表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ配信中】すべてを奪われた聖女~二度目の召喚で待っていたのは処刑でした~   作者: 四葉美名


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/31

23話 一度目の思い出


「大丈夫ですか! 顔が真っ青です!」

「……あ、ああ。ほら、今日はみんなに責められるし、いっぱいしゃべったから疲れちゃった〜」


 笑ってごまかそうとしているけど、明らかに様子がおかしい。シャツが汗でびっしょりと濡れていて、咳も止まらない。その様子を見た司教様は師匠の肩に優しく手を置き、ブルーノさんたちに指示を出した。


「ジャレドを客室へ案内してくれ。今日はみんな疲れているだろう。昼食もまだだったから休憩しよう」


 そういえばいきなり師匠が現れて、そのうえ王女たちまで来たから、まだお昼を食べていなかった。そのことに気づくと、とたんにお腹が空いてくる。思わず音が鳴りそうなお腹を押さえると、それを見た殿下がクスッと笑って立ち上がった。


「では、私も王宮に帰ります。カイル、ケリーを貸してくれ。アンジェラたちの件が片付いたら、報告を兼ねてまた教会に戻すから」

「わかりました。ケリー、頼んだぞ」

「はっ!」


 そのまま殿下とケリーさんは足早に部屋を出て行き、師匠も客室へ案内されていった。残った私たちは司教様の計らいで、アメリさんやブルーノさんと一緒に食事を取ることになった。


「うわ〜! 教会のシチューだ! 嬉しい!」

「サクラ様はシチューがお好きなんですか? 他にどんな好物がありますか? 私、知っておきたいです!」


 懐かしい味を満喫していると、アメリさんとブルーノさんが興味津々にこちらを見た。

(最初の召喚のときも、こうやって私の好みを知りたがってたなぁ。記憶がなくてもまた親しくなれるなら嬉しい!)


「えっと、まずはこの野菜たっぷりのシチューでしょう。それからデザートのフルーツプディング。塩味の白パンも好きだよ! あと、アメリさんの大好きな野いちごジュースも!」


 そう言うと、アメリさんは目をキラキラさせて喜んだ。


「私の好みまで覚えてくださっているんですね! 料理人も喜びます!」

「キッチンのミリアさんだよね! 彼女の作るお惣菜パンが大好きだって伝えてほしい!」

「ふふ。わかりました!」


 今日は甘みのある黒パンだけど、もちろんこれも美味しい。毎日焼き立てのパンが食べられるなんて、日本ではできない贅沢だ。


「他にはありませんか? 私たちが以前していたことがあれば教えてください」


 今度はブルーノさんが尋ねてきた。そう言われて、私は彼からもらって大事にしていたある物を思い出した。


「あのね、ブルーノさんが作る花のポプリが欲しいの。ブルーノさんの生まれた地方に咲く花で、枕に入れるとよく眠れるからって、プレゼントしてくれたんだけど……わかるかな?」


 すると、ブルーノさんの優しいブラウンの瞳がパッと輝いた。


「シュリの花ですね! もちろんですとも! すぐにお作りします! うわあ……嬉しいな。サクラ様は本当に私たちと仲良くしてくれていたのですね」


 二人は顔を見合わせ、幸せそうに笑った。私もその姿を見ているだけで、まるで昔に戻ったみたいで嬉しくなる。


(話せるって最高! さすがに今、二人の恋の行方までは聞けないけど、記憶が戻ったら根掘り葉掘り聞いちゃうからね!)


 含み笑いをしながら隣に座るカイルを見ると、また彼の表情が沈んでいるように見えた。


「カイル? さっきからどうしたの? 体調、悪い?」


 服の袖をそっと引いて様子をうかがうと、彼は苦笑しながら首を振った。


「……いや、そんなことはない。ただ今日はあまりにもいろいろあったから、情報を整理するのに疲れたんだ。そうだ、サクラ。食べ終わったなら、二人で散歩しないか?」

「うん! 行きたい!」


(そうだよね。混乱しているのは私だけじゃない。いきなり犯罪者だと思っていた私が聖女で、しかも過去に一緒に過ごしてたなんて知ったら、驚いて当たり前だよ)


「中庭に行こうか。今の時期は、花がきれいだ」

「そうだね。ちょっと外の空気を吸いたいし」


 食堂を出て一階に降りると、私たちは中庭へと歩きだした。教会は召喚されてからずっと過ごしてきた場所だ。私が迷いもせず、すいすい歩いていくので、カイルは「やっぱりサクラは聖女なんだな」と呟いた。


「懐かしいな〜! あれ? あそこ……」


 ふと目に入ったのは、中庭とは反対側に伸びる廊下だった。一度目の召喚でよく通ったある場所を思い出し、胸がドクンと跳ね上がる。


 あそこは、あの先には――。


 心臓がとくとくと早鐘を打ち、私は思わずカイルの手をつかんだ。


「カイル! こっちに来て!」

「え? どうしたんだ、急に?」


(お庭もいいけど、もっと素敵なところがあったの思い出した!)


 私は戸惑う彼をぐいぐい引っ張り、その場所に連れて行く。その自分の行動さえ懐かしくて、胸の奥が熱くなった。


「ここは……?」

「ここは、私が瘴気の浄化を練習してた場所なの。それと……カイルとの思い出の場所!」


 初めてカイルと出会ったあの日。私が聖女だと証明するために浄化を見せた練習場。何も変わっていないこの景色の中で彼と並ぶと、まるで時間が巻き戻ったように感じる。


 私はくるりと振り返り、少し照れたように微笑むカイルに、昔話をすることにした。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ