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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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351 忍びたいのに、忍べない朝

おかげさまで、20万PVを突破しました。


読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます。

これからも少しでも楽しんでいただけるよう、丁寧に投稿していきます。

 ミリーとの四日間を終え、我が家に戻った翌朝。


 慣れ親しんだベッドの肌ざわりが心地よかった。目を覚ますと、カーテンの隙間から差し込む日はすっかり高くなっていた。


 俺は起き上がり、窓辺に歩み寄る。春なのに日差しは鋭く、思わず目を細める。カーテンを開け、全身で陽光を浴びながら視線を落とした。


 中庭では、ミリーとサンドロ君が稽古に励んでいた。二人には旅の疲れはないらしい。弾むような動きで、組み手を繰り返している。


 そのとき、勢いよく扉が開く音が耳に届いた。振り返ると、アドニスが満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる。


「おはよう、アーク。春休みなのに、全然会えなくて寂しかったよ」


 俺が困ったように笑うと、彼は思い切り抱きついた。足元を見ると、シロがつぶらな瞳で見上げていた。


 たしかウラガーノドラゴンの転生体だったはずだ。だが今は、真っ白な子供の虎の姿をしている。どうやらしばらくは、ドラゴンに戻りたくないらしい。


 五大邪竜と恐れられていた存在が、そんなことでいいのだろうか。


 俺は眉を下げてシロを見下ろす。すると、彼は全力で尻尾を振った。その姿は虎というより犬だ。


「どうやら、シロもアークのことが好きみたいだね」


 アドニスに笑顔で告げられ、俺は顎に手を当て、首をひねる。


 魔界の門では、ウラガーノドラゴンを倒し、フォルテとデミウルゴスが戦っていた裏山に叩き落とした。


 どう考えても、懐かれるようなことをした記憶はない。考えても仕方ない。それに嫌われるよりは、ずっといい。


 そう思い、俺は背筋を伸ばし、アドニスの頭をぽんと叩いた。


「ん~、久しぶりに一緒に出かけようか」

「うん、いいの!」

「バウッ!」


 どうやらシロもついてくるらしい。だが、三人――もとい二人と一匹で街を歩くのも楽しいかもしれない。ふと気になり、アドニスに尋ねる。


「そう言えば、シロは雄と雌、どっちなんだ?」


 その言葉にアドニスは、きょとんと首を傾げて黙り込む。やがて手を叩き、シロに手を伸ばして持ち上げた。


「ほら、付いてるから男だよ!」


 わざわざ見せなくてもいい。


 シロが恥ずかしそうに耳を畳み、俯いている。俺はアドニスの頭を撫で、彼を下ろさせる。


 二人にしばらく待っているように告げ、俺はヘンリさんに着替えを持ってきてもらうため、呼び鈴を鳴らした。



――――――――――――



 俺はヘンリさんに朝食は準備しなくていいと告げ、アドニスとシロを連れて屋敷を出た。


 学園都市は変わらず賑やかだった。多くの国の若者が、世界最高の授業を受けるために集まっている。その数は一万を超える。


 様々な学校が建ち並び、充実した施設が備えられ、そこでは優秀な教師たちが教鞭を執っていた。


 露店で買ったサンドイッチを食べながら、その穏やかな光景に俺は目を細める。春風が吹き抜け、青葉が舞った。


 そっと肩に落ちた一枚を払い、振り向く。そこには大勢の人だかりができていた。


 ほとんどが女性だが、少し男性も混じっている。ただ、全員が頬を染めてこちらを見ていた。


 もう慣れたし、さすがに気づいた。


 スカイやジーク、それに父やアルス兄さん。周りにいる人たちが美しく、それに比べると自分は劣っていると思っていたが、そうではなかった。


 前世では珍しくなかったが、俺の漆黒の瞳は、この世界にはほとんど存在しない。東洋連合国にもいなかったのだから、間違いない。


 その珍しさも相まって、俺は目立ってしまう。


 忍びたいのに、忍べない。


 ならば、いっそ嫌われ、怖がられたほうがいいかもしれない。


 俺が指笛を吹くと、高く澄んだ音が街中に響き渡った。直後、上空からばさりと鴉が舞い降り、俺の肩にとまる。


 八咫烏を知る俺は気にならないが、この世界の多くの国では、鴉は不吉の象徴とされている。俺は食べかけのパンをむしり、差し出した。


 鴉は一声鳴き、嘴でそれをついばんだ。さすがに不気味だろうと後ろを向くと、全員が恍惚とした表情を浮かべていた。


「ねぇ、ねぇ。その鴉に僕もごはんをあげていい?」


 アドニスが、困惑する俺の袖を引っ張る。その姿に胸が温かくなる。俺は前屈みになり、アドニスはクッキーを砕いて差し出した。


 鴉は器用に嘴を使い、一つひとつをついばむ。くすぐったいのか、アドニスは相好を崩す。俺は彼の頭を優しく撫でた。


 その瞬間、悲鳴が上がる。見たくはないが、視線を向けると、多くの女性が口元を手で押さえ、目を輝かせていた。


 慣れたと思っていたが、違ったようだ。何気ない仕草に反応する女性たちに、眉を曇らせる。


 俺は腰を落としてシロを抱きかかえ、アドニスを引き寄せた。


 また悲鳴が上がるが、無視して素早く魔法を展開する。その瞬間、ふわりと体が浮き上がった。


 空気の壁に乗った俺たちは、そのまま上空まで一気に上昇した。名残惜しそうに俺たちを見上げる女性たちを一瞥する。


 空は少し寒かったが、静かだった。


 俺は襟を緩めて、シロを下ろす。彼は寂しそうに俺を見ていた。もう少し散歩がしたかったようだ。


 慰めるようにシロの頭を撫で、俺はミューズネイト学園へ向かった。

暑い中、読んでくださり感謝です(//Д//)

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― 新着の感想 ―
 まず、祝20万PV٩(๑❛ᴗ❛๑)۶おめでとうございます。  今回のアークさん、本当に忍べませんでしたね。  アドニス君を連れての登校……次話も楽しみにしております♪───O(≧∇≦)O────…
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