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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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368 七罪の天壇(フォルテ視点)

九月でも暑いですね。まだまだ熱中症には注意してください<(_ _)>

ブクマや応援ありがとうございます!

また、しばらくフォルテ視点です。

 私は足元に落ちた白銀の羽を拾い上げる。かすかにアークの気配を感じ、胸元に仕舞うと、サラとミザリーと一緒にパンデモニウムの広間にある漆黒の巨大な扉の前に立った。


 ――この先に七罪の天壇がある。


 そっと扉に触れると、いくつもの魔法陣が浮かび上がり、淡い光を放ちながら、闇色の表面に魔導回路が走った。


「どうやら、まだ私でも起動できるようです。ここから先には、最上位の悪魔にして、かつての同胞がいるはずです。油断は禁物です」


 その言葉にサラは頷き、ミザリーは親指を立てた。二人ともミゲイルとケビエルとの『真の一体化』を果たしている。


 ベルゼガはともかく、残り三人の堕天使に再会したとき、彼女たちがどのような反応をするのかは分からない。ただ、できれば穏便に済んでほしいと願った。


 唇を噛みしめ、そっと扉を押す。すると扉は、ゆっくりと開かれた。その先に広がる光景に、目を見開いた。


 昔と変わらぬ巨大な円卓の上にベルゼガが立ち、その隣には山羊の頭蓋骨を被った青年が並んでいた。


「ようやくここまで来たね、サタン。後ろの二人はミゲイルとケビエルか。相変わらず、ルチーフェにご執心というわけか」


 紫色の髪をかき上げながら、ベルゼガが私たちを見る。その眼差しは鋭く、怨嗟の色が滲んでいた。だが、すぐに表情を戻し、首を横に振った。


「まあ、いい。それより取り引きをしよう。サタン、戻ってきてほしい。君が戻ってくれば、ルチーフェも再び魔界の王になってくれるはずだ」


 ベルゼガはまっすぐ私を見つめて頭を下げた。その姿に息を呑む。あの傲慢で、人を見下すような態度は鳴りを潜めていた。


 それだけ彼も追い込まれているのかもしれない。いったい、魔界で何が起きているのだろうか。それに、私が魔界に戻ったところで、アークが魔王になるとは限らない。


 そもそも一度、アークは我が主に命を奪われている。手を下したのはサラ(ミゲイル)だが、彼が魔王になれば、神界から別の制裁者が送り込まれるかもしれない。


 ようやく復活し、我が主からも許しを得たのだ。再び、彼を裏切り者にさせるわけにはいかない。私が口を開こうとすると、ベルゼガが言葉を続ける。


「それにミゲイルとケビエル。君たちも歓迎するよ。僕たちでルチーフェを支え、この魔界に楽園を築き上げよう!」


 彼は両手を広げ、円卓の上をコツコツと足音を鳴らしながら歩いてくる。その瞳には狂気や焦り、そして何かに抗うような苦しみが宿っていた。


 次第に近づくベルゼガを前に、声が出ない。答えは決まっている。だが、それを口にした途端、アークの身に何が起きるか分からない。


「ところで、後ろにいるのはメフィストかにゃ?」


 ミザリーが瞳孔を縦に細め、静かに尋ねた。彼女もベルゼガのただならぬ雰囲気に、警戒を強めている。だからこそ、時間を稼ごうとしていた。


「ああ、彼か。そうだよ。この山羊の頭蓋骨を見れば、気づいて当然か。ただ、本体じゃない。コピーだ。けれど、その知識や技術、能力は本体と変わらない。僕が捕まえて、利用させてもらっている」


 そう言って、ベルゼガが後ろを向くと、今まで微動だにしなかった山羊の頭蓋骨を被った青年が、静かに歩き出した。


 ベルゼガと違い、足音を立てることはない。だが、それが余計に不気味だった。じっと見つめていると、彼はベルゼガの隣に並ぶ。


 深く被った山羊の頭蓋骨のせいで目元は隠され、その表情は読めない。私が目を細めたとき、ベルゼガが口を開いた。


「捕まえたときは、不気味な形をしていたけど、僕の傍に控えさせるには耐えられなくてね。手術を施してもらったんだ。自らの肉体にね」


 そう言って、ベルゼガが顔を歪め、そっとメフィストの山羊の頭蓋骨に指を這わせる。得体の知れない悪寒が、全身の肌を粟立たせた。


 そのとき、彼は山羊の頭蓋骨を持ち上げ、私たちの前にメフィストの顔をさらけ出した。


 ――息が止まった。私たちは目を剝き、啞然とする。


 ベルゼガの隣に立つ青年は、アークそっくりだった。だが、その目元には瞳はなく、深く窪んでいるだけだった。


「ふふ、驚いたかい。さすがにメフィストでも、ルチーフェのあの美しい闇夜の瞳を再現することはできなかったみたいだ。だが、これを被せておけば問題ない。本物は僕の手の中にあるしね」


 ベルゼガはメフィストの顔を再び山羊の頭蓋骨で隠すと、口元を押さえて笑い出した。その姿は狂気に満ちていた。


 私が神銃アクケルテに手をかけようとしたとき、彼の頬から涙が零れた。意味が分からず、動けなくなる。


「皆、いなくなったんだ。ベルフェもマーモンもアデウスも、消息不明だ。これもあいつらが現れてからだ。この悲しくも美しい魔界が狂い出したのは!」


 ベルゼガは大声で叫び、髪をかきむしる。彼は狂っていた。そして、苦しんでいたのだ。


 たったひとり残されても、この魔界を救おうとし、限界にきたのかもしれない。私は彼に手を伸ばそうと、一歩足を踏み出した。その瞬間、頬に生暖かい何かが触れる。


 それは妙に熱を持って、ゆっくりと頬を伝い落ちていく。視線を落とすと、暗い床の上に、ぽつりと一滴の紫の沁みが広がっていた。


「くくく、ようやく、本当にようやく隙を見せてくれましたね、ベルゼガ様。いやはや、操られるフリは疲れますね。ですが、ですが、これであのお方の依り代が完成します。ええ、しますとも!」


 呆然とする私の耳に、不快な声が届く。思考がまとまらない。だが、自然と顔は上がった。


 目の前には、背後から胸を貫かれたベルゼガの姿があった。傷口から大量の紫色の血が流れている。そして、その背後でメフィストが山羊の頭蓋骨を揺らし、笑っていた。


 私はその光景を見ても、理解できなかった。ただ血を流し、苦痛の表情を浮かべるベルゼガを見つめているだけだった。


 次の瞬間、私の横を青と橙の影が通り過ぎた。サラとミザリーだ。二人は金色の籠手と剣を振り上げ、メフィストに迫る。


「おっと、このままでは折角の依り代に傷がついてしまいます。もう私がつけましたけどね。それでもこれ以上は遠慮してもらいたい。そう、してもらいたいのです!」


 その瞬間、メフィストの背後の空間が捲れ、巨大な奈落が生まれる。そこから巨大な手が現れ、やつとベルゼガを掴み、中へと引きずり込む。


 一歩も動けず、目の前の様子を無言で見つめていると、ベルゼガと目が合う。その瞳には後悔と悲しみの色が滲み、口元がかすかに動いた。


『た・す・け・て』


 そう言ったような気がした。そして、そのときの瞳だけは狂っていなかった。


 刹那、私はホルスターからアクケルテを抜き、走り出した。そして、サラとミザリー、三人同時にその奈落へと飛び込んだ。

暑い中、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
 アーク君のコピーをまたしてもーー。  メフィストがベルゼガが背後から貫くシーンは、 「うわっ!」と身体が仰け反るぐらいの衝撃でした!  大きな手に掴まれたメフィストとベルゼがは奈落の底へ…… …
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