375 敵意なき悪意(サラ視点)
SW突入。連日、投稿頑張ります(`・ω・´)ゞ
あっ、サラ視点が続きます<(_ _)>
私とフォルテは、偽神パズスをミザリーに任せ、地下道を歩き続ける。目の前では紫色の血塊が、ベルゼガの元へと地面を這い進んでいた。
ミザリーが抜け、周囲を照らす者がいなくなったため、私は神槍レーヴァテインに少しだけ神気を込め、穂先に炎を纏わせて周囲を照らしている。
相変わらず、壁には悪魔が縫い付けられ、苦悶の表情を浮かべていた。不吉や不気味といった感情よりも、命をないがしろにするメフィストへの怒りが勝る。
私たちが慎重に歩いていくと、再びベルゼガの血塊が動きを止め、震え出した。視線を向けた先には、髑髏と骨を組み合わせたようなおぞましい扉がある。
悪趣味にもほどがある。だが、メフィストが悪魔を縫い付けた岩壁と比べれば、大差ないのかもしれない。
ごくりと喉を鳴らして歩み寄り、扉に触れた。すると、力を込めるまでもなく、静かに開いていく。
目の前に広がる空間に、私は息を呑んだ。
そこは、闇の教会だった。
広大な礼拝堂を彩るステンドグラスも、厳かに佇む祭壇も、パイプオルガンも、そのすべてが黒ずんだ髑髏と無数の骨で形作られていた。
我が主を侮辱する造形に唇を噛み締め、中へと入る。すると、祭壇の上に巨大な聖杯らしきものが置かれていた。
それは漆黒の杯。そこにも髑髏や骨の意匠が施され、底なしの闇のような内側から、不気味な黒い靄が絶え間なく溢れ出ていた。
私はフォルテとベルゼガの血塊をその場に残し、レーヴァテインを構えて慎重に近づく。そのとき、杯の中から黒い泥のようなものが盛り上がった。
それは絶えず内側から押し出され、こんもりとした塊へと成長していく。そして突如、ぷつりと根元が切れ、卵のように丸まり、宙に浮いた。
ふと視線を下げると、漆黒の杯は役目を終えたかのように砂となって崩れ、祭壇の上にさらさらと広がっていった。
『ハジメマシて、コンニチは』
それは声と呼ぶには、あまりにも無機質で無感情だった。私は目の前に浮かぶ漆黒の塊をじっと見つめる。
すると、わずかにひびが入り、小さな穴ができた。その隙間からこちらを覗く目と視線が重なり、全身の肌が粟立つ。
その瞳には一切の光がなく、すべてを吸い込むような深い奈落が、中央に穿たれていた。
思わずレーヴァテインの矛先を向けると、隙間から見えていた目はぐるりと動き、真っ黒な唇へと入れ替わった。
『ヤメて、キズツケナイでクダサい』
抑揚もなく、感情もこもっていない声に眉をひそめる。それは、ただの音。ゆえに悍ましく、不愉快だった。
だが、こいつが何者で、私たちに危害を加える存在なのか、確かめる必要がある。私は湧き上がる拒絶感を押さえ込み、口を開いた。
「ごめんなさい。あなたが敵なのか分からなくて。私はサラ。名前を教えてもらえないかしら?」
『サら。イイナマエデす。ワタシは、悪神アンラマンユ』
隙間から見える唇は、自らの名前だけははっきりと告げる。だが、その他の言葉は変わらず、不快だった。
明確な敵意は感じられない。だが、このまま放っておいていい存在とも思えなかった。どうすべきか迷っていると、アンラマンユの声が耳に届く。
『ドウぞ、オトオリクダサい。コノサキニイるソンザイヲ、ケシてクダサい』
その言葉には、愉悦と期待――二つの感情がかすかに滲んでいた。どうやら、ここにいる異形の神たちは、仲間でも協力者でもないようだ。
私たちの目的は、アッくんを救い出すこと。ならば、この不気味な存在を無視して、ベルゼガのもとへ向かったほうがいいのかもしれない。
ちらりとアンラマンユを見る。その隙間から覗く唇は、醜く歪んでいた。その瞬間、覚悟を決めた。
「フォルテ、先に向かって。私はこいつを放っておけない!」
彼女に言い放つと、神槍レーヴァテインを振り上げ、アンラマンユに振り下ろす。間違いなく捉えた――そう思った。
だが突如、漆黒の手が隙間から伸び、レーヴァテインの矛先を掴んだ。
やはり強大な存在であることは間違いなかった。私の渾身の一撃を軽々と片手で防いでみせた。フォルテに視線を向けると、目を見開き、固まっていた。
「わ、わかりました、サラ。先に行きます。どうかお気をつけて!」
彼女は慌てた様子で頷き、足早に奥へと歩き出した。その先には、紫色の血塊が地面を這っている。
その姿を見つめる。そのとき、アンラマンユが声をかける。
『ドウシて、コウゲキヲスルノデスか?』
「まあ、あなたに敵意がないことは分かったわ。だけどね、そのすべてに向ける悪意に気づいたからには、放っておくわけにはいかないの」
私は神気を解放して天使化する。そして、力を込め、レーヴァテインを握るアンラマンユの手を振り解いた。
刹那、それは黒い粒子となって霧散し、隙間からあの奈落の瞳が、じっとこちらを見つめる。
敵意なき悪意がこもった眼差し。それを振り払うように、再び宙に浮く漆黒の卵にレーヴァテインを振り下ろした。
直後、甲高い音が鳴り響き、黒い殻に小さなひびが入る。崩れ落ちた殻の奥に、新たな隙間が生まれた。
その中から見えた白銀の髪に、私は息を呑む。
(……まさか、あの中にアッくんが閉じ込められている!?)
あり得ないと分かっていても、激しく動揺する。大きく首を横に振り、レーヴァテインを突き出した。
その瞬間、アンラマンユの中から声が聞こえた。
「……助けてくれ、サラ」
それは聞き間違えることのない最愛の人の声――アッくんの声だった。
最後まで、読んでくださり感謝です(//Д//)
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