233 宵闇を描く矢
短めです<(_ _)>
三王の玉座の間に踏み入ると、ケンタウロスが金色の髪をなびかせ、こちらを向く。左の前足がないことに気づく。
上半身はゆったりとした衣服を纏い、根元は隠れ、失った足は生まれつきなのか、切断されたのか判断できない。
ただ、丘の上に立つケンタウロスは、三本の足で不自然なほどに微動だにせず、直立していた。
あまりにも悠然と立つ姿を見て、生来からなのでは――と推察する。
加えて、金色の瞳からは知性が滲み、体毛はわずかに輝いている。やはり遺跡を統べる王の一角。威厳に満ち、眼差しからは自信が溢れている。
ただ、今までと違い、高貴な雰囲気が漂い、凶暴にも見えなかった。
不思議な感覚に戸惑う。殺気はあるが、鋭く刺すような感じはしない。思わず声をかける。
「おい、あんたが、ここの王で間違いないか?」
本来、人型の魔物でも人語を理解できない。だが、万が一と思った。それほどまでに目の前のケンタウロス――金色の人馬には理知が備わっているように見えた。
「そうだ、私がこの第三領域を支配する王――サリオだ。よくぞ来た、生贄になる者たちよ。せいぜい、醜く泣き叫び、私を楽しませろ」
はっきりと話す人馬に絶句する。可能性はあると思っていた。だが、ここまでとは――。
もはや人間と会話しているかのようだ。少しだけ討伐する気持ちが揺らぐが、魔物には変わらない。多くの者を殺めてきたはずだ。
アークたちを残して歩き出すと、丘の下――二十メートル下の斜面の基部で止まる。
「悪いが、楽しませることはできない。最初から全力でいかせてもらう!」
そう宣言した瞬間、金色の人馬――サリオは鞍に備え付けていた緑色の弓を取って構える。俺は慌てて後ろに跳んで、距離を開けて見据えた。
こちらを顔を歪めて眺め、背中の筒から異様に大きく長い矢羽根――筆のような矢を抜いて番えた。
――すっと弓を引き、俺に狙いを定める。
腰を落として、サリオの動きに集中すると、ヤツは片目を閉じ、さらに弦を引き絞った。
いつ矢を離すのか、緊張が走る。だが突然、サリオは上体を反らし、弓矢を天に向けて放った。
矢は大気を裂き、猛烈な速度で飛んでいく。その先には、精巧に青空が描かれた天井があった。
はるか上空まで進むかと思われた矢が、ガスッと偽りの空――天井に突き刺さった。何がしたいのか分からず、サリオを注意深く見つめる。
直後、水色の天井が黒に塗り広がり、青空から夜空に変わった。やがて、部屋全体が重く、密度を増した静寂に満たされた。
闇夜に音が吸われ、足音が布に沈む。何が起きたか分からず、思わず見上げると、視界の端にこちらに矢を向けるサリオの姿が飛び込んできた。
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