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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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369 紫の血を追って

娘の文化祭の合間に投稿!

いつも読んで頂き、応援やブクマも、ありがとうございます(≧∇≦)

 飛び込んだ先は、底知れぬ闇だった。一切の光を拒絶する深淵へと、私たちは猛烈な速度で落ちていく。鼓膜を裂くような風の音の中、私は強引に翼を広げた。


 その瞬間、凄まじい風圧が翼に襲いかかり、全身が激しく圧迫される。奥歯を噛みしめてぐっと堪えると、ようやく余裕が生まれた。


 神銃アクケルテを構え、周囲を見渡すが、やはり何も見えない。ただ、肌を刺すような冷気と、鼻を突く湿ったカビの匂いを感じる。


「ここは地下のようだにゃ。岩からかすかに鉱物の匂いがするにゃ」


 状況から地下の可能性が高いとは思っていたが、ミザリーの言葉で確信する。


 私にはそこまで正確に匂いを嗅ぎ分けることはできない。だが、獣人の驚異的な嗅覚を持つ彼女なら可能だろう。


 魔界の地下に、こんな巨大な空間があることに驚きを隠せない。私たちは翼をはためかせ、ゆっくりと降りていく。


 どれほど時間が経ったのか分からない。果てなき深淵がついに尽き、私たちは冷えきった大地に降り立った。


「ようやく地面に辿り着いた。いったい、どこまで深いのよ、ここは」


 サラが紺碧の十翼を畳み、頬を膨らませた。ミザリーも油断なく周囲を見渡しながら、呆れたように呟く。


「こんな広大な穴があったら、魔界は陥没してしまうにゃ」


 彼女らしい言葉に口元が綻ぶ。だが、たしかにミザリーの言う通り、ここは途轍もなく広大だった。


 私はアクケルテを構え、横へと伸びる穴に銃口を向け、炎の魔弾を放った。


 それは周囲を煌々と照らしながら突き進むが、次第に小さくなり、やがて光は見えなくなってしまう。


 耳を澄ませるが、何も聞こえてこない。しんとした静寂だけが満ちている。かなり奥まで続いているようだ。


「ここで終わりではないようです。さらに歩くことになりそうです」


 私が眉を下げると、サラとミザリーも苦笑いを浮かべる。だが、すぐに表情を引き締め、小さく頷き合った。


 急いでメフィストを追わなければならない。あの最悪の名医が、いつまでもベルゼガをそのままにしておくとは思えない。


(たしか、あの悪魔は『依り代』と言っていたような……)


 その言葉があまりにも不吉に感じられ、全身の肌が粟立つ。私は思わず、そっと胸元に手を忍ばせ、アークの万年筆と白銀の羽に触れた。



――――――――――――



 メフィストを追って奥へ歩を進め、かなりの時間が経過した。先頭を歩くミザリーの両腕には、太陽のように輝くノヴァナックルが装着されていた。


 それだけで周囲は照らされ、彼女が腕を大きく振るたびに影が揺れる。彼女のおかげで、余計な魔法や神気を使わずに済んだ。


 ただ、どこまで続くか分からない巨大な地下道に、ため息が漏れそうになる。そのとき、ミザリーが立ち止まり、足元を睨んだ。


 そこには紫色の血だまりがあった。すぐにベルゼガの血だと察する。ただ、かすかに人間特有の鉄の匂いがした。


 おそらくヘルネストと『真の一体化』をした影響だろう。


「どうやら、誘っているようだにゃ。意外と近くにいるかもしれないにゃ」


 ミザリーが瞳孔を縦に細め、獰猛に笑う。彼女もケビエルと『真の一体化』を果たしたが、その性格はミザリーの影響を強く受けていた。


 私がじっと彼女を見つめていると、サラの声が耳に届いた。


「癒しの陽光(ハイヒール)」


 突然、辺り一面が真っ白に染まった。慌ててホルスターからアクケルテを抜き、周囲を見渡すと、ミザリーも腰を落として拳を構えた。


「傷は大丈夫ですか、サラ! 誰に襲われたのですか!?」


 油断していた。ベルゼガの血は囮で、敵が待ち構えていたのかもしれない。舌打ちを堪え、サラに視線を向けると、彼女は笑みを浮かべ、足元を指差した。


「驚かせて、ごめんなさい、二人とも。けど、これでベルゼガの場所が分かるかもしれないわ」


 その言葉に私たちは目を見開く。そして、サラが示した場所を見る。そこには紫色の血がスライムのように地を這い、動き始めていた。


 意味が分からず、異様な光景を呆然と見つめる。


「この血に治癒魔法を施したの。悪魔を癒すことはできないけど、ベルゼガもヘルネストとひとつになった。なら、人間の部分も残っていると思って。きっと、この血は彼のもとへ向かうわ」


 たしかにベルゼガの血からは、人間(ヘルネスト)と同じ鉄の匂いがした。理屈は分かる。だが、とっさにそんなことを思いつくだろうか。


 私には絶対に無理だ。聖女らしい彼女の機転のよさに驚くとともに、感嘆する。吐息を漏らし、サラに視線を向けると、ミザリーが叫んだ。


「二人とも、早くするにゃ。こいつを見失うにゃ!」


 そう言って、彼女は金色に煌めくノヴァナックルを着けた手を大きく振り、足早に後を追った。


 その背中を見つめ、微笑む。すぐに気持ちを切り替え、行動に移すミザリーの姿は頼もしかった。


 私はアクケルテをホルスターに戻すと、サラと一緒にミザリーを追った。

暑い中、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
 まさに奈落に相応しい深淵の描写は目に浮かびました。  いきなりのサラさんのヒールにびっくりしましたが、  サラさんの提案で納得。  それを追うミザリーさんの焦った表情も浮かんでくるのが凄いです。…
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