第一節「三年後の世界」
三年が過ぎた。
三者評議は、表面上は順調に機能していた。
劉備が民を守る権威を持ち、織田信長が軍事を、孫権が交易を管理する。それぞれの領地で、民は比較的平穏に暮らしていた。
だが、水面下では、三者の緊張が高まっていた。
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越後、劉備の本拠では、諸葛亮が報告をしていた。
「主公、織田殿の動きが活発化しています」
「何があった、孔明」
「尾張から美濃にかけて、兵を増強しているようです」
諸葛亮は地図を指した。
「恐らく、京を完全に支配するつもりでしょう」
劉備の表情が曇った。
「分かっていた...孔明」
「主公?」
「あの方が、簡単に人と手を結ぶ方でないことはな」
劉備は深く息を吐いた。
「それでも、信じたかったのだ」
関羽が前に出た。
「主公、織田と戦う準備をすべきです」
「いや、まだ早い」
劉備は首を横に振った。
「信長殿と話をする。まだ、戦う必要はない」
張飛が不満そうに言った。
「兄者、信長は最初から俺らを信用してねぇんだ。話し合いなんて無駄だぜ」
「翼徳、それでも私は信じる」
劉備は立ち上がった。
「人は変われる。信長殿も、きっと...」
諸葛亮は、劉備の横顔を見た。
この人は、どこまでも人を信じる。それが強さでもあり、弱さでもある。
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尾張、織田の本拠では、信長が家臣たちを集めていた。
「藤吉郎、元康、半兵衛、光秀、利家」
五人が揃って膝をつく。
「三年間、劉備と孫権に付き合ってやった。だが、もう終わりだ」
信長の声は冷たかった。
「これより、我らは京を完全に支配する」
竹中半兵衛が地図を広げる。
「殿、劉備殿と孫権殿が黙っているとは思えません」
「構わん」
信長は断言した。
「劉備の理想など、所詮は綺麗事だ。力がなければ、何も守れぬ」
秀吉が口を開いた。
「殿、しかし劉備殿は民から支持されています」
「藤吉郎、貴様はまだ劉備に未練があるのか」
信長の目が、秀吉を射抜いた。
「い、いえ...」
「ならば黙っておれ」
信長は立ち上がった。
「全軍、京へ進軍する。劉備も孫権も、俺が倒す」
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瀬戸内、孫権の本拠では、周瑜が報告していた。
「殿、織田が動き出しました」
「やはりか」
孫権は穏やかに頷いた。
「予想通りだな」
「殿、我らはどうしますか」
「劉備殿に使者を送る」
孫権は立ち上がった。
「織田を倒すには、劉備殿と手を組む必要がある」
「では、殿は劉備殿を...」
「信じているわけではない」
孫権は冷徹に言った。
「ただ、今は織田が共通の敵だ。それだけだ」
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数日後、劉備の元に孫権からの使者が訪れた。
「劉備殿、織田が京を狙っています。我らと手を組んでください」
劉備は使者を見た。
「分かりました。孫権殿に伝えてください。共に、織田殿を止めると」
使者が去った後、諸葛亮が言った。
「主公、孫権殿も信用できません」
「分かっている、孔明」
劉備は窓の外を見た。
「だが、今は織田殿を止めることが優先だ」
「では、出陣の準備を」
「ああ」
劉備は剣を握った。
「信長殿...貴方と、再び戦わねばならぬのか」
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京では、民たちが不安に怯えていた。
「織田が攻めてくるらしい」
「劉備様は?」
「劉備様も来るらしい」
「また、戦か...」
民たちの声が、京の街に響いていた。
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その夜、秀吉と家康は二人で話していた。
「元康殿、このままで良いのでしょうか」
「分かりません、藤吉郎殿」
家康は空を見上げた。
「殿は劉備殿を倒そうとしています。しかし、私は...」
「私も同じです」
秀吉は拳を握った。
「劉備殿から学んだことを、忘れられません」
「では、我らは...」
「まだ、決められません」
秀吉は家康を見た。
「だが、いずれ決断する時が来るでしょう」
二人は、静かに頷き合った。
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関東では、曹操が荀彧と話していた。
「文若、織田が動いたな」
「はい、主公」
「我らは、どうする」
荀彧は少し考えた。
「主公、今は静観すべきかと」
「静観?」
「はい。織田と劉備が戦えば、両者とも消耗します。その隙に、我らが動けば...」
曹操は不敵に笑った。
「流石だな、文若」
「しかし、主公」
荀彧は曹操を見た。
「もし劉備殿が敗れたら...」
「その時は、俺が織田を倒す」
曹操は断言した。
「劉備の理想を潰すのは、俺だ。織田には渡さん」
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越後では、劉備軍が出陣の準備をしていた。
関羽、張飛、趙雲、武田信玄、上杉謙信、真田幸村。
全員が、劉備の元に集まっていた。
「主公、準備が整いました」
諸葛亮が報告する。
「分かった」
劉備は仲間たちを見渡した。
「皆、聞いてくれ」
「...」
「私は、信長殿と戦いたくない。できれば、話し合いで解決したい」
劉備の声が震えた。
「だが、信長殿が民を脅かすのなら...私は戦わねばならぬ」
関羽が前に出た。
「主公、我らは貴方と共にあります」
張飛も声を上げた。
「兄者の想いを、俺らが守る!」
趙雲も静かに言った。
「主公、我らを信じてください」
信玄が笑った。
「劉備殿、貴殿は一人ではない」
謙信も刀を撫でた。
「儂らが、貴殿を支える」
幸村も前に出た。
「劉備殿、私も命を懸けて戦います」
劉備の目に、涙が滲んだ。
「皆...ありがとう」
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数日後、京の手前で三つの軍が再び対峙した。
東から織田軍。西から孫権軍。北から劉備軍。
三年前と同じ構図。
だが、今度は違った。
信長の目には、冷徹な覚悟があった。
孫権の目には、冷静な計算があった。
そして、劉備の目には、深い悲しみがあった。
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織田本陣で、信長が号令を出した。
「全軍、前進!劉備も孫権も、ここで終わらせる!」
孫権本陣でも、周瑜が号令を出した。
「全軍、織田を叩け!」
劉備本陣では、諸葛亮が劉備を見た。
「主公、号令を」
劉備は深く息を吸った。
「全軍...前進」
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京の手前で、再び三つ巴の戦いが始まろうとしていた。
三年前の停戦は、脆くも崩れ去った。
今度こそ、決着がつく。
劉備の理想、信長の力、孫権の智謀。
三つの理念が、最後の激突を迎えようとしていた──。




