表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

263/314

256 静かなる指揮、白き聖火

 木造の本堂では焚き火はできない。ランタンを囲むように全員が座る。その淡い光だけが、皆の顔をぼんやり照らしていた。


 わずかに緊張がほぐれ、俺は現状を確認する。


「おい、アーク。怪我はないか? あと魔力のほうは大丈夫か?」

「はい、ライデンさん。問題ないです」


 アークはなるべく魔法を使わず、五王の領域を探索し、最後は魔力ではなく神気を使い、相手の攻撃を利用して倒したと説明した。


 思わず俺は眉をひそめる。魔力を制限して挑む遺跡ではない。本来なら油断するな、と注意するべきだが、完璧に攻略されたので何も言えない。


 スカイも対抗して、単独行動に出ないか心配になる。


 とはいえ、アーク以外の全員は万全の状態だ。ここに着くまで戦うことなく、罠に苦労することもなかった。


「ならいい。安心した。なるべく早く休憩を切り上げられそうだな。次はいよいよ六王の領域だ。ガリュウの父――レオン陛下でも討伐できなかった相手だ。なるべく時間をかけ、慎重に進みたい」


 全員を見渡すと、皆が同時に頷く。だいぶ連携がとれるようになった。思わず、口角が上がる。


 ふと、ガリュウを見やる。どうやら緊張しているようだ。両手を強く握りしめ、わずかに歯ぎしりをした。


「ガリュウ、熱くなるのはいい。だが、お前はこのパーティーのリーダーだ。静かに心を燃やすことを覚えろ」


 少し難しい言い方だったが、ガリュウは目を見開き、深く頷いた。どうやら伝わったらしい。


「なら、三十分後に出発だ。今度は俺が斥候をやる。アークは俺の補助に回ってくれ。何か気づいたら、すぐに教えろよ。期待している。あとはいつもと同じだ。ガリュウが殿、スカイは真ん中で遊撃。サラとフォルテは、すべての補佐だ」


 再び全員が頷くと、俺は希釈したポーションをアークに渡し、目を閉じた。


 そして、六王の領域の探索に向け、考え得る危機的状況を頭の中で想定し、対策を講じていった。





 ライデンさんを先頭に六王の領域に入った。そこは暗く、じめじめとした空気が漂う墓所だった。


 広大な通路は大きく切り取られた石に囲まれ、両脇には石櫃が等間隔で奥まで並べられていた。


 かすかに石櫃の中から石を掻く音やうめき声が聞こえる。それは生者を恨む死者が奏でる怨嗟の演奏のようだった。


「サラ、悪いが、この水を浄化して聖水に変えてくれ。どうやら、ここは死者が支配する領域らしい」


 ライデンさんがサラに水筒を渡した。まだ石櫃から死者が出る気配はない。


「わかりました、ライデンさん。ですが、直接、私が魔法で浄化したほうが早くないですか?」


 その言葉にライデンさんは首を横に振った。


「いや、サラには魔力を温存してもらう。六王戦は激しい戦いになる。必ず負傷者が出るはずだ。治癒魔法は俺たちの生命線だ」


 彼女も納得する。小さく頷き、水筒を受け取ると浄化魔法を施した。その様子を黙って見ていたアークがサラに声をかける。


「ごめん、サラ。試してほしいことがあるんだ。これも浄化することはできる?」


 彼が持つ竹筒をじっと見る。たしかあれは、レーヨンの町でアークが準備していたものだ。


 全員が興味深げに見つめる。サラが受け取り、浄化魔法を発動した。直後、竹筒はほのかに光り、すぐに元に戻った。


「たぶん、うまくいったと思うわ、アッくん。でも、その中身は何?」


 皆の視線を集めるアーク。彼は肩をすくめ、私に竹筒を手渡した。


「フォルテ、その中身を魔弾の中に入れて撃ってみて。付与するのは火魔法で頼むよ」


 私は黙って頷き、神銃アクケルテをフォルスターから抜き出し、魔法で魔弾を作ると、竹筒を傾ける。


 とろりとした液体が一滴落ち、魔弾に吸い込まれる。私はアークの狙いを理解して、口元が綻ぶ。


「すいません、ライデンさん。ちょっと実験したいので、下がってください」


 そう言ってアークは初級の風魔法で、目の前に並ぶ石櫃の蓋を吹き飛ばした。その瞬間、包帯に巻かれた死者――マミーたちが起き上がる。


 やがて風は収まり、古びた布と腐臭が一気に通路に広がった。


「悪いけど、フォルテ。あいつらを撃って」


 私は無言で頷き、銃口を向けると、そっと引き金を引いた。


 バンッと火花が散り、一体のマミーに直撃する。刹那、魔弾が炸裂し、白き炎が迸った。


 白炎に包まれ、苦しみ藻掻くマミー。その炎は周囲のマミーも巻き込み、次々と燃え広がった。


 やがてすべてのマミーが白炎に包まれると、一斉に輝き出し、すべてを焼き尽くした。


 一面に広がる白き獄炎。しかし、熱風は起きず、温かな風が舞い、周囲を浄化していった。


 その光景を全員が呆然と見つめる中、隣に並ぶサラが呟いた。


「……うそ。あれは聖火?」

読んでくださり感謝です<(_ _)>

ブクマor★で応援いただけると励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ