220 結束の前口上
レーヨンを発って半日ほど、俺たちはアクラドの中央にそびえる十王の遺跡へ到着した。そこにはすでにライデンさんが、複数の部下を従えて待っていた。
「待たせたな、ライデン。……さすがだな、もう準備も整っているようだ」
隣に立つガリュウがすっと前に出て声をかける。遺跡の入口前にはいくつものテントが張られていた。
感心したように何度も頷くガリュウに、ライデンさんは笑顔で応じた。
「お久しぶりです、ガリュウ殿下。スカイ、アークも元気そうだな。……後ろにいるのはフォルテ殿下とサラ様ですか?」
そう言って、俺たちの背後へ視線を向ける。ガリュウはフォルテたちの参加を伝えていなかったらしい。
一昨日、急遽決まったことだ。連絡しようもなかったのだろう。仕方ないと事情を話そうとしたところで、ガリュウが手を上げて制した。
目配せののち、彼は静かに告げる。
「相談もせずにすまない。実はフォルテとサラにもパーティーに加わってもらうことにした。連絡できず悪いと思っている。親父からの忠告を受けて、俺が判断した」
そう言って、ガリュウは深々と頭を下げた。俺が二人を連れてきたのに、それを口にしない――
――その背に、王者としての器の大きさを感じた。
まだ頭を下げるガリュウの隣に並び、俺も頭を下げる。
「すいません、俺の我儘で二人を連れてきてしまいました。最終的に参加を決めたのはガリュウですが、俺にも責任はあります。
せっかくの計画を狂わせるような真似をして、本当にすいませんでした」
気がつけば、フォルテとサラも並び、頭を下げていた。そんな俺たちに、ライデンさんは大きくため息をつく。
「顔を上げてください。俺はガリュウ殿下の依頼で参加しただけです。今回のことはすべて殿下のご判断です。俺が口を出すことじゃないですよ。……まあ、なぜ急に人数を増やすことにしたのかは教えてください」
ガリュウは顔を上げ、感謝を述べる。フォルテたちもそれに続いた。ひとしきり落ち着くと、ガリュウが遺跡に入る前に話しておきたいことがあると告げた。
「分かりました、ガリュウ殿下。ここでは話しにくいでしょう。あちらに会議用のテントがあります。そこで話しましょう」
ライデンさんは遺跡前に張られたテント群の中から、ひときわ大きなものを指し示し、歩き出した。
俺たちも荷物を背負い直し、その背を追った。
◆
俺は会議用のテントに向かう途中、部下に周辺の警戒を任せ、誰も近づかせないよう指示を出した。
あのとき、ガリュウ殿下の表情を見て、ただごとではないと察したからだ。
それに、あれほど少人数で試練に挑むことに拘っていたのに、急な心境の変化も気にかかった。
部下たちが足早に警護へ散っていくのを見送り、俺がテントに入ると、やがてガリュウ殿下たちも姿を現した。
「すまないな、ライデン。気を使わせてしまったようだ。だがありがたい。あまり人に聞かせたい話ではないのでな」
その言葉にアークは何か思ったのか、背嚢からランプを取り出し、机の中央に置いた。注目が集まる中、頭を掻きながら説明する。
「あの、これは王都で誘拐事件を捜査していたときに手に入れた防音の魔道具です。壊れていたんですが、レーヨンに着いてすぐ馴染みの道具屋に直してもらいました」
そう言ってランプに魔力を込めると、オレンジの炎が灯り、外の音が聞こえなくなった。途端に静かになり、皆が驚く中で、アークは続ける。
「こんな感じで、内外の音を遮断するんですよ。ただ、外の音も聞こえないから、敵が襲ってきても気づかないです。まだ完全に直ってないんです」
苦笑いを浮かべるアークに笑みを返す。たしかに使い道は少なそうだが、今回に関しては役に立つ。外は部下が見張っているため敵の心配はない。
外に声が届かないと分かったガリュウ殿下は大きく息を吐くと、普段の調子で口を開いた。
「ふう、助かった、アーク。これで普通に話せる。それでだ、親父が十王の遺跡に挑んだときの話だ。実は――」
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