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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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297 暗黒点の一撃、目覚める三つ目

 私は血の海から次々と湧き出る深紅の蛇を撃ちながら、十八本の蛇の口から放たれる魔弾を避ける。


 体を動かすことは苦手だが、そう言っていられる状況ではなかった。身体強化を施して走りだすと、魔弾を搔い潜り、地面を這う血蛇を確実に仕留めていく。


 堕天使化してもいいが、まだ敵の実力も、正体も分からない。こちらの手札を見せるわけにはいかない。


 それに九王が放つ魔弾は、明らかに先ほどの私の魔弾を模写している。地面に当たるたびに爆発を起こし、白い蒸気が舞う。


 堕天使化を真似できるとは思わない。だが、力の一端を複製されるのは、許せなかった。


 この力は魔界の王――サタナルの力だ。遺跡の王とはいえ魔物風情が真似していい力ではない。不敬だ。


 一向に攻撃の手を緩めない十八首の大蛇を睨む。知性はなく、ただひたすら私だけを標的に撃ってくる。


 あまりこんな下らない撃ち合いに付き合い、疲れるのは勘弁したい。私は小さくため息をつき、銃撃を止めて両手の拳銃に魔力を込め始める。


 途端、血の海からうじゃうじゃと血蛇が湧き出す。その光景を見て、もう一度、ため息をつく。


 強力な魔弾を造るためとはいえ、攻撃を止めたのは失敗だったかもしれない。しかし、このまま撃ち合うのも得策ではない。体力は相手のほうがありそうだ。


 無数の血蛇が白亜の大理石を這いながら、近づいてくる。レプリカのほうは魔弾が完成したようだ。カチッと金属音が届く。


 神銃アクケルテの強化・補助部品を目的に造ったレプリカ。威力は劣るが、その分、魔弾を造り装填する時間は短い。血蛇相手なら、ちょうどいい。


 寄ってくる血蛇。私は魔弾を回避しながら、一直線に並ぶよう誘導した。やはり知能は低いようだ。いとも簡単に血の海へと続く赤い道ができる。


 私はほくそ笑むと、漆黒の魔弾を放つ。それは次第に速度を落とし、強力な重力を発生させて周囲を巻き込む。


 こちらに向かう血蛇たち。だが、私から離され、魔弾に吸い寄せられる。無数の血蛇が圧し潰され、漆黒の魔弾は肉塊に覆われた赤い球体へと変わる。


 それでも重力は衰えることなく、さらに強まり空間すら引き寄せ始める。


 その影響は九王が放つ魔弾にも及んだ。私を狙ったはずの魔弾は重力に引っ張られ、大きく軌道を反らした。


 ゆっくりと進む深紅の球体は、血の海の上に止まると、一気に力を解放した。超強力な重力場が展開され、一瞬で血の海を吸い込む。


 赤かった球体も徐々に小さくなり、暗黒点へと変わる。それは周囲の光さえ飲み込み、十八本の蛇すらも喰らおうとする。


 必死に足掻く蛇たち。もう魔弾を放つ余裕すらない。やがて力尽きた十八本の首は一つに束ねられる。


 予想を超えた魔弾の重力は遠く離れた私をも飲み込もうとした。次第に引き寄せられる。そのとき、神銃アクケルテから、再びカチッと装填完了の合図が鳴る。


 私は笑みを浮かべ、銃口を暗黒点――その向こうに見える十八本の蛇へと向ける。


 刹那、紅蓮の炎が迸った。真っ赤に燃えた赤銅に輝く魔弾は、大気を焦がし、空間を穿ちながら九王へと突き進む。


 赤銅の魔弾は暗黒点の重力すら無視し、十八本の首が絡み合う蛇たちに直撃した。一瞬の静寂が落ちる。次の瞬間、白亜の部屋をさらに白く染めた。


 魔弾に込められた絶対零度の氷塊に、超高温プラズマの熱量を衝突させ、瞬時に想像を絶する量の水蒸気を発生させた。


 原理は九首の蛇を葬った『内爆』と同じだが、その威力は桁違いだ。


 一瞬で十八本の蛇は吹き飛び、部屋全体が震える。だが、高熱の水蒸気は私に届くことはなかった。


 血の海を飲み込み、十八本の蛇を引き寄せ拘束した暗黒点は、瞬く間に水蒸気を吸い込む。やがて限界に達して無へと還った。


 再び部屋に静寂が満ちる。血の海は消え失せ、十八本の蛇は根元から吹き飛んだ。その胴体も水蒸気爆発に巻き込まれ、焼き爛れていた。


 すべての頭がなくなり、丸く巨大な肉塊に変わり果てた九王。もはや思考する脳も、首を増やす力もなかった。


 せめて一撃で止めを刺す。神銃アクケルテとレプリカを並列に繋げ、銃口が二つ並ぶ、ショットガンに変える。


 動く気配がない九王に銃口を向け、銃床を肩に当てる。右手でグリップ、左手にフォアエイドを握り締めて、魔力を込め始める。


 やがて、水と火を付与した二発の魔弾が弾倉に収まる。私は静かにフォアエイドを引いて装填しようとした。


 すると、一切動くことがなかった九王の表面が、波打ち始める。爛れた肌が破れ、下から新たな深緑の鱗が現れる。


 今すぐに撃つべきか逡巡する。その間にも九王は変化を続け、鱗に覆われた頭部から無数の触手が伸びる。


 その数は十や二十ではなかった。百本以上の触手が生え、その先端には蛇の頭があった。一つひとつは細く小さいが、その数は圧倒的だ。


 だが、あまりに小さく、魔弾を放つとはとても思えなかった。遠くから攻撃することができず、山のように動かない九王――。


(……懲りずに格好の的にでも、なるつもりでしょうか? ですが、さきほどの攻撃で水蒸気爆発に加えて、重力弾も見られました。模写されると厄介ですね)


 私は気を引き締め、引き金に指をかける。直後、今まで動くことがなかった九王の胴体が静かに浮かび始めた。


 それは一メートルほど上昇して止まった。私が油断なく様子をうかがうと、何百本の蛇が蠢き、こちらを見据える。


 宙に浮く九王。その真下――大理石に落ちる影に視線を落とす。そこには暗い影の中に浮かぶ三つの赤い光が映っていた。


 嫌な予感がし、すぐにショットガンを撃とうとフォアエイドを握る手に力を込めた。そのとき、九王はぐるりと縦に回転した。


 目に映る九王の姿に息を飲む。眼前に無数の蛇をなびかせ、不敵に笑みを浮かべる三つ目の生首――巨大なゴルゴンが浮いていた。


 ほんの一瞬視線が重なる。それだけで背筋が凍りつく感覚が走った。私は体内に巡る魔力と魔神気を確かめた。刹那、ゴルゴンの口角が吊り上がった。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
血の海の描写は映像が浮かびました。 凄ーい٩(๑❛ᴗ❛๑)۶ 九王、なかなかにしぶといですね。 続きを楽しみに待ちます。
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