261 六翼の不死鳥と六人の試練
紺碧の不死鳥を目がけて全力で駆け出すと同時に、俺は水魔法を展開した。
「強襲の暴雨」
その瞬間、標的を絞り込んだ驟雨が不死鳥を襲う。もはやそれは巨大な水柱と化し、激しく六王を打ちつけた。
蒼炎を纏った不死鳥に有効なのか見定めていると、不死鳥は六翼を広げて風を起こした。
雨を巻き込んだ突風が俺たちを襲う――と思われたが、その瞬間、アークが魔法を展開する。
「大地の城壁」
俺たちの前に巨大な土壁が現れ、強烈な雨風を防ぐ。二人とも壁に背を預け、短く言葉を交わす。
「アーク、お前は右から飛び出せ。俺は逆だ。飛び出すと同時に壁は解除しろ。フォルテの射線を作れ!」
「いいえ、俺は上から行きます。右はスカイとガリュウが展開するよう指示してください!」
逡巡するが、すぐにガリュウたちに右から後ろに回り込むよう手で合図を送る。スカイが頷き、ガリュウを右へと誘導する。
アークに視線を戻すと、すでに疑似飛翔魔法を展開して宙に浮いていた。再び俺たちは頷き合うと同時に飛び出した。
かすかに腐臭と芳香が混ざった不快な匂いが鼻を突く。だが、我慢できないほどではない。ちらりと見上げると、アークが天井擦れ擦れを飛んでいた。
次の瞬間、バンッ――と乾いた破裂音が三度響いた。
フォルテが魔弾を放った。三発ともすべて命中して、紺碧の不死鳥の体を穿とうとする。
三つの魔弾には、それぞれ紫電、聖火、金剛石と別々の属性が付与されていた。
紫電は動きを封じようと全身を駆け巡り、聖火は腐臭と邪気を払おうとする。そして、金剛石は螺旋を描き、体を貫こうとした。
しかし、そのどれも効果がなかった。紫電は地面へと流され、聖火は黒翼に打ち消される。残る金剛石の魔弾も蒼炎に焼き尽くされた。
どの属性も通じず、弱点が分からない。レオン陛下たちが討伐できなかったのも頷ける。おそらく属性の異なる六翼が、互いの弱点を補完している。
俺は舌打ちを堪え、突破口を探し始めた。そのとき、背後に回り込むことに成功したガリュウとスカイが、六王に襲いかかった。
一瞬で神聖獣化を果たし、四腕の白獅子に変身したガリュウが銀の鎧を身に包み、剛腕を振り下ろした。隣ではスカイが神槍バハムートを突き出している。
白き打撃と紅蓮の刺突――背後からの攻撃に不死鳥の動きが鈍る。その隙を見逃さず、アークも上空から剣を叩きつけた。
完璧なタイミングだった。ガリュウとスカイは背中の翼の付け根を狙い、アークは鋭い嘴に刃を突き立てた。
刹那、六枚の翼が震え、すべての攻撃が通る。ガリュウの拳は背中に食い込み、スカイの槍は蒼炎の巨体に突き刺さる。最後にアークの剣が嘴の先を砕いた。
しかし、やはり不死鳥。蒼炎が全身を迸り、すべての傷を一瞬で癒した。
気づくと俺たちは紺碧の不死鳥を囲むように陣取り、総力戦の体をなしていた。
◆
俺たちの攻撃が、わずかだが通った。スカイとアークと俺の三人で仕掛けたのは、無属性の攻撃――。
属性を補完し合う翼も、その属性がなければ意味がなかったようだ。だが、三人が与えた傷は小さく、蒼炎によって瞬く間に癒された。
思わず眉をひそめた。強大で巨大な魔物の場合、その弱点となる属性を見つけ、攻撃するのが定石だ。
人間の力では、その強力な肉体に致命傷を与えることはできない。人よりも優れた膂力を持つ獣人でも不可能だ。
策はないかと考える。属性はほぼ無効化され、無属性の攻撃は有効だが、小さな傷しか付けられず、しかもすぐに回復される。
何も思い浮かばない。滲み出る悔しさに歯を食いしばった。思わずライデンを見るが、不死鳥を見据えたままだ。
リーダーは俺だ。だが、ライデンに頼りそうになったことに気づき恥じる。六王から攻撃を仕掛ける気配はないが、それもいつまでか分からない。
焦りと不甲斐なさで、まともに考えることができない。そのとき、城を出るときに親父にかけられた言葉を思い出す。
『ガリュウ、一人で何でもしようと思うな。なぜ試練が一人ではなく六人なのか、よく考えろ』
属性が違う六枚の翼に六人。何か意味があるはずだが、ひとりでは分からない。決めるのは俺だが、考えるのはライデンとアークに任せる。
開き直りかもしれないが、それが最善だ。何でもひとりでできるなら、王に配下はいらない。これは獣王の資格を示す試練だ。
俺は覚悟を決めて、大声で叫ぶ。
「ライデン、アーク! 二人で攻略方法を考えてくれ。スカイ、悪いが俺と一緒に六王の相手だ。フォルテはそのまま遠距離から援護を頼む。サラは待機だ。誰か怪我したら、すぐに治療してくれ!」
俺の指示に全員が頷いた――そのとき、不死鳥の六枚の翼がさらに歪な形に変わっていった。
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