360 愛に勝る力
連日投稿も今日で最後です。
付き合って頂いた皆様、本当にありがとうございました<(_ _)>
私たちがこれからについて話し合うために席に着いた途端、勢いよく扉が開き、アドニスとタルロスが飛び込んできた。
「よかった、ここにいたんだね。やっぱり、シロの鼻はすごいや」
「フォルテ様、ご無事でしたか。本当によかった」
全員が二人に目を見開く。どうしてここが分かったのか、聞くまでもなかった。アドニスの腕の中に収まるシロが、自慢げに鳴いた。
「さすがだにゃ、シロ。私の気配が分かるとは」
「ガウッ!」
ミザリーが親指を立てると、シロが元気よく答えた。その姿に困惑する者もいれば、いつも通りだとため息をつく者もいた。
私は顎に手を当て、思考を巡らせる。これは都合がいいかもしれない。自然と口角が上がり、タルロスたちに席へ着くよう促した。
彼女は頬を染め、おずおずと私の横の席に腰を下ろし、その隣にアドニスも続く。改めて全員が席に着いたことを確認すると、私はすぐに自らの考えを述べた。
「皆さん、すでに知っている者もいますが、アークは魔界にいます。ベルゼガに捕らわれている可能性が高いです」
そこで言葉を切り、全員を見渡す。入学式にいたサラ、ミザリー、スカイ、ガリュウは頷き、ジークとヘスティアは困惑の表情を浮かべている。
そして、タルロスとアドニスとシロは驚きを隠せず、呆然としていた。当然の反応だが、説明している時間はない。私は一拍置いて、言葉を続ける。
「そこで、学園に残って守る者と、魔界に赴いてアークを助ける者に分けたいと思います」
「まあ、妥当な判断だと思うが、どのように分けるつもりだ?」
ガリュウが獰猛に笑い、尋ねる。
「簡単です。単純に戦力を半分にします。私とサラとミザリーが魔界に向かい、残りは全員、学園に残ってもらいます」
その言葉にいち早く反応したのは、スカイだった。彼は勢いよく立ち上がり、叫んだ。
「ふざけるな、フォルテ! どこが半分なんだ。どう考えても学園のほうが多いだろう!」
予想通りの反応だ。私が眉を下げ、口を開こうとしたとき、サラが静かに言葉を引き継ぐ。
「少し言葉が足りないわよ、フォルテ」
彼女は私を半目で睨み、スカイに視線を向ける。
「スカイ、よく聞いてほしいの。ここはもう魔界の一部。多くの悪魔が人間を狙っているわ。しかも、その規模は学園都市から少しずつ広がりつつある」
彼女は諭すように、丁寧に言葉を紡ぐ。そんなサラを見て、スカイは椅子に腰を下ろし、胸の前で腕を組んだ。
「学園に残る者たちは、悪魔を討伐するだけじゃ駄目なの。人々を助けて守る。そして、傷ついた人を治療しないといけないのよ。戦力って、勝つために必要な力や能力のことでしょ。なら、学園に残る者の勝利って何?」
サラはじっとスカイを見つめる。彼が目を閉じて考え込むと、ガリュウが代わりに答えた。
「ここにいる全員を死なせず、悪魔から守り抜くことだろ」
「さすが、ガリュウ。その通りよ。そのためにも人は多いほうがいい。癒す力も必要だし、作戦や指揮する能力も欠かせないの。それにベルゼガが何も仕掛けてこないはずがない。ここにも、あいつに抵抗できる強力な力は必要よ」
ガリュウの言葉に満足げに頷き、サラはスカイを見やる。彼は頭を掻きながら、ぼそりと呟く。
「なんとなく分かったよ。だがな、なら俺が魔界に行ってもいいだろう。正直、サラやフォルテ、ミザリーと比べても、戦力として遜色はないはずだ」
確かにその通りだ。彼はすでに神竜バハムートと『合神』でき、本来の力を取り戻しつつある。
どう答えようかと、サラと私は眉を曇らせる。そのとき、ミザリーが勢いよく立ち上がり、人差し指をまっすぐスカイに突きつけた。
「分かってにゃいな、スカイ。お前は強い。それに親友であるアーたんを助けたい気持ちも理解できる。だが、私たちにも譲れない想いがある。それは愛にゃ! それに勝る力なんて、あるはずがないだろう――にゃ!」
彼女は腰に手を当て、胸を張って告げると、ふんと鼻を鳴らした。すぐにシロが反応して吠える。その瞬間、アドニスは吹き出し、タルロスは額に手を当て、首を横に振った。
部屋の空気が和む。私は彼女に感謝した。私もサラも、気持ちは同じだった。だが、堂々と皆の前で言う勇気はなかった。
なぜなら、これはアークを救出すると同時に、魔界と化した学園都市を守るための戦いでもある。私情を挟むことは躊躇われた。
だが、彼女ははっきりと皆の前で言い放った。少しだけ、ミザリーが眩しく見えた。そのとき、サラが立ち上がる。
「そうよ、アッくんを助けるのは私たちよ。どうしても魔界に行きたいなら、私たちを倒してみせなさい」
彼女はスカイに挑発的な笑みを浮かべる。そんな彼女たちに口元を綻ばせ、私も静かに腰を上げた。
「ごめんなさい、スカイ。さきほどは言い間違えました。戦力を半分にするのではなく、アークの救出に向かうのは、この中の最高戦力である私たち以外に考えられません。ご不満なら、まず私が相手になります」
私たちが真っすぐスカイを射貫くと、彼はひゅっと息を呑み、両手を挙げた。ガリュウはその姿に笑い出し、スカイの肩を力強く叩く。
ジークは眼鏡を指で押し上げて肩をすくめ、涙で目を腫らしていたヘスティアは少しだけ口角を上げた。
タルロスだけは心配そうにこちらを見つめていた。だが、隣に座るアドニスに袖を引っ張られると、彼女は目に涙を浮かべながら口を開いた。
「フォルテ様、必ず帰ってきてください」
その言葉に、アークの笑顔がよぎった。あのとき、彼は私たちに向けて、こう言ったはずだ。
「ええ、必ず戻ってくるから、待ってて」
微笑みながら零れた言葉に、サラとミザリーは視線を合わせ、タルロスは静かに頷いた。
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