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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第三章 神獣編
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別の目的と”石”と”影”

 この場にいる誰もが耳を疑った。不倶戴天、水と油、そんな言葉では言い表せない程の関係である王国と革命軍が手を組む? はっきりいって不可能だと思った。


「ふざけてるの?」

「いたって正気さ」

「狂気の間違いじゃない?」


 今までの革命軍の行動をかんがみてそんな発言ができるなんて面が厚いなんてもんじゃない。絶対に何か裏があるはず。


 真意を探ろうとする公爵家組。だがナイラはそのことに気づいていながら、いつも通りニコニコした笑顔で話し始める。


「……王都からの援軍が期待できない以上、最悪いまドリムにいる者たちで【神獣】たちと戦わないといけない。王国騎士団と聖騎士の戦力、革命軍の戦力……正直言って片方の戦力だけだと勝つことは不可能さ」

「だから手を組みたいと? そんなことをしてそっち側にメリットがあるとは思えないナー」


 たしかにそうじゃん。革命軍側からすれば【神獣】によってドリムと王都が滅茶苦茶になるほうが結果的にいいはず。その混乱に乗じて革命軍側は動くのがベストなはず。


「んー、メリット云々じゃなくて、デメリットがあるんだよね」

「それは?」

「いやー、実はドリムにはボクたち革命軍側の武器や物資を保管している拠点があってね。さすがにそれを破壊されるのは勘弁してほしいからだよ」

「ほう? 王(・)都(・)に(・)一(・)番(・)近(・)い(・)都(・)市(・)である”ドリム”に武器などの保管場所があるなんてナー」

「ハハハ、ドリムは金を集めやすくて物流もいいからね。た(・)ま(・)た(・)ま(・)さ」


 この二人の会話怖えぇ……。これ多分あれだ、同族嫌悪に似た感じだわ。知りたがりな二人だから相手がやりそうなこと、考えてそうなこと分かっちゃうんだと思う。ていうかほんとに拠点あったんだ。噂なんてほとんどガセだと思ってたんだけどなー。


 革命軍であるナイラの主張は分かった。だけどこっちが応じるかは別だ。相手は魔女と戦って封印できるほどの力の魔物……ナイラの言う通り私たち王国側の戦力だけじゃ奇跡でも起きないと勝てないかもしれない。だからといって革命軍と手を組むのはリスクが高すぎる。信用した結果、後ろから刺されましたじゃ一切笑えない。


「……私の一存じゃ決められないわね。どちらにせよハウンドに報告がいく以上、指示を仰ぐわ」

「あぁ、いいとも。だけど【神獣】たちの動きが分からないから迅速な判断をするべきだね。明日、答えを聞きに来るよ」

「あら、革命軍のリーダーともあろうものが、敵しかいない場所に乗り込みにきてくれるなんて随分と優しいわね」

「ハハハ、キミたちがボクたちの拠点の方に来てくれるはずがないって判断だよ。それに護衛はつけてくるつもりさ。”切り込み隊”のみんなを……ね」


 ”切り込み隊”……かつてマコトが所属していた革命軍の最高戦力たちか。あいつとの戦いは今でも思い返せる。ぶっちゃけあのとき勝てたのは戦うのが二度目だったからだ。あいつのデュアルは初見殺しだし、アズさんがいなかったら私とカレンは一度目のときに死んでたと思う。


 そんなマコトと同レベル……いやそれよりもっと強い可能性がある奴が何人も来るのか……。ほぼ威嚇行為では? だけど、こっち側が手を出しにくくなったのは確かか……


「あ、ボクは拠点に帰るけど、モンドくんはどうする? 一緒に行く?」

「分かってて言ってるだろ。行くわけがない」

「ハハハ、面子を保つのも大変だね。”信念派”のトップも」


 去り際にそれだけ言い残しナイラはどこかへ行ってしまった。最後まで胡散臭くてよくわかんない奴だった……ほんとかどうか分かんないけど、こっちにかなりの情報を漏らしてたし。ていうかモンドさん、信念派のトップだったんだ。


「……行ったか。では俺もこれで……ほかに魔物が侵入してきたところがないか見にいきますんで……」

「私たちも手伝うわ」

「いえ大丈夫です。革命軍の俺といてるところを見られたら、あらぬ疑いをかけられますよ。それに……――俺はあなたたちの味方じゃない。幸福を願う国民たちの味方だ」


 私たちの手伝いを断り、足早に都市部の方へとモンドさんは行ってしまった。最後に私たちに向けられた瞳には”どうして王政の味方をするのか”って言ってるように感じた。


 革命軍の二人がいなくなったキャンプ場に取り残された私たち。魔物たちの対処やハーピィ、ナイラとの話し合いで、全員けっこう疲れた……。城壁のむこう側から魔物の声もしなくなったことから魔物進行(モンスターパレード)はいったん終息したのだろう。少し休憩したら今度はハーピィたちのことをなんとかしないと……


「はぁぁ……ねぇどう思う? 手を組むって話」


 地面に足を伸ばしながら座り込んだカレンが私たちに意見を求めてくる。


「【神獣】がどのくらい強いのか分かんないけど、もし戦うことになったとき革命軍が手を貸してくれるのとないのじゃ勝率がだいぶ変わると思う」

「マスターの言うとおりっしょ。それにあいつ、あーしたちに魔力を付けなかったんだよね?」

「それはそうだナー」


 ナイラの混合魔法(デュアル)が他人を洗脳する魔法ということは、すでに情報共有されていた。その条件として相手の体の一部に自身の魔力を付けないといけないことも。

 ナイラと話している間、ずっと私たちの誰かに魔力を付けにきてないか見てたけど。そんな素振りは一切なかった。まぁ、カレンとカリスは魔力感知ができるけど、私はできないからグラスとペルリアに見てもらってたんだけど。ありがと。


(全然だいじょぶよ~)

(あとで膝枕してちょうだいねママ)


「なら、本気で手を組みたいんじゃね? むこうの状況をペラペラ教えてきたし」

「……いや、断定するのはまだ早い。人を洗脳するデュアルなんてものは強力すぎるから、魔力を付ける他にも条件、もしくは自分に対しなにかマイナスになることがあるのかもしれない」


 そういうふうにも考えられるのか……。うーん、わかんなくなったな。


「洗脳できなかったと考えられるわけね……」

「あぁ、そう考えると革命軍と手を組むことは危険としかいえない」

「ナイラの話が全部ウソの可能性もあるしね……」

「いや……それは恐らくないと思うナー」


 確信をもったように言うカリス。


「わたしはあいつがなにか別の目的を隠してると思う」

「別の?」

「あぁ、拠点を破壊されたくないというのを隠れ蓑にしてな。多分、あいつが話したことはすべて事実だが、肝心なことだけは言わずに革命軍の真の目的を隠したんじゃないかナー」


 なにそれウザイ……その場合ウソなんて一つもつかずに私たちを体よく利用しようとしてることになる。考えれば考えるほど、色んな可能性がでてくる……これ考えるだけ無駄な気がする。


 こうなってくるとモンドさんのことも怪しくなってくる。”信念派”とか”強硬派”とかもウソで、実はモンドさんはナイラの部下だったとか。


「ずいぶんとその説に自信があるようね」

「…………癪だが……ほんっとうに癪だが! あいつとわたしは考え方が似ている。もし、わたしがナイラと同じ立場だった場合、そうするからナー……」


 めっちゃ嫌そうな顔してる……! あいつと似てるのそんなに嫌なんだ……


「で、聞いてみてどう思った?」

「……やっぱり革命軍と組むのはリスクが高いわね。でも【神獣】たちの強さがルート以上かもしれないことを考えると、王国側の戦力じゃ”ドリム”どころか王都にまでかなりの被害が出ることは確定ね。そう考えると革命軍と手を組むのは仕方ないのかもしれない」


 結局、そういう感じか……。なにしろ情報が足りなさすぎる。革命軍にしろ神獣にしろ。神獣なんてイースの里の資料にも全然情報がなかったし。最後に人前に姿を現わしたのなんて二百年まえの魔女事変のときだったは…………――魔(・)女(・)事(・)変(・)?


「それだああああああああああああぁ!!!!」

「「「!!?」」」


 天啓が降りてきた。どうやら神は私たちを見捨ててはいなかったらしい。神獣……【怪鳥】と【蛇皇】について実際に会って戦ったことがある人……いや【魔女】たちがいるじゃん!


「なに、どうしたのよ? なにか分かったのかしら?」

「革命軍のことについてじゃないけど、怪鳥と蛇皇がどんな魔法を使うとかなら魔女たちが知ってるかもしれない!」

「あー! そうじゃん!」

「それはありがたいな。どんな魔法を使うか分かるだけでも対策が立てやすい」


 全員、私の意見に賛成のようだ。さっそく魔女たちに聞いてみようと思う。


(あの神獣二柱のことかい? そうだね……わかりやすいように言えば、あのイースの里で戦った魔物より少し強いくらいかな。大きさもそれくらい。あれより硬くはないけど、魔物固有の魔法を持ってるね)

(どういうのだった?)

(え~とね~、たしか鳥のほうが~石っていうか~、鉱石? 宝石? を生み出して操る魔法だったわね~)

(蛇の方は影を操る魔法だったわね。影を固定して動きを封じてきたりしてきて、厄介だったのを覚えているわ)

(ほーん、そうなのか?)

(私たちは神獣たちに会っただけで戦ったことないんですよね……お力になれず申し訳ありませんマオさま)


 へー、サラとトルネは戦ってはいないんだ。たしかに資料にも封印したとは書かれてたけど、戦ったとは一言も書いてなかったもんね。


 にしても、”石”と”影”か……いろんなことができそうで、どんなことをしてくるか予想できないかも。ここらへんは魔女たちからもっと詳しく聞いとくほうがいいかも。


(だけど一番脅威になるのは千年以上生き続けたことで蓄えられた”知性”と”経験”……並大抵の戦略じゃあの二柱は倒せないよ)


 えー……つまりあれでしょ、あの寄生された深棲獣より頭のいい二体と戦わないといけないってことでしょ。……無理じゃない? ルートさんが来ないと話にならないレベルかもしんない……


(だから私としては戦うより対話を試みる方がいいと思うわね。あの二柱は人間の言葉を話せたし……あの下賤な賊たちと組むよりよっぽどマシだと思うわママ)

(話通じるの?)

(((((…………多分通じる)))))

(いまの間なに?)


 ほんとに対話できるんだよね? ま、まぁ、会話が可能なことが分かっただけいいか。とりあえず聞いたことをカレン達に伝えよう。


「ん、聞いてみたよ」

「けっこう時間かかったねー。収穫あった?」

「たんまりとある」

「いますぐ聞きたいところだけど……先にハーピィたちの処理をしたほうがいいわね」


 それもそっか、ずっと待たせてるしね。話す内容ちゃんとまとめとこ……






おまけ


魔女たちの会話の一部

(というかなんであの神獣どもは喧嘩してんだ? しかも人間の街に被害がでそうなほどに。人間どもがやらかしたわけじゃないよな?)

(知らないわよ)

(”管理者”としては真反対な行為ですね……)

(どうせ鳥が蛇に突っかかっていったんだろう)

(普通にめいわく~)

 

いまだから言えますけど、マコトは初見殺しすぎて『これ初戦じゃ勝てねぇな……』って思いました。そのせいで話の展開にだいぶ悩みました。


管理者っていったいなに?と思っている人がいると思いますが、今はまだ語るべきときじゃない……


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