378 邪神ロキと堕天使の再会(学園都市サイド)
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ジーク視点からスカイ視点となります<(_ _)>
ガリュウ殿下と鉄と筋肉の悪魔の戦いを、僕は見守っている。そのとき、ふとサラ先輩の声が聞こえたような気がした。
ただの人間である僕は、常軌を逸した戦いを前に怖気づいていた。だが、少しだけ胸が熱くなる。そして、わずかに勇気が湧いてきた。
次の瞬間、ガリュウ殿下を見失う。直後、悪魔の巨大な腕が千切れ、腹部に生えた無数の義手が砕け散る。
気づくと、悪魔は吹き飛び、地面を転がっていた。だが、すぐに立ち上がる。その姿に、目を見開いた。体の大半が鉄でできた異形の悪魔――その面影は、もうどこにもなかった。
筋肉は膨張し、圧倒的な存在感を放っている。だが、鉄はすべて消え、悪魔特有の青白い肌が露わになっていた。
そんな悪魔に、紺碧の身体に金の装飾と紫電を纏ったガリュウ殿下が、不敵に笑いながら近づいていく。
体の大きさなら、悪魔の方が遥かに大きい。だが、威圧感は圧倒的に殿下の方が上だった。悪魔は怯えながら後ずさる。
だが、ガリュウ殿下が逃すはずがない。獰猛に口角を吊り上げると、悪魔の前に立ち、雷を纏わせた拳を叩き込み始めた。
それは、光のような雷撃だった。
二本の腕は残像を残しながら拳を放ち続け、気づけば幾千もの打突となり、悪魔の体を穿っていた。
やがて悪魔の身体は血に塗れ、霧散していく。その光景を見ながら安堵の息を吐いた。その瞬間、耳を劈くほどの咆哮が響いた。
視線をそちらへ向け、息を呑む。金髪に蛇の顔を持つ細身の巨人。その影から漆黒の狼が現れ、雄叫びを上げていた。
さらに、その隣には顔のない黒塗りの女性が佇んでいる。ひとりと一匹を影に従えた不気味な巨人。それはさきほどの悪魔よりも邪悪で、絶大な圧力を放っていた。
◆
俺が蛇の巨人と戦っていると、突然、無数の雷鳴が轟いた。油断なく相手の攻撃を捌きつつ、ちらりと視線を向ける。
そこには、デミウルゴスに無数の雷拳を放つガリュウの姿があった。
まさに破壊の神らしい強烈な攻撃だった。いくら肉体を改造しても、所詮は悪魔だ。古代神の化身であるガリュウの相手ではなかったようだ。
漆黒の魔素へと還っていくデミウルゴス。ガリュウのほうが早く勝負をつけてしまった。
俺の相手はロキ。かつての友である智天使リエル――今は悪魔公リヴィアエルを騙し、アークと戦わせて魔界の門の破壊を企んだ邪神だ。
単純な力だけなら、そこまでの強敵ではない。ガリュウに気を向ける余裕もあった。だが、延々と喋り続けるロキに調子を狂わされる。
「おいおい、どうした。もう少し俺と話そうぜ、スカイ」
やつは俺の拳をぎりぎりで回避しながらも、その口調には余裕を感じさせた。果たして、どちらが演技なのか――。
ため息をつく。余計なことを考えすぎだ。ただ、目の前の敵を葬る。それだけを考えればいい。
神衣バハムートを身に纏った俺は無手だった。最初は銀の魔槍――重律槍を持って戦っていたが、ロキには通じなかった。
物質変化魔法で槍の重量を変え、変幻自在の攻撃を繰り出したが、蛇の鱗で覆われたロキの身体に傷ひとつ負わせることはできなかった。
ならばと、神気を込めて巨岩ほどの重量を乗せて放った一撃も、深緑に輝く鱗に弾かれ、粉々に砕かれた。
「いや~、悪いな。せっかくの武器を壊して。あまりにも脆弱な攻撃で驚いたぜ」
ロキは悪びれた様子もなく、軽く頭を下げた。俺はやつの戯言を無視し、柄だけとなった魔槍を手放し、拳を握り込む。
そして、そっと腰を落とし、右手を突き出した。
無手での戦いに切り替える。慣れない動きに悪戦苦闘しながら、アークの動きを思い出す。
散々、あいつとは組み手をしてきた。あの行雲流水のような動きを頭に浮かべ、模倣する。余計な力を抜き、最小限の動きを意識し始めた。
走るときもすり足で瞬時に止まり、向きを変え、ロキの攻撃を紙一重で躱し、音を消して近づく。
やつの蹴りも拳も、避け続ける。ゆっくりと流れるように動く俺に、ロキは一撃も当てることができない。
やがて、やつの懐に潜り込み、拳を叩き込む。ぱんっと乾いた音が響いた。ロキの体に触れる瞬間のみ力を込めた一撃は、大して効果がないように見えた。
それでも、拳を放ち続ける。ロキは傷ひとつ付かないその攻撃に笑みを零し、俺に殴打を繰り出した。
大振りで軌道も読みやすい。余裕で避けて、リズムよくロキに拳を当て続ける。すると、やつの顔が歪み始めた。
その表情に、ほくそ笑む。ロキは急に鳩尾を押さえ、後方へ飛んだ。指の隙間から見える腹は赤く腫れ上がり、数え切れないほどの小さな傷ができていた。
「やることが陰湿だな、スカイ。ちまちまと殴っていると思ったら、これが狙いか」
ロキが初めて悔しそうに顔を歪めた。ようやく本音を漏らしたような気がした。つい笑みが零れる。
「ぬかせ。散々殴らせておいて、気づかなかったお前が間抜けなだけだ」
俺は体の芯に響くような重い打撃ではなく、表面を弾き、切り裂く、軽くて速い打撃を狙って放っていた。
いくら硬い鱗に覆われていようが、金属ではない。腫れるし、傷つく。それに神衣で覆われた俺の拳は、鉄ぐらいなら簡単に穿つ。
上位の悪魔でも、さっきの攻撃を受ければ、ただでは済まない。あれだけの傷で済んでいるだけでも大したものだ。腐っても邪神ということか。
ガリュウの真似をして獰猛に笑い、拳の上にもう片方の手を重ねて指を鳴らす。そのとき、ロキが醜く口の端を吊り上げた。
すると突然、やつの足元の影が盛り上がる。蠢く闇は次第に明瞭な輪郭を結び、二つの形を作り出した。
ひとつは、咆哮を上げる漆黒の狼。そしてもうひとつは、しなやかに佇む女性の姿をした影だった。
二体の異形はロキを挟むように現れ、こちらに向かって猛烈な殺意を向ける。そして、躊躇うことなく襲いかかってきた。
油断していた。動きが遅れる。迫りくる二体の異形に拳を突き出そうとするが、間に合わない。
思わず両手を顔の前で交差し、身を守る。その瞬間、紺碧の濁流が二体の異形を押し流した。
「何やってんだ、ウリガル――って、今はスカイか。こんなやつを相手に油断しすぎだよ」
両手を下げ、顔を上げる。そこには紺碧の鎧を身に纏ったかつての友――堕天使リヴィアエルが立っていた。
ここまで、読んでくださり感謝です(//Д//)
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