380 邪神の子と旧友の拳
シルバーウイークが終わりましたね(T_T)
あと二日頑張りましょう<(_ _)>
スカイ視点のままです。
ロキたちのもとへ、俺とリヴィアエルは一気に詰め寄る。ふと視線を下げる。足元では、白き炎が煌めいていた。
俺は久しぶりに、三体の神獣と合神した。昔と比べて体への負担は少なく、以前よりも馴染んでいる。
理由は分からないが、嬉しい誤算だ。これなら漆黒の狼と影の女性を相手にしても、問題ないだろう。
翼を畳み、一気に加速してリヴィアエルを抜き去ると、漆黒の狼と影の女性を襲っていた波の斬撃が消え去る。
ちらりと後ろに視線を走らせる。その先で、リヴィアエルが小さく頷いていた。俺も頷き返し、前を向く。
そして、冷厳の戦鎚を持ち直し、ロキの子どもたちに突っ込んだ。
目の前に迫る俺に、二人は襲いかかる。だが、地面を滑るように走る俺は、くるりと方向を変え、攻撃を回避した。
次の瞬間、二人に詰め寄り、横向きのまま戦鎚を前に出すと、そのまま漆黒の狼と影の女性を押し出し、ロキから引き離した。
「あとは任せたぞ、リヴィアエル」
その言葉にリヴィアエルは軽く手を挙げて応じ、ロキのもとへ真っすぐに突っ込んだ。
直後、激しい斬撃の音が校庭に轟く。竜たちの神リヴァイアサンと同化した彼なら、邪神ロキにも負けることはないだろう。
俺は目の前の敵に集中する。影の女性が俺に押されながらも、漆黒の狼を突き飛ばした。その姿は、弟を守る姉のように見えた。
やはり彼女たちが悪とは思えなかった。アークじゃないが、光に怯え、影に身を潜める悲しき存在――そう感じてしまう。
そのとき、漆黒の狼が咆哮を上げ、大きく口を開けて襲いかかってきた。驚くことに、頭だけを巨大化させ、俺を飲み込もうとしている。
影の女性を助けようとする漆黒の狼。だが、その攻撃は彼女を巻き添えにする。舌打ちをして彼女を突き飛ばし、大きく跳躍して回避する。
漆黒の狼は地面に激突するが、すぐに起き上がり、こちらを睨む。その後ろには影の女性が佇んでいる。
戦鎚を構え、二人を牽制する。
ロキさえ倒せば、彼女たちが戦う理由はなくなるはずだ。油断することなくリヴィアエルとロキへ視線を向けると、二人は激しく打ち合っていた。
時折、ロキがリヴィアエルを挑発するような言葉を放つ。だが、彼はその戯言に一切応えず、ロキの深緑の鱗を確実に剥がしていた。
その光景に安堵し、わずかに肩の力が抜ける。一瞬だけ隙が生まれた。影の女性は自らの影を伸ばし、その中から無数の手を伸ばして俺を抑えつける。
両手両足に絡みつく数え切れないほどの影の手。必死に引き剥がそうとするが、無限に生えてきて逃れられない。
再び、漆黒の狼が巨大な口を開け、襲ってきた。獰猛な牙を覗かせる口が眼前に迫る。刹那、純白のブーツから白炎が迸った。
それはすべての影を燃やし尽くすと、凄まじい推進力へと変わり、その場から俺を連れ去った。
氷上のように地面を滑り、移動する。その動きは流麗で不規則。漆黒の狼が追いかけるが、距離が縮まることはない。
また、影の女性が自らの影を校庭を覆うほど広げ、無尽蔵に手を生み出し、俺を捉えようとする。だが、触れることさえできない。
ロキの子どもたちを翻弄し続けると、二人は次第に動きが鈍くなっていく。いくら邪神の子とはいえ、永遠に動けるわけではないみたいだ。
苦笑いを浮かべ、くるりと体を回転させると、後ろを追ってくる漆黒の狼を見やる。その瞳は黒く、感情は読めない。だが、疲労は滲み出ていた。
だらしなく口から舌を出す漆黒の狼。その姿に眉を下げ、俺は冷厳の戦鎚をやつに向かって振り下ろした。
その瞬間、漆黒の狼の周りに氷の檻が現れ、やつを捕らえる。俺は戦鎚を手放して雄牛の姿に戻して、やつを監視するように命じる。
そして、影の女性へと視線を向ける。彼女は俺を攻撃することなく、漆黒の狼へ影から無数の手を伸ばしていた。
やはり、二人が滅するべき悪とは思えない。両足に力を込めると、純白のブーツは白炎を上げ、俺を前へと押し出した。
走ることなく、前へと突き進み、勢いよく足を振り上げ、回し蹴りを繰り出した。くるくると回りながら影の手を切り裂き、影の女性へと近づいていく。
やがてすべての影の手を消し去り、彼女の前に立つ。それでも彼女は手を伸ばし、襲いかかる。だが、彼女よりも早く、足元の影を踏み抜いた。
その瞬間、白い爆炎が立ち上り、周囲の影を燃やし尽くす。すると、白き牢獄へと変わり、彼女の自由を奪った。
俺は白炎のブーツをゴクウへ戻し、彼女を見張るように告げ、リヴィアエルのもとへ歩き出した。
「お、お願いです。お、お兄様を、た、助けて」
振り向き、目を見開く。顔のない女性だと思っていたが、闇よりも深い漆黒のベールで隠されていただけだった。
彼女は口元だけを出して、俺に語りかけた。その言葉に嘘は感じられず、苦笑いを浮かべる。
「ああ、あの狼なら殺すことはしない。大人しくしていれば、傷つけることもないさ。悪いが、お前たちに構っている暇はない。すぐにロキを倒しに行かせてもらう」
それだけ告げて、その場を去ろうとした俺に、彼女はもう一人の兄のことを伝えた。俺は目を見開き、すぐにリヴィアエルのもとへ飛び立つ。
激しく打ち合うリヴィアエルとロキ。ロキの体を覆う鱗は剥がれ落ち、その蛇の顔は苦痛に歪んでいた。
(くそ、時間がない!)
俺は二人の間に割って入ると、背中にリヴィアエルの刺突を受ける。ぐっと激痛に耐え、ロキを押さえ込み、その顔面を鷲掴みにした。
「おい、スカイ。邪魔をするな! あと少しでこいつは死ぬ」
リヴィアエルの声が背中に響く。説明する時間も余裕もない。何も答えず、ロキの顔面へ爪を食い込ませた。
次の瞬間、ロキの顔から蛇の仮面が剥がれ、全身を覆う深緑の鱗が消え去った。俺は深緑の仮面を影の女性へと投げ渡す。
すると、それは次第に本来の姿――巨大な蛇へと形を変えた。
「つくづく外道だな、ロキ。まさか、子どもに自分への攻撃をすべて肩代わりさせていたとはな」
俺は起き上がると、ロキに向かって、言葉を吐き捨てる。
やつの子どもは三人だった。巨大な蛇と、影の女性と、漆黒の狼。そして、ロキは蛇の子どもを身に纏い、防具として使っていたのだ。
自らの子どもを道具のように扱う邪神。怒りが湧き上がる。
俺は神衣バハムートを神槍へと変えて構える。目の前に、金髪の美しい巨人の男が立っている。だが、その表情は恐怖で歪んでいた。
「ああ、この顔だよ、スカイ。僕が会ったロキは。なるほどね、こっちが本当の姿だったんだね。また騙されたよ。でも、もう飽きたな」
つまらなそうに呟くリヴィアエル。彼は海源の矛ネプトゥヌスを構え、腰を沈めた。
俺とリヴィアエルの視線が重なる。刹那、紅蓮と紺碧の刺突が閃き、邪神ロキの身体を無数に穿った。
バハムートで突かれた箇所は炎に焼かれ、ネプトゥヌスに射貫かれた箇所は純白の塩へと変わっていく。
やがてすべてが焼かれ、崩れ去り、その存在は消え失せた。俺はバハムートを肩に担ぎ、リヴィアエルへと歩み寄る。
彼は恥ずかしそうに頬を掻き、そっと拳を突き出した。その姿に目を見開くが、すぐに笑顔に戻ると、俺はこつんと拳を合わせた。
※『転生忍者は忍べない』は400話で完結します。
今回で380話。最終回まで残り20話となりました。
最後までお付き合いいただけると嬉しいです<(_ _)>




