386 それでも、私は
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完結までまだありますが、全力で頑張ります<(_ _)>
漆黒の翼が消え、サタナルの力が失われたことを悟る。だが、すべてを失ったわけではない。私は膝が折れそうになるのを堪え、視線を落とす。
手元にはアクケルテとそのレプリカが残っていた。神銃は今でも私を主と認めていた。そのことが、挫けそうになる心を支えてくれる。
(……勝つ必要はないわ。サラとミザリーが来るまで、凌ぎきれれば、それでいいのよ)
ぐっと唇を噛みしめ、アクケルテを構えて走り出した。さきほど魔神気で傷を癒やしておいたおかげで、体は動く。
だが、明らかに身体能力は落ちていた。
気持ちばかりが先走り、体が追いつかない。それでも走りながら、銃弾を放つ。魔力の消費を抑えるために、装填したのは鉄の弾丸だった。
銃弾を撃つたびに、アザトースは無力化していたが、その威力では自分を傷つけられないと分かったのだろう。銃撃を無視し、無造作に手を横に振った。
私は慌てて腰を折り、身を低くする。次の瞬間、何かが頭上を通り過ぎ、無骨な岩肌を削った。
宙に舞う黒い髪が目の前を通り過ぎる。完全に回避することはできなかったようだ。
さらに集中力を高める。やつの一挙手一投足に細心の注意を払いながら、銃を撃ち続ける。銃弾が青銅の体に当たるたびに、甲高い音が響く。
やはり、ただの鉄の銃弾ではアザトースを傷つけるのは不可能だ。時間を稼ぐにも、相手が無視できる攻撃では、それも叶わない。
私はサラとミザリーが追いついてくれると信じ、走り続けた。鼓動が激しく心臓を叩く。ちらりとアザトースを見ると、こちらを振り向くことなく佇んでいた。
もはや、やつにとって私は脅威ではないのだろう。このまま時間が過ぎるのを待てばいい。そう思う自分と、それを許せない自分がいた。
呼吸を整えるために足を止め、壁に背を預ける。そして魔力を込めて、そっと壁に手を当てた。そのとき、アザトースが振り向き、手をかざした。
せっかく少しは休めると思ったのに、やつは許してくれなかった。思わず舌打ちをし、その場を離れると、アザトースの手も私を追う。
もし、あの見えざる巨大な手に握り潰されたら、ただの人間に戻った私では圧力に耐えられず、潰されてしまう。
背中から冷たい汗が噴き出る。それでも、竦みそうになる足を動かし続ける。
そのとき、アザトースが手を横なぎに振った。私は迷うことなく、前方に体を投げ出した。直後、何かがわずかに背中に触れた。
やつの見えざる手だろう。ぞくりと悪寒が走る。
(まさか、解析された!?)
地面を転がる私の耳に、岩が削れる音が届く。すぐに立ち上がって振り返ると、岩肌が大きく穿たれていた。
間一髪だった。だが、安堵の息を吐く余裕はない。すぐに走り始めると、アザトースが悠然とこちらを向く。だが、それだけだった。
(どうやら、解析はされなかったようね。もしくはする価値もないと判断したのか……)
軽く首を横に振り、短く息を吐き出した。
そして、やつの背後、さっき私が休憩した場所に、うっすらと浮かび上がる魔法陣を見て、ほくそ笑む。
ミザリーに教えてもらった魔法陣に上級の雷魔法を施し、展開していた。アザトースは、まだ気づいていない。
(……せめて一矢報いてやる)
やつに気取られないように必死に走りながら、魔法を放つ機会を窺う。そのとき、アザトースがこちらを向き、手を振り上げた。
その隙を見逃すことなく、魔法陣を起動する。次の瞬間、部屋の中が紫の雷光に染まり、雷鳴が轟く。
魔法陣から現れた紫の雷竜がアザトースを襲う。ミザリーが教えてくれた魔法陣は想像以上の威力だった。
心の中で彼女に感謝し、やつを見つめる。目も鼻も口もない四角い頭では、その表情は分からない。だが、初めてアザトースが膝をついた。
青銅の体は煤にまみれ、紫電を帯びている。感電しているのか、その場から動くことはなかった。
この好機を逃すわけにはいかない。ありったけの魔力を二つの銃に込め、雷の魔弾を装填して、引き金を引いた。
直後、二つの銃口から無数の銃弾が飛び散る。それは一旦広がるが、すぐに弧を描きながらアザトースのもとへ収束した。
四方を囲まれ、逃げ道はない。だが、やつは銃弾を無力化することができる。それでも魔法で傷ついた今なら、攻撃が通じるかもしれない。
息を呑み、じっと見つめる。すべての銃弾がアザトースの体に直撃し、金属を打ち鳴らすような乾いた音が鳴り響いた。
ようやく一矢報いてやった。つい口角が上がる。あとはサラとミザリーが到着するまで、逃げ続けるだけだ。
私はアクケルテとレプリカをホルスターに戻し、アザトースから視線を外すことなく、後ろへと下がる。
それでも、やつは動く気配を見せない。感電のせいかもしれないし、さきほどの銃撃のせいかもしれない。
アザトースの体には、蜂の巣のように無数の小さな穴が穿たれていた。どうせなら、このまま動くことなく、じっとしていてほしい。
そう願いながらも、そのことは顔に出さず、様子を窺う。
そのとき、やつが立ち上がった。
そして、体中にできた無数の穴をゆっくりと撫で回し始める。まるで何かを確かめているかのようだ。
その姿が不気味で、恐怖がじわりと湧いてくる。
気づくと、懐にあるアークの万年筆に手を伸ばし、握り締めていた。その隣には、エジェイルから託された通信用のペンダントがある。
突如、アザトースがこちらを向いて告げる。
「解析完了。……フォルテ。我、認めぬ」
無機質で無感情な死刑宣告。そう思えるほど冷たい声だった。徐々に指先が冷たくなり、体が石のように固まって動けなくなる。
さらに体温も奪われ、心臓もゆっくりとその動きを止めようとしていた。視界も少しずつ暗くなっていく。
(アーク、助けて……)
彼の顔が脳裏をよぎった。
もう意識を保つことができない。瞼が落ち、涙が滲む。もう最後だ。そう思ったとき、眩く輝く銀髪が視界の端に映った。
わずかに彼の声が聞こえたような気がした。だが、そこで私の意識は闇に落ちた。
ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)
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