↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

371/407

364 パンデモニウム突入

健康には気を付けてください<(_ _)>

ブクマや評価、本当にありがとうございます!

 パンデモニウムの前に着いた私たちは、巨大な灰色の塔を見上げる。禍々しい中にも、どこか荘厳な雰囲気が漂っていた。


 視線を落とすと、目の前に三つ首の猛犬――ケルベロスが喉を鳴らして睨んでいる。さすがこの塔の門番だ。その圧力は凄まじい。


 私は後ろで怯えるエジェイルに優しく微笑み、クラウディアとの約束を思い出す。あのとき彼女は、私たちに向かって叫んだ。


「いったい、どういうつもりですか! あんな危険な場所にエジェイル様を連れていくなんて――正気ですか!」


 彼女の言葉は正しかった。だが、アークを救うためには、エジェイルの存在が鍵になるかもしれない。それに彼女(・・)にエジェイルを会わせることで、状況を打開できる可能性もあった。


 私が唸り声を上げるケルベロスに銃口を向けようとしたとき、ミザリーが手のひらで拳を包み込み、指を鳴らしながら前へ出る。


「フォルテは、エジェイルを守っているにゃ。クラウディアとの約束を思い出すにゃ」


 私は苦笑いを浮かべ、エジェイルをそっと抱き寄せ、小さく頷く。彼女の安全が最優先だ。


 クラウディアとの約束もあるが、アークを悲しませることはできない。それに、彼女(・・)にも顔向けができない。


 視線を落とし、エジェイルの顔をじっと見つめた。そのとき、鈍く低い音が響く。


 顔を上げると、口から血を吐き出し、地面を転げ回るケルベロスの姿が目に映った。その胴体は大きく陥没していた。


 ミザリーは苦痛で顔を歪めるケルベロスに向かって走り出し、思い切り蹴り飛ばした。三つ首の猛犬は宙に放物線を描き、パンデモニウムの横を通り過ぎていく。


 たしか、あの先は断崖絶壁の奈落だったはずだ。ケルベロスの鳴き声が、次第に小さくなっていく。


「相変わらず容赦ないわね」

「あんなやつがいたら、邪魔にゃ。それにエジェイルが怯えるにゃ」


 サラがため息交じりに呟き、ミザリーはそれを鼻で笑った。私はそんな二人を眺めつつ、クラウディアの言葉を思い出す。


「……わかりました、フォルテ様。ですが、必ずエジェイル様を守ってください」


 涙を目に浮かべ、絞り出すように告げた言葉が、胸の奥にずしりと沈む。あの瞳を見たとき、タルロスの顔がよぎった。


 私はエジェイルに添えた手に力を込め、心の中でクラウディアとタルロスに誓った。必ず無事に戻ってくると――。


 唇を噛み、パンデモニウムを睨む。そのとき、くいっと服を引っ張られた。顔を下げると、エジェイルが震えながら、私の服の裾を握っていた。


「……私も、覚悟はできています」


 彼女は小さいが、はっきりと私に告げた。私はそっと彼女の頭を撫で、優しく頷いた。



――――――――――――



 パンデモニウムの中に入った瞬間、大勢の悪魔たちが私たちに襲いかかった。私はすぐにエジェイルの前に立ち、神銃アクケルテを構えた。


 だが、それよりも早くミザリーとサラが駆け出した。


 ミザリーは太陽のように輝く小手――ノヴァナックルを召喚し、両手に装着すると、そのまま一気に悪魔たちの群れを走り抜けた。


 直後、大勢の悪魔たちが爆ぜる。あの一瞬で、無数の連撃を悪魔たちに叩き込んでいた。


 ふと視線を戻せば、サラが神剣レーヴァテインと白竜の杖(ロッドオブアドニス)を重ね合わせ、神槍レーヴァテインを創り出すと、軽やかに悪魔たちへ突っ込んでいく。


 一斉に迫る悪魔たち。だが、彼女は踊るような足運びで攻撃を躱し、くるくると神槍を回転させ、悪魔たちを切り刻む。


 一刀のもとに斬り伏せていくサラ。それは神楽――神に祈りを捧げる舞いそのものだった。


 やがて、パンデモニウムに静寂が訪れる。あれほどいた悪魔たちはすべて塵となり、魔素へと還っていった。


「……すごい」


 私の後ろに隠れていたエジェイルが呟いた。その目には憧憬の色が浮かんでいる。私は彼女の肩に手を置き、そっと呟く。


「彼女たちも、アークの婚約者です。あれくらいは当然です」


 その言葉にエジェイルは、ぱっと顔を上げる。私が笑顔で頷くと、彼女も笑みを浮かべ、頷き返した。


「おーい、早く行くにゃ。まだ一階にゃ」

「そうよ、さっさと最上階に向かいましょう」


 私とエジェイルは前を向く。そこには手を振り、元気よく声をかけるミザリーと、両手を腰に当て、頬を膨らませるサラがいた。


 私たちは苦笑いを浮かべながら、駆け足で二人のもとへ向かった。



――――――――――――



 一階に待ち構えていた悪魔を倒して以降、敵と遭遇することはなく、順調に階段を登っていく。


 魔界を支配する悪魔たちが集まるパンデモニウム。罠や仕掛けなどはない。私たちは言葉を交わすことなく、黙々と歩を進める。


 やがて、塔の中腹に辿り着いた。そこは大きな広間だった。アークが魔王として統治していたころは、悪魔たちの意見を聞く場所として使われていた。


 どんな悪魔にも分け隔てなく耳を傾けるアークの姿を思い出し、笑みが零れる。そのとき、中央に人影を捉えた。


 すらりと伸びた手足に露出の多いドレス。そして、全身を這うように刻まれた一匹の大蛇の刺青。


 彼女は私を見て、流れるような銀髪を無造作に後ろへとかき上げた。


「……久しぶりね、サーちゃん、じゃなかった、フォルテちゃん」


 妖艶に微笑むその姿に息を呑む。彼女は紺碧の瞳で、じっと私たちを見て、静かに歩き出した。

暑い中、読んでくださり感謝です(//Д//)

ブクマや★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 ミザリーさんの相変わらずの無双っぷりに笑えました。  サラさんもやはり強い。  最後に登場してのは、一体?  次話も楽しみにしております☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。