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転生忍者は忍べない ~今度はひっそりと生きたのですが、王女や聖女が許してくれません~  作者: 黒鍵


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216 普通の証明、連携の火

魔女の烙印を押された聖女は、異世界で魔法少女の夢をみる【改稿版】

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「ぷっ。ははは、悪い、悪い。もう機嫌を直せよ、アーク」


 俺はつい先ほどの話を思い出して、吹き出してしまった。ランニングを終えた俺たちは、タイガ亭の中庭に戻り、手合わせをしている。


 アークが真剣な顔をするたびに、先ほど聞かされた話がよぎってしまう。


 昨夜、アークはフォルテ殿下たちに俺とのただならぬ関係(・・・・・・・)を疑われたらしい。何もないが、女性がそういった関係を好むのは知っている。


 それはあの二人も例外ではなかったみたいだ。それに、その証明が添い寝とは笑える。そこで手を出さないほうが、よほど問題だと気づかない二人に。


 アークに続きを促すと、最後にサタナルとミゲイルから抱きつかれたことを告げられ、つい立ち止まり、腹を抱えて笑ってしまった。


 ――神界にいたころと違い、サタナルたちの積極的な行動を嬉しくもおかしく思ってしまう。


 腹が痛くなるほど笑いながら、ふと気づく。ウリガルの人格と重なってきている自分に。


 熾天使ウリガルの転生体である俺は、目的であるルキフェルとの邂逅を果たした。やがて神界に戻らなければならない。その時間はわずかだ。


 それまでにスカイとして生き、アークとの思い出を胸に刻んでおきたい。


 ここではアーク(ルキフェル)は、神界では見せなかったさまざまな表情を見せてくれる。この貴重な時間を大事にしたい。


 そう思いながらも、殿下たちに挟まれ、身動きがとれず、熾天使と魔王に抱きつかれ、困った顔をするアークを想像してしまう。


 自然と笑いが込み上げ、爆発すると、再び腹を抱えて笑い出してしまった。


 ランニングのときのことを思い返しながら手合わせを続けていると、突然、鋭い一撃が放たれた。


 とっさに槍を大きく払うと、アークは流れに逆らわず、体を反転した。


 次の瞬間、目の前にアークの足刀があった。


 俺は鍛錬用の槍を手放して、両手を上げて負けを認める。すると、ゆっくりと足を下ろしたアークは、地面に落ちた槍を拾い上げ、差し出した。


「スカイ、少し笑い過ぎだよ。いずれ君にも分かるよ。女性の苦労ってやつがさ。そのときは、せいぜい俺も笑わせてもらうよ」


 その言葉にかすかに胸が痛む。俺は人界に残れない。女性とそのような関係になることはない。いずれ別れると分かっていて、無責任なことはできない。


 一瞬、顔を曇らせてうつむく。アークが不思議そうに見つめてきた。気づかれぬよう笑顔を向けると、アークはそれ以上は何も言わなかった。


 槍を受け取ると、アークは昨日、アイルさんと相談して考えた戦い方を試してみようと提案してきた。


「ねえ、スカイ。さっそく昨日言っていたヤツをやってみよう。アイルさんから買った油は持ってきているよね。あと、念のために確認だけど、火と水の属性魔法はそれなりに扱えるんだよね?」

「当たり前だろ。第3師団では、一人ですべてやることが大前提だ。生活するうえでも重要な火と水は、ある程度できるし、小さいころから鍛えていた」


 はっきりと告げると、アークは満足してうなずく。たしかに無属性魔法が発見されてからは、戦闘ではそればかりを使っていた。


 だが、火も水も練習は続けてきた。それなりに使える自信はある。


 そう思いながら、腰の鞄から小さな瓶を取り出し、槍の穂先に垂らした。水とは違い、粘度のある油は、ゆっくりと広がっていった。


 小瓶をしまって槍を構えると、水魔法を唱える。初級ゆえに瞬時に完成させ、油に干渉して、そのすべてを掌握する。


 穂先の油を全体に膜のように行き渡らせ、槍を横薙ぎに振り抜いた。一滴も飛び散ることはなかった。


 それに満足すると、俺は洗濯物や見学する人たちから離れる。後ろから付いてきたアークは距離を開けて静かに構える。


 ――刹那、俺は音速の刺突を放った。


 アークはすぐに受け流そうとするが、穂先についた油で滑り、わずかにずらしただけだ。頭を狙った槍は、肩へと軌道を変え襲いかかった。


 寸前で体をひねり、なんとかかわしたアークは、そのまま倒れると地面を転がり、立ち上がった。素早く槍を引き、アークめがけて思い切り突き出す。


 届く距離ではない。魔力も込めていないので、刺突が放たれることもない。ただ、俺は槍が伸びきる前に、水魔法を解除した。


 その瞬間、穂先の油が飛び散る。瞬時に初級の火魔法を施した。油は引火して一気に燃え広がり、炎の壁となってアークを襲った。


 とっさに横へ跳び、アークは炎から逃れる。だが、その動きを読んでいた俺は、先回りして切っ先をアークの喉元に突きつけた。


 俺がニヤリと笑うと、アークは両手を上げ、敗北を宣言した。

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