バッドエンドを回避したら別のバッドエンドが待ってることあるよね? 今そんな感じ
金曜はなろうから締め出されて大変でしたね……私はふて寝しました。(唐突な自分語り)
『まさか魔物の言葉が分かる人間がいるなんてね』
「こっちもびっくりした。まさか、すんなり話を聞いてくれるなんて……」
『あなたたちはわたしたちに攻撃してこなかったからね。無駄な戦いを避けられるならそうしたほうがいいって判断しただけ』
私が今話しているのは、他のハーピィたちから長と呼ばれていた個体だ。カレンにハーピィたちと話がしたいと伝えたあと、私はすぐにハーピィたちとコンタクトをとった。
長のハーピィの近くに【声帯模写】で自分の声を飛ばして、こっちに敵意がないこととそっちの言葉が分かるから、話がしたいことを伝えると驚いてた。
最初は長のハーピィも訝しんでたんだけど、実際に声を変えたりして交渉したら、少し悩んだ素振りを見せた後、群れの仲間たちと一緒に私たちの前に降りてきてくれた。
「キミの混合魔法は【声帯模写】と聞いていたんだけど、まさか魔物の言葉が分かる効果もあったなんてね。フフ、キミはほんとにおもしろいね」
……後ろから聞こえてくる言葉は気にしないでおく。なんで私の混合魔法について知ってるのか気になるけど、はぐらかされそうだし。
てゆーか……正直言って気持ち悪い。ずっと笑顔でなに考えてるか分かんないし、声もどこか心がこもってなくてすべてが薄っぺらく聞こえるんだよあいつ。そもそも王都やイースの里の件で好感度はゼロどころかマイナスに天元突破ならぬ底辺突破してる。
「ほんとに大丈夫ですか……」
「こっちもむこうも戦う気はないので大丈夫だと思います。話もできるだけうまくやるんで……もしもの時は私たちと一緒に戦ってくれるだけでありがたいです」
心配そうに声をかけてくれるモンドさん。ほんと、なんでこの人今の革命軍にいるんだろ?
……私は一回深呼吸をして心を落ち着かせる。緊張するけど、魔物と交渉ができるのは私しかいない。
――よし! 気合い入れていこう!
「えっと、まず盗み聞きしてしまったんですけど、あなたたちは怪獣?てやつから逃げるために移動してるんですよね?」
『それであってる。わたしたちが住処にしてた霊峰にあいつらがやって来てね……しかも喧嘩しながら。わたしたちはそれに巻き込まれないためにこっちまで逃げてきたわけよ。多分、他の魔物たちも同じ理由なんじゃない?』
やっぱり……じゃあこの魔物進行はその怪獣のせいで起こったわけか……。なんて傍迷惑な。
とりあえずハーピィたちの目的は無事にどこか違う場所に逃げることでいい。なら……
「でしたら私たちがあなたたちを攻撃しないよう他の騎士たちにも言っておきます。もちろん、あなたたちから攻撃してこなかった場合ですけど」
ストライクボアや他の魔物は知能じゃなくて本能で動いている。だから人間を見かけたら餌認識して襲ってくるけどハーピィたちは違う。ハンターウルフみたいに人間の言葉が分かる知能を持っているからこういった交渉ができる。
『……ほんとにできるの?』
「まぁ、たぶん。これでも私たち有名人ですし。ただあなたたちも説得に協力してください」
こっちにはカレンもいるし、私もなんか知名度あるっぽいしいけると思う。私と長のハーピィが一緒にいて意思疎通できてるのを見たら騎士たちも納得すると思う。
「そのかわりといったらなんですけど、あなた方が持っている情報を教えてもらいたい」
『情報?』
「さっきおっしゃってた怪獣についてです。どんな姿かたちしてたかとか、些細なことでも教えて欲しいです」
今回の魔物進行を凌いだからといって、怪獣とやらが霊峰に居座る限りまた今日みたいなことが起こる可能性がある。最悪の場合……怪獣とやらを倒さないといけなくなるかもしれない。
そう考えるとここでハーピィたちから聞ける情報は貴重なものだ。
『なるほどね。姿かたちでいえば、竜みたいな馬鹿でかい鳥と蛇よ』
馬鹿でかい鳥と蛇の魔物……うん? なんかその組み合わせどっかで見たような……
『えーと、たしか……人間たちは【神獣】?とか呼んでたような……』
「――ファッ!?」
思わず変な声を上げた私に全員の視線が集中する。けど許してほしい。まさか【神獣】とかいうビッグネームが出てくるとは思ってなかったんだから。鳥と蛇……【怪鳥】と【蛇皇】かぁ……その時点で気づくべきだったかも。
『えーと……だいじょうぶかしら?』
「だいじょうぶじゃないんで、タイム!!」
こんな情報、私一人で手に負えない。全員と共有して話し合わないといけない。
「一体どうしたのよ?」
「最上級魔法の威力並みのことを教えられました!」
「どういう意味? マスター」
「今回の一件、【神獣】が関わってるそうです!」
「「「「!!?」」」」
「ハハハ」
【神獣】という名を口にするとほとんどの面子が驚いた顔をする。モンドさんなんて口を開けてぽかんとしている。でもそれも仕方ない。この世界において【神獣】とはそれだけの存在なのだから。
私はハーピィたちから聞いたことを共有する。話を続けていくにつれ他の人たちが頭を抱えだした。だって【神獣】たちが霊峰にいる限り魔物進行が起き続ける可能性があるんだからね。こっちからしたらたまったもんじゃない。
「はぁ……こんなのどうすればいいのよ……」
「”ドリム”から全員逃げるっていう選択が一番現実的かもしれないナー」
その時点で既に現実的じゃない……”ドリム”に今どのくらい人がいるんだか。
「ルーやんならどうにかできない?」
「……分からない。【怪鳥】と【蛇皇】の強さは未知数よ。ルートさんでも簡単にどうにかできると思わないほうがいいわね」
「それに今回に限ってはルート・ホープは王都から動けないと思うナー」
「どういうこと? ”ドリム”からなら王都も近いし、こんな一大事なんだからすぐに来るんじゃないの?」
「近すぎるのが問題なんだよ」
近すぎるのが問題? どういうこと?
「【神獣】たちの移動速度は分からないが、王都から”ドリム”までの距離を考えるとものの数分で着く可能性すらある。そんな状況の中で賢老会の奴らが王都の守りの要であるルートを動かすはずがないんだナー」
そういうことか……こういう時、王様ならすぐにルートさんを動かしてくれそうなのに! 賢老会のやつらめ……!
「王都の老害貴族どもめ……! 王もなにをしてるんだ!」
モンドさんが怒りを滲ませた言葉を吐くのも分かる。……あぁ、多分こういうことが積み重なったからモンドさんは革命軍に入ったのか。
「……【神獣】たちは霊峰から移動しているのかい?」
今まで黙っていたナイラが私に話しかけてくる。それについてはまだ聞いていなかったからハーピィたちに質問すると。
『知らないわよ。あいつらの姿を見た瞬間、急いで逃げ出したんだから。だけどあいつら喧嘩しながら霊峰のむこうからやってきたから、もしかしたらこっちにまで来るかも?』
もしかしたら、魔物進行だけじゃなくて、神獣同士の喧嘩に”ドリム”が巻き込まれる可能性もあるのかこれ…………やばくね?
「ふーん、そっか。それはちょーっとマズイかな」
そんなこと言いながら私たちを笑顔で見てきて……ほんとになんなのこいつ……
「よし! 決めたよ」
なにかを決断したナイラにこの場にいる全員の視線が突き刺さる。なにをする気だという言外の意味が込められた視線を向けられているというのに、当の本人はそんなこと意に介さず、次の言葉を発した。
「王国と革命軍とで……――一時的に手を組もうよ」
――――最大級の爆弾が落とされた瞬間だった……




