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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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249 灯籠の道、刃は消える

夜にあと一本投稿します<(_ _)>

 灯籠が並ぶ石畳。暗闇の中、橙色の炎が幻想的に奥まで続いている。灯りの下、蠢く影を捉えた。


 腰のナナシをそっと抜き、柄のまま構える。刀身は出さない。


 すり足で進み、石と石の継ぎ目の微かな凹みを探る。違和感がないか神経を研ぎ澄まし、わずかな音も立てない。


 ――仲間と別れて四十分が経過した。


 玉座の間までどれくらいかかるか分からないが、できるだけ先に進み、ガリュウたちの安全を確保したい。


 はやる気持ちを抑えて視覚を強化し、灯籠を見つめる。かすかな気配はあるが、輪郭はぼやけ、はっきりとは見えない。


 慎重に前へ出る。刹那、灯りが揺れ、影が飛び出す。すり足で重心を落としていた俺は、瞬時に反応する。


 さらに腰を沈め、ナナシを強く握り締めると、刃が浮かび上がる。


 直後、ガキンッと金属同士の衝突音。鍔迫り合いとなり、目の前の敵の姿に驚愕する。


 そこにいたのは、黒装束に身を包んだコボルトだった。


 鋭い犬歯が口元から覗き、目は血走っている。さっきの静かな気配は微塵もない。獣毛に覆われた手に持つ武器は日本刀。


 以前、フォルテの母――ホノカ様は東洋連合国の忍びだと聞いた。この遺跡の支配者も、少なからずあの国と関係がある。


 そう確信し、必死に俺を押し込もうとするコボルトを見据える。その顔には赤い隈取が浮かぶ。


 コボルトではなかった。力も強く、押し込まれそうになる。身体強化を使えば簡単だが、魔力と神気は温存したい。


 俺は一瞬だけ魔力を乗せて力を込める。すぐに黒装束のコボルト――(にん)()は顔を歪め、押し返そうとした――そのとき。


 ナナシの刀身を消す。突然、抵抗が消え、前のめりになる忍狗を半身で躱し、くるりと回り、背後へと滑り込む。


 一閃。忍狗が振り向くより早く、再び刀身を出現させて振り抜いた。肩から脇へと深く刃が走り、一撃で葬る。


 忍狗はどさりと倒れ、血が広がって石畳の継ぎ目を伝った。素早く膝をつき、忍狗の体を探ると、クナイが三本見つかる。


 その瞬間、鉄と油の匂いが鼻をつき、草鞋が擦れる音が届く。


 すぐに視覚を強化し、奥まで並ぶ灯籠を見やる。なお、かすかに揺れる影がいくつかある。


 続けざまにクナイを投げると、二体の忍狗が倒れた。一番遠くに隠れていた一体は避けたようだ。


 すでに相手の気配はつかんだ。いくら巧みに隠れようが俺には分かる。もはや、すり足で進む意味はない。罠だけに集中する。


 腰を上げ、その場で軽く跳躍すると、一気に走り出した。





 二時間が経過した。結局、アークは戻ってこなかった。安全な場所で俺たちを待っているのだろう。


 再びライデンを先頭に五王の領域に入ると、目の前に広がる光景に愕然とした。


 二時間前は荘厳な雰囲気が漂う木造の遺跡が、今は見る影もない。襖は破れて槍が突き出し、天井は落ち、その先では鉄球が堰き止められていた。


「……すごいな、この光景は。いったい、アークは何をしたと思う、ライデン」


 息を呑み、廊下の奥を見つめていたライデンは、我に返ると肩をすくめた。


「さすがに俺でも、何をしたのかまでは分からんよ、ガリュウ。だが理由は想像がつく。俺たちのために罠を破壊してくれたに違いない」


 その言葉に頷く。お人好しのあいつのことだ。この遺跡がこれまで以上に危険だと直感し、先行を申し出た――


 ――そういうことだろう。


 (ミザリー)も、いい相手を見つけたとしみじみと思っていると、フォルテとサラから鋭い視線を向けられる。


 二人もアークの婚約者だと思い出し、冷や汗が出る。


 聖獣神化の練度が上がり、神獣に近い存在となった俺は、二人の強大な力をはっきりと感じられるようになっていた。


 ――規格外の化け物。


 神界の天使長と魔界の王に対して不敬かもしれないが、素直にそう思う。最上位の悪魔や魔物でも勝てる自信はあるが、あの二人には全くない。


 妹も含め、とんでもない女たちを婚約者にしたな――と少しだけアークに同情すると、彼女たちの視線がより鋭くなった。


 まさに蛇に睨まれた蛙。背中に冷たい汗が細く伝う。


 弁明しようと口を開きかけたとき、声が届く。


「ガリュウ、ちょっといいか。アークが罠を壊してくれたが、まだ残っている可能性がある。二人で先行しよう、早く来てくれ」


 先頭に立つスカイから呼ばれ、二人から逃げるように駆け寄ると、苦笑された。


「これは、貸し(・・)だからな」


 そう言って俺の肩を叩くと、廊下を歩き出した。その背中を見ながら肩をすくめる。


 ――どうやらスカイも、あの二人が苦手なようだ。


 雑然とした廊下を、二人で肩を並べて歩く。


 奥のほうから獣の咆哮がかすかに聞こえる。目を細め、スカイと頷き合い、歩く速度を少し上げた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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