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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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265 蒼炎を裂く、兄妹の神剣

 ライデンさんの援護をスカイとフォルテに託し、ミゲイルと一体化すると、すぐにアッくん――蒼炎の四翼に囲まれた彼のもとへ飛んだ。


 黄金の八翼をはためかせ、突き進む途中、胸の内から声が届いた。その声は震えこそしないが、張り詰めた糸のような切実さを帯びていた。


『ここは、私に任せてもらえないでしょうか、サラ』


 どこか懇願めいた彼女の気配に、思わず苦笑する。どれほどアーク――ルキフェルとともに戦いたいのか伝わる。


 神からの命令とはいえ、最愛の兄と剣を交えて誅した。それ以降、何万年もの歳月を苦しみ続けてきた彼女のことを思うと、胸がきゅっと苦しくなった。


 『真の一体化』は順調に進み、意識は溶け合っている。


 ――彼女の願いは、私の願いだ。


 それに、どちらが主導権を握っても意識は残っている。私は心の中で頷き、ミゲイルに主導権を渡した。





 サラから主導権を渡された瞬間、共有していた視界がほんの少しだけ鮮明になり、頬に当たる風をしっかり感じることができた。


 視線を先に向けると、蒼炎の翼に囲まれたルキフェお兄様が瞳に映る。


 速度を上げると、一気に上昇して、放物線を描くようにふわりとお兄様の背後に降り立った。


 背中越しにお兄様の体温を感じて、頬が上気する。


「サラ? いや、この神気はミゲイルか」


 その言葉に、とくりと胸が跳ねた。今でも私の神気を覚え、すぐに気づいてくれた。それだけで幸福感に満たされる。


「はい、今は私が主導権を握っています」


 ちらりと後ろに視線を向けると、お兄様が頷いた。


「そうか、なら一緒に不死鳥の翼を討伐するぞ。背中は任せる。まずは俺からだ」


 それだけを告げ、お兄様は眼前の残り一枚となった蒼炎の翼を目がけて踏み込む。刹那、四翼から一斉に刃のような羽が放たれた。


 それでもお兄様は臆することなく、愛刀ナナシを上段に構えた。


 ――その背中を見つめ、歓喜で全身が震える。お兄様は私を信頼している。蒼炎の翼が放った全ての羽から必ず守ってくれると信じている!


 自然と神剣レーヴァテインを握り締める手に力が入り、赤き刀身から金色の炎が迸る。直後、横薙ぎに振る。


 ボウッ、と神炎が弧を描き、私たちを襲う羽を一瞬で塵へと変えた。かすかに漂う焦げた匂い。振り返ると、お兄様の口元が綻んでいた。


 その笑顔に魅入ってしまう。お兄様は表情を戻し、蒼炎の翼を見据え、上段に構えたナナシを静かに下ろした。


 力も速さもない。ただ翼の根元を通り過ぎただけ。だが、それだけで蒼炎の翼は不死鳥から切り離され、力なく地面に落ちながら霧散した。


 その光景に息を呑む。天界のころの剣技は健在だった。いや、さらに技は昇華され、あのころよりも切れ味は増していた。


 お兄様が斬ったのは、存在そのもの。この世の繋がりを断たれた蒼炎の翼は、存在を維持することができず、瞬く間に消え去った。


 背中に冷たい汗が伝う――と同時に、その剣技に憧憬の眼差しを向ける。ぼーっと見つめていると、お兄様が振り返った。


「助かった、ミゲイル。次はお前の番だ。俺がいない間、どれほど成長したのか見せてくれ」


 笑顔を向けられ、またもや目を奪われる。星空のように煌めく漆黒の瞳と、蒼炎に照らされ青く輝く白銀の髪――すべてが美しかった。


 じっと見つめていると、お兄様がナナシを構えた。直後、頭上に剣閃が走った。振り返ると、私を襲う無数の羽が塵へと変わっていた。


「油断するな、ミゲイル。悪い癖だ」


 そう言って、笑顔のまま私の頭を優しく撫でた。もはや顔をまともに見ることができない。心臓は激しく鼓動して、耳まで真っ赤になる。


 そんな私を心配そうに見つめるお兄様。そのとき、胸の内から声が響く。


『もう、しっかりしてよ、ミゲイル。なんなら、私が変わるわよ』


 サラの声だった。久しぶりにお兄様と一緒に戦えるのに、それだけは勘弁してほしい。切にそう願い、彼女の申し出を丁重に断った。


 お兄様が頭から手を離す。名残惜しいが、今は戦いに集中する。左側の翼はすべてなくなった。残りは右側の三翼。


 私は紅蓮の神剣レーヴァテインを下段に構えると、天に向かって伸びる上翼を睨みつけた。





 ミゲイルから離れて宙に浮くと、十二枚の翼をはためかせながら妹を見守る。


 不思議な感覚だった。俺には人間の妹ラーラがいる。だが、目の前のミゲイルも妹だと感じ、胸の奥から慈愛が溢れる。


 もはや自分がアークなのか、ルキフェルなのか分からない。おそらくその両方なのだろう。人格はすでに完全に統合されている。


 あとは神気と記憶が蘇れば、完全に復活できる。だが、少し気になることがある。その二つの人格に、前世の忍者だった俺が混じっていることだ。


 これも我が主――神の差配なのか。


 思考の海に沈みかけそうになる自分を、首を振って現実に引き戻す。視線を下げると、ミゲイルが神剣レーヴァテインを振り上げた。


 その剣線はすべての翼の根元をなぞった。誰もが三翼すべてを斬り飛ばしたと思った。


 だが、宙を舞うのは上翼のみ。残り二翼は残ったままだった。皆が呆然とする中、再び二翼が刃の羽を飛ばしてきた。


 すぐにミゲイルのもとに向かうと、そのまま抱き上げて飛翔した。直後、背後に大気を裂く風切り音が鳴った。


 振り返ると、不死鳥の背中に大量の羽が突き刺さっていた。


「大丈夫か、ミゲイル? 余計なお世話だったかもしれないが、兄として見過ごせなかった」


 視線を戻し、抱きかかえたままのミゲイルを見つめて声をかけた。なぜか彼女は頬を染め、耳まで真っ赤だった。


 首を傾げる俺の胸に頭を預けて首を振った。


「……はい、助かりました。やはりルキフェお兄様がいないと、私は駄目なようです。肝心なところで気を抜いてしまいました」

「いや、そんなことはないよ。あの一振りは見事だった。斬りたいものだけを斬る剣技――見事だったよ」


 最後の攻撃は、神剣レーヴァテインの能力を最大限に引き出した一撃だった。刀身は神炎へと変わり、狙った対象物のみを斬り伏せた。


 妹であるミゲイルの成長を素直に喜ぶと、彼女は胸に顔を埋め、涙を流した。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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