぬなよ」


 その瞬間、彼の気配が消えた。ようやく彼女たちのもとへ向かったらしい。メフィストに笑みを向ける。


「これで二人きりになれたわね。喜びなさい。私の相手ができるのだから」

「……まさか、ここで貴女が裏切るとは。ですが、よく調べましたね」


 やつは山羊の頭蓋骨の顎に手を当てながら答えた。アー君を取り逃がしたというのに、余裕を感じる。ほかに何か企んでいるようだ。


「まあ、いいです。アークは別の私に任せますよ。ちょうど、あいにく、都合よく地下の実験室に、培養を終えたコピーがいますからね」


 その言葉に肩をすくめて首を横に振る。


「ふふ、それは残念だったわね。さっき私が全部廃棄したわ。今ごろ、十王の遺跡の魔物たちが美味しく食べているはずよ」


 メフィストの動きが止まった。今までの余裕は消え、山羊の頭蓋骨が怒りで震え出した。


 その姿を、つまらなそうに見つめる。今まで大勢の同胞の命を弄び、屠ってきたくせに、たかが自分のコピーがいなくなったくらいで、何を取り乱しているのか。


 私は髪をかき上げ、手のひらに残った銀髪を握り締めた。その瞬間、銀蛇の鞭が現れ、メフィストを襲う。


 それはまるで生きているかのようにうねりながら、やつの頭に直撃した。空気を切り裂くような破裂音が響き渡り、山羊の頭蓋骨にひびが入る。


「ふ、ふざけるなよ、リリス。私の大事なコピーをすべて廃棄しただと。これまで培ってきた英知や技術は、もはやこの体にしかないのだぞ!」


 メフィストは山羊の頭蓋骨に指を立ててかきむしる。もはや気が狂ったのかもしれない。ならば早く楽にさせたほうがいいだろう。


 やつの言葉を無視し、鞭を叩きつけた。次の瞬間、山羊の頭蓋骨が真っ二つに割れ、メフィストの素顔がさらけ出された。


 そこには赤黒い瞳を持つ獣人の顔があった。特徴的な獣耳に、豚のように潰れた鼻。そして、口元から二本の牙が生えていた。


 その姿は悪魔ではなく、魔人そのものだった。

ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
 良かった╰(*´︶`*)╯♡  アーク君、どうなることかとヒヤヒヤしましたが、神蔵とは……。  さすがです。短いながらも緊迫感と臨場感が半端なかったです。  また勉強になりました。次も楽しみにし…
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