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0480勇者と修道院の夜
修道女たちはみな若く、孤児を引き取っていた結果らしいが、
皆、名前があり、適齢がくれば洗礼も受ける、
主に祈りをささげて質素な食事を分け合って食べる、
ただそれだけのことが名無しにはうまくいかないのだ。
「僧侶、はやく寝ろ」
「ゆ、勇者様!?」
修道院の渡り廊下で月を見ていた僧侶は物憂げだ。
「魔法使いは黙って寝た、お前の話相手はいない」
「……そうですね」
「おれは見張りだ、お前が妙な気を起こさないように、魔法使いに頼まれた」
「独り言、になりますが、よろしいでしょうか?」
「手短にな」
「わたしは、読み書きが出来ます、書物の意味も分かります、
けれど写本に必要なのは正確な筆記の一致です、
読める必要は無かったのです、――――――無かったのですけど」
「わたしは読んでしまいました、あらゆる古書物を」




