第五節「新たな秩序」
関ヶ原での停戦から三日後、京で三者の会議が開かれた。
劉備、織田信長、孫権。
そして、それぞれの重臣たちが集まっていた。
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諸葛亮が口を開いた。
「では、評議の詳細を詰めましょう」
竹中半兵衛が地図を広げる。
「京を中心に、三者で領地を分割します」
周瑜が地図を指した。
「劉備殿は北陸から越後。織田殿は東海から畿内。我らは瀬戸内から西国」
「それで異存はないか」
信長が問う。劉備と孫権が頷いた。
「では、軍事についてですが」
諸葛亮が続ける。
「三者の軍は、それぞれが独立して保持します。ただし、民を脅かす行為は禁じます」
「当然だ」
信長が答えた。
「京の統治は?」
孫権が問う。
「三者で交代制にします」
竹中半兵衛が答えた。
「一年ごとに、代表を交代します。初年は劉備殿、二年目は織田殿、三年目は孫権殿」
「民を守る権威は、劉備殿が持つ」
周瑜が付け加えた。
「しかし、実務は三者が協力して行う」
劉備は深く頷いた。
「分かりました。私は、民のために尽くします」
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会議が終わり、それぞれの陣営に戻る途中、諸葛亮が劉備に言った。
「主公、これで良かったのですか」
「何が、孔明」
「主公なら、天下を取ることもできました」
劉備は首を横に振った。
「孔明、天下とは取るものではない。民から託されるものだ」
「...」
「信長殿も、孫権殿も、それぞれの想いがある。その想いを無視して、天下を取ることはできぬ」
劉備は空を見上げた。
「今は、三者で協力する。それが、民のためになる」
諸葛亮は深く頷いた。
「...承知しました、主公」
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織田陣営では、秀吉と家康が信長に問うていた。
「殿、本当にこれで良かったのですか」
秀吉の声には、複雑な感情があった。
「藤吉郎、貴様は何が不満だ」
「いえ、不満ではありません。ただ...殿は天下を取れたはずです」
信長は窓の外を見た。
「劉備という男は、恐ろしいな」
「殿...」
「あの男の理想は悪くない。民が従う。それは事実だ」
信長は二人を見た。
「だが、今は貴様を敵に回すより、利用した方が利がある」
家康が前に出た。
「では、殿は劉備殿を...」
「利用する」
信長は冷徹に言い切った。
「劉備の理想が永く続くとは思わん。いずれ綻びが出る。その時まで、力を蓄える」
信長は刀を撫でた。
「今は協力する。だが、俺の覇道は変わらん。いずれ必要とあらば、劉備も斬る。それだけよ」
秀吉と家康は、背筋が凍るのを感じた。
信長は、何も変わっていなかった。
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孫権陣営では、周瑜が孫権に問うていた。
「殿、劉備殿に民を守る権威を与えることに、異存はありませんか」
「ない」
孫権は即答した。
「劉備殿の在り方は、確かに人を動かす。それは、否定できぬ」
「では、殿は...」
「公瑾、劉備の"徳"は確かに人を動かす」
孫権は周瑜を見た。
「だが、それに飲み込まれてはならん。我らは我らの道を行く」
周瑜は微笑んだ。
「流石ですな、殿」
「劉備殿が民の心を掴む間に、俺たちは実務を固める。そして...」
孫権の目が鋭くなる。
「いずれ綻びが出た時、我らが天下を取る」
「では、我らは...」
「その時まで、力を蓄える」
孫権は立ち上がった。
「劉備殿を信じているわけではない。ただ、今は協力する価値があるだけだ」
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劉備陣営では、関羽、張飛、趙雲が集まっていた。
「兄者、本当にこれで良かったのか」
張飛が問う。
「ああ」
劉備は頷いた。
「信長殿も、孫権殿も、それぞれの想いがある。その想いと、私の想いが結びついた」
関羽が静かに言った。
「主公、我らは貴方と共にあります」
趙雲も頷いた。
「主公の選択を、我らは支えます」
武田信玄と上杉謙信も加わってきた。
「劉備殿、今回の決断、見事でした」
信玄が笑った。
「貴殿は、戦わずして勝った」
謙信も刀を撫でた。
「儂も、貴殿の在り方を認めます」
真田幸村も前に出た。
「劉備殿、私はこれからも、貴方に仕えます」
劉備は仲間たちを見渡した。
「皆、ありがとう。私は...皆と共に、この地を守っていく」
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その夜、劉備は一人、城の外に立っていた。
星空を見上げ、深く息を吸う。
「これで、良かったのだろうか...」
劉備は呟いた。
「主公」
諸葛亮が横に立った。
「孔明...」
「主公、貴方は正しい選択をされました」
「しかし、天下は...」
「天下は、まだ決まっていません」
諸葛亮は星空を見上げた。
「ですが、今日、一つの秩序ができました。それは、主公の想いが成したことです」
「孔明...」
「主公、これからも民を想い続けてください。それが、貴方の道です」
劉備は深く頷いた。
「ああ...私は、この道を進もう」
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数日後、曹操が関東から京に使者を送ってきた。
『三者の評議、承知した。我もまた、民を想う。いずれ、再び相まみえよう』
劉備はその手紙を読み、微笑んだ。
「曹操殿も、変わられたのか...」
諸葛亮が横から言った。
「主公、曹操殿もまた、貴方の想いに触れたのでしょう」
「ならば、嬉しい」
劉備は手紙を畳んだ。
「いずれ、曹操殿とも、共に歩めるかもしれぬ」
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関東では、曹操が荀彧と話していた。
「文若、劉備という男...恐ろしいな」
「主公?」
「あの男の想いは、人を変える」
曹操は窓の外を見た。
「俺も、少しだけ...変わったかもしれぬ」
荀彧の目に、涙が滲んだ。
「主公...」
「文若、貴様が言っていたことが、ようやく分かった」
曹操は荀彧を見た。
「仁を失えば、人は離れる。力だけでは、天下は治められぬ」
「主公...!」
「だが、それでも俺は覇道を行く」
曹操は立ち上がった。
「ただ、その覇道に、少しだけ仁を加える。それが、俺の新たな道だ」
荀彧は深く頭を下げた。
「ありがとうございます、主公」
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京では、新たな秩序が動き始めていた。
劉備、織田、孫権の三者評議。
それぞれが、それぞれの想いを持ちながら、民のために協力する。
完全な平和ではない。だが、一つの形ができた。
そして、曹操もまた、その秩序に加わろうとしていた。
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劉備は、京の街を歩いていた。
民たちが、笑顔で暮らしている。子供たちが、元気に走り回っている。
「これが...私の望んだ世界だ」
劉備は微笑んだ。
まだ、戦は終わっていない。いずれ、再び刃を交えることもあるだろう。
だが、今は、民が笑っている。
それだけで、劉備は満足だった。
「主公」
諸葛亮が横に並んだ。
「これからも、共に歩みましょう」
「ああ、孔明」
劉備は前を見据えた。
「皆と共に、この地を守っていこう」
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日本全土に、新たな時代が訪れようとしていた。
劉備の想いが、この地を変え始めている。
織田の力、孫権の智謀、曹操の覇道。
そして、劉備の心。
四つの理念が、これからどう絡み合っていくのか。
その答えは、まだ誰にも分からない。
だが、確かなことが一つある。
民を想う者たちが、この地を守ろうとしている。
それが、新たな時代の始まりだった──。




