384 我、認めぬ
フォルテ視点が続きます<(_ _)>
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私はベルゼガが縫い付けられていた巨大な柱から急いで離れる。そして、そこから抜け出した異形の男に銃口を向けた。
その間も、男を失った柱は崩れ続け、部屋を覆っていた壁もすべて剥がれ落ちていく。気づくと、部屋は無骨な岩壁に囲われていた。
柱の瓦礫を背に立つ男が、こちらを向く。
いや、目も鼻もない頭にいくつもの線が引かれているだけの顔だ。どこが正面なのか分からない。ただ、私がそう感じただけだ。
「我は異神アザトース。ようやく、この世界に存在を定着させることが叶った」
どこが口なのか分からないが、目の前の男は自らを神だと告げた。青銅の身体に正方形の頭を持つ異界の神。やつからは魔力も神気も感じない。
だが、その存在感は圧倒的で不気味だった。得体の知れない、この世の異物。決して、この世界にいてはならない。
理由は分からないが、そう確信する。少なくとも、ベルゼガを依り代にし、すべてを奪った男だ。許すことはできない。
私はただの鉄の銃弾を、アザトース目がけて放つ。
真っすぐに飛んでいく銃弾。だが、アザトースに近づくほどその速度は遅くなり、ついには宙で止まってしまう。
やつは宙に浮く銃弾に近づき、それを摘まんで顔の前まで持っていく。すると、縦横に走った線がほのかに輝き始めた。
「解析完了。この世界の銃弾は火薬ではなく、魔法で爆発的な推進力を得て飛び出すことを理解した」
そう告げて、アザトースは銃弾を地面に落とした。かすかな金属音が耳元に届く。
やつが何を理解し、どうやって銃弾を止めたのかを探るため、追跡の魔法を施した銃弾を無数に放った。
アザトースから大きく外れた銃弾だったが、すぐに軌道を修正し、大きく弧を描いて、やつを狙う。
床以外のすべてを包囲するように迫る大量の凶弾。その速度は衰えることなく、やつへと向かう。
もはや逃げ場などない。私はアザトースがどうやって攻撃を凌ぐのか、じっと見据える。その瞬間、やつの声が部屋中に響き渡った。
「銃弾。我、認めぬ」
その瞬間、無数の銃弾が一斉に止まり、床へと落ちた。
目の前で起こった現象に目を見開く。だが、動揺を隠し、すぐにアザトースの能力を考える。
やつが言葉を発した直後に、私の銃弾は力を失ったかのように落ちた。床に散乱する銃弾は色を失い、鉄の光沢も消え、ただの灰色へと変わっていた。
確か、やつはその前に銃弾を摘まみ、解析したと告げていた。それだけで大方の予想はついた。
ただ、最初の銃弾が徐々に遅くなり、止まった理由は分からない。だが、万物変化魔法でも同様のことはできる。
空気を粘土のように変化させれば、銃弾を包み込んで止めることは可能だ。警戒すべきは、力や効果を消す能力のほうだ。
私は初級の火魔法をアザトースに向かって放つ。魔法陣から飛び出した火球は一直線に進み、やつの右肩に着弾する。
今度は速度を落とし、止まることはなかった。ただ、初級魔法だ。大した傷をつけることはできない。
やつは肩についた煤を払い、その手をじっと見つめ、呟く。
「解析完了」
それだけだった。続けざまに、私は両手をかざし、水と火の魔法を同時に発動する。目の前に浮かぶ二つの魔法陣から火球と水球が現れ、アザトースを襲う。
「魔法。我、認めぬ」
また、やつが言葉を発すると、火球は霧散し、水球のみがアザトースの顔を目がけて飛んでいく。
初級の魔法で威力は弱い。やつなら避ける必要もない。だが、アザトースは右手を突き出し、それを掌で受け止め、「解析完了」と言った。
どうやら、顔に水がかかるのは嫌だったらしい。人間臭いところもあるとは、思わなかった。それとも、すぐに解析しただけかもしれない。
苦笑いを浮かべながら、私は再び魔法を放つ。今度は三つの魔法陣を展開し、同時に放った。
火球と水球、それに水の槍がアザトースに迫る。初級と中級の魔法だ。私は瞬きすることなく、じっと見つめる。
「魔法。我、認めぬ」
やつが言葉を発した直後、火球と水球は消え、水の槍だけが残った。その光景にほくそ笑む。やはり、やつの能力は解析したものにのみ有効のようだ。
迫りくる水の槍は次第に速度を落とし、空中で止まった。今度はもう一つの能力も使ったようだ。アザトースは一歩前に踏み出し、手を伸ばす。
私はその姿に笑みを深め、やつが触れる瞬間に魔法を解除した。アザトースは虚空を掴み、その手をじっと見つめる。
「解析不能」
その言葉に吹き出しそうになる。異形の力ではあるが、その正体が分かれば、対処はいくらでもあった。
私はアザトースが知らない上級魔法を複数展開し、アクケルテとそのレプリカにも、複数の属性を付与した魔弾を装填する。
この攻撃でやつを仕留める。私が一斉に魔法を放とうとしたとき、アザトースの顔に刻まれた線が光を放ち、それに沿うように顔が分解した。
宙に浮かぶ無数の正方形。それは目まぐるしく回転し、再びひとつの大きな正方形に戻ると、首の上に収まった。
呆然としながらも、私は構築を終えた魔法を放った。刹那、アザトースが呟く。
「我を。我、認めぬ」
その瞬間、アザトースが消え、誰もいない空間に魔法だけが突き進む。やがてそれらは互いにぶつかり、巨大な爆発を起こした。
一体、何が起きたのか分からない。爆風を受けながらも、油断なく銃を構える。やがて私しかいなくなった部屋に沈黙が落ちる。
そのとき、静かに声が響いた。
「解析完了」
それが何を意味するのか――想像した瞬間、背筋が凍る。ごくりと喉を鳴らすと、空間がぼやけ、アザトースが不気味に浮かび上がってきた。
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