第二節「最後の激突」
号令と共に、三つの軍が動き出した。
織田軍の鉄砲隊が火を噴き、劉備軍の前線に銃弾が降り注ぐ。
孫権軍は織田軍の側面を突き、劉備軍は正面から押し寄せる。
京の手前で、最後の三つ巴が始まった。
---
劉備本陣では、諸葛亮が冷静に指示を出していた。
「主公、織田の鉄砲隊を何とかしなければ、前線が持ちません」
「分かった。雲長、翼徳、行ってくれ」
「承知しました」
関羽と張飛が馬を駆る。
関羽の青龍偃月刀が織田の鉄砲隊を薙ぎ払い、張飛の蛇矛が敵兵を吹き飛ばしていく。
「うおおおっ!邪魔だ、どけぇ!」
張飛の咆哮が戦場に響く。
---
織田本陣では、信長が冷静に戦況を見ていた。
「半兵衛、劉備の動きは」
「中央から押してきています。関羽と張飛が鉄砲隊を崩しにかかっています」
「ならば、光秀と利家を向かわせろ」
「承知しました」
明智光秀と前田利家が、関羽と張飛の前に立ちはだかった。
「関羽殿、ここは通しません」
光秀が槍を構える。
「明智殿...」
関羽が青龍偃月刀を構え直した。
「ならば、力ずくで通らせてもらう」
二人の武将が激突する。
---
その横では、張飛と利家が戦っていた。
「前田とやら、お前も邪魔か!」
「貴様こそ、織田の邪魔をするな!」
蛇矛と槍が激しくぶつかり合う。二人の怪力が火花を散らした。
---
孫権軍は、織田軍の側面を攻めていた。
「殿、織田軍の右翼が崩れ始めています!」
周瑜が報告する。
「よし、そのまま押し込め」
孫権が号令を出す。
だが、その時、織田本陣から援軍が来た。
竹中半兵衛が采配を振るい、織田軍が見事に陣形を立て直す。
「流石ですな、竹中殿...」
周瑜が呟いた。
「だが、我らも負けてはいられません」
周瑜が自ら前線に出る。その智謀と武勇で、織田軍を押し返していく。
---
劉備軍の左翼では、趙雲と真田幸村が奮戦していた。
「幸村殿、敵の数が多すぎます!」
「ならば俺が先陣を切る!趙雲殿、後を頼む!」
幸村が槍を構え、敵陣に突撃する。その気迫で、敵の包囲を突き崩していく。
「幸村殿、無茶を...!」
「これが俺のやり方だ!」
二人の槍が、次々と敵を倒していく。
だが、その前に立ちはだかったのは、秀吉と家康だった。
「趙雲殿、真田殿...」
秀吉の声には、迷いがあった。
「藤吉郎殿...」
趙雲が秀吉を見た。
「貴方たちは、劉備様を慕っていたはずです」
「ああ、今でも慕っています」
秀吉は刀を構えた。
「だが、我らは織田殿に仕えている。その忠義を、捨てるわけにはいきません」
家康も槍を構えた。
「申し訳ありません」
趙雲は静かに槍を構え直した。
「ならば、戦いましょう」
---
右翼では、武田信玄と上杉謙信が毛利元就、島津義弘と対峙していた。
「毛利殿、島津殿、また会いましたな」
信玄が笑った。
「武田殿、上杉殿、お久しぶりです」
毛利元就も微笑んだ。
「しかし、今日は容赦しませんぞ」
「こちらも同じです」
謙信が刀を抜いた。
四人の武将が、激しい戦いを繰り広げる。
---
戦場の中央では、劉備が馬を進めていた。
「信長殿!」
劉備の声が響く。
織田本陣で、信長がその声を聞いた。
「劉備か...」
信長は馬を駆り、劉備の元に向かった。
二人が、戦場の中央で対峙する。
「信長殿、まだ話し合いで解決できるはずです」
劉備が必死に訴える。
「劉備、貴様は本当に甘いな」
信長は冷たく言った。
「話し合いで何が解決する。力がなければ、何も守れぬ」
「しかし...」
「貴様の理想は美しい。だが、それだけでは天下は治められぬ」
信長は刀を抜いた。
「貴様を倒し、俺が天下を取る。それが、この乱世を終わらせる唯一の道だ」
劉備は悲しそうに信長を見た。
「信長殿...貴方も、民のことを想っているはずです」
「想っている」
信長は即答した。
「だからこそ、力で治める。貴様のような甘い理想では、民は守れぬ」
劉備は剣を抜いた。
「ならば...戦うしかありませんね」
二人が馬を駆る。
剣と剣が激突した。
---
その光景を、孫権が遠くから見ていた。
「劉備殿と信長殿が戦っている...」
「殿、今が好機です」
周瑜が言った。
「両者が消耗したところを、我らが突きます」
孫権は劉備の姿を見つめた。
信長と戦いながらも、劉備は必死に説得を続けている。民を想い、戦いを避けようとしている。
「公瑾、あの方を見ろ」
「殿?」
「劉備殿は、本当に戦いたくないのだ。それでも、民のために剣を取っている」
孫権の脳裏に、これまでの三年間が蘇った。劉備が民のために働く姿。評議で常に民を第一に考える姿。
「俺は...間違っていたのかもしれん」
「殿...」
「力や智謀だけでは、民の心は掴めぬ。信長殿の覇道が天下を取れば、海の民はどうなる。南の民はどうなる」
孫権は立ち上がった。
「劉備殿なら、全ての民を守れる。あの方なら、任せられる」
「殿...!」
「公瑾、俺は決めた」
孫権は馬を駆った。
「全軍、織田を攻めろ!劉備殿を支援する!」
---
その号令を聞いて、周瑜は驚いた。
だが、すぐに理解した。
孫権は、劉備の想いに心を動かされたのだ。
「...殿らしいな」
周瑜は微笑み、号令を出した。
「全軍、織田を攻めろ!」
---
孫権軍が、織田軍に集中攻撃を始めた。
織田本陣で、竹中半兵衛が叫んだ。
「殿、孫権軍が我らを攻めています!」
「何...!?」
信長が驚いた。
「孫権め、劉備についたのか...」
劉備も、その光景を見て驚いた。
「孫権殿...」
その隙を、信長は突かなかった。
「劉備、貴様は...人を動かす力がある」
信長は剣を下ろした。
「孫権すら、貴様の想いに動かされた」
「信長殿...」
「だが、それでも俺は認めぬ」
信長の目が鋭く光った。
「貴様の理想が本当に正しいのか、俺はまだ信じられぬ」
---
その時、関東から一つの軍が現れた。
曹操軍だった。
荀彧が横に並ぶ。
「主公、関東は全て平定しました。もはや、この戦いの行方が、乱世の終わり方を決めます」
「ああ...」
曹操は戦場を見た。劉備、信長、孫権。三者が激突している。
「文若、俺はこの目で見たかった。劉備の理想が、本当に通用するのかを」
「主公...」
「三年間、劉備を見てきた。あの男は、本物だ。だが、それでも俺は信じられなかった」
曹操は馬を進めた。
「今日、決める。劉備の理想を、俺が試す」
「曹操殿...!?」
劉備が驚く。
曹操が馬を進め、戦場の中央に現れた。
「信長、貴様一人では無理だ」
「曹操...貴様、何をしに来た」
「決まっている」
曹操は不敵に笑った。
「劉備を倒すのは、俺だ。貴様には渡さん」
信長と曹操が、劉備を挟んで対峙した。
---
だが、その時、曹操が言った。
「だが、今日は違う」
「何...?」
「信長、貴様は劉備を理解していない」
曹操は劉備を見た。
「この男の想いは、本物だ。それを、俺は三年間見てきた」
「曹操殿...」
劉備が驚く。
「俺は覇道を行く。だが、劉備の理想も、一つの在り方だ」
曹操は信長を見た。
「今日、俺は劉備に協力する」
---
信長は、曹操と劉備を見た。
そして、孫権軍も劉備側についている。
信長は剣を握り締めた。
「劉備...貴様に問う」
「信長殿...」
「貴様は、力なき理想で、民を守れるのか」
劉備は信長の目を見た。
「私には、力があります」
「何...?」
「信長殿、私の力は、人を信じる力です」
劉備は周囲を見渡した。
「雲長、翼徳、子龍。信玄殿、謙信殿、幸村殿。そして、孫権殿、曹操殿。皆が、共に歩んでくれています」
劉備は信長を見た。
「私一人では、何もできません。しかし、皆と共になら、民を守れます。それが、私の力です」
信長は、劉備の目を見つめた。
その目には、嘘がなかった。
「...フッ」
信長は笑った。
「劉備、貴様は...本当に恐ろしい男だ」
信長は刀を鞘に収めた。
「俺の負けだ」
「信長殿...!?」
「貴様の想いが、曹操も孫権も動かした。俺一人では、それに対抗できぬ」
信長は劉備を見た。
「だが、劉備。これは俺の敗北ではない」
「...」
「貴様が本当に天下を治められるか。それを、俺はこれから見届ける」
信長の目には、冷徹な光があった。
「もし貴様が民を守れぬのなら、その時は俺が天下を取る。それまでは...貴様に任せる」
---
その言葉に、戦場が静まり返った。
織田信長が、劉備に天下を譲った。
それは、誰も予想しなかった展開だった──。




