ダイナミックエントリー
着せ替え人形にされた翌日、私たちは【白日エリア】の方へとやって来ていた。今日はキャンプ場でバーベキューをする予定だ。
都市って言われてるから自然が少ないと思うかもしれないけど、別にそんなことはない。むしろちゃんと手入れされた森林などの自然が観光名所の一つになっているらしい。このキャンプ場にも私たちの他にバーベキューなんかを楽しんでいる人たちが結構いてる。
そんな空気のおいしい自然に囲まれた私たちはバーベキューの準備をしている。私とローコが調理班でカレンとカリスが買い出しなんかの担当だ。まぁ、この班分けは自然と決まった。カリスは料理をあまりやってこなかったらしいし、カレンはキッチンに入れてはいけない。料理は火力じゃないんだよ。
「マスタ~、野菜切り終わったから、カリやんたちの方持っていっとくねー」
「うん、こっちも肉の準備が終わりそうだから、先に焼いといていいよ」
「りょ!」
できるだけ早く持っていってあげて。あっちでカレンを抑えてるカリスのためにも。多分、カレンが火を起こすために炎の攻撃魔法を使おうとしたのかなぁ……カレンならやりかねない。私も早く終わらせて手伝いにいこ。
多少のトラブルがあったけど、始まったバーベキューは驚くほど美味しかった。カレンがいい肉買ってきてたっぽい。値段は怖くて聞いてないけど。
「ふーむ、なぜわざわざ日が照り付けるなか食事をするのかと思っていたが、これはなかなかいいものだナー」
「あ、カリやんそれあーしが育ててた肉!」
「私のあげるから……」
「まだまだいっぱいあるから焼いてくわよ」
バーベキューなんて久々だなー。前の世界だと一回しかやったことないんだよね。小学校の時の合宿でのことだったんだけど、私友達いなかったから一人で黙々と食べるだけだったし……この話はやめよう。悲しくなってきた……。あ、マシュマロもあるじゃん。
みんなでワイワイ話しながらバーベキューを楽しんでいると、時間はあっという間に過ぎた。手分けして片付けをしているとカレンが話しかけてきた。
「楽しかった?」
「歴代最高クラスに」
「それはよかったわ」
バーベキューの感想や他愛もない話をしながら、一緒に片づけを進めていく。ふと、顔を横にずらすと少し汗ばんだカレンの横顔があり、少しドキッとした。
「どうしたの?」
「っ!? いや、なんでもない!」
はぁ……カレンって私のこと好き……なんだよね? あんなにアプローチされたら恋愛経験のない私でも流石に気づく。でも、付き合ってほしいとは言ってはこないんだよね……。
でも、今告白されても私はなんて返したらいいのか分からない。私自身、カレンに対しどう思ってるか分かってないんだから。
カレンのことは行く当てのない私を助けてくれたのもそうだし、これまで一緒に過ごしたこともあって明確に好きって言える。でも、それが友愛なのか恋愛なのか分かっていない。
(だめだ考えがまとまらない……一回カレンに直接聞いてみる? いやでも本人に聞くってのもなんだか……それとなく聞いてみるくらいならいいかな)
「ねぇ、カレンって私のことどんな風に思って……」
ウーーーーーッ!! ウーーーーーッ!!
「「!?」」
私が話しかけた瞬間、聞き覚えのある警報がキャンプ場内に響き渡る。これって王都が襲撃された時と同じ……
そんな私の嫌な予感が当たったのか、ドリム全域にアナウンスの声が聞こえ始める。
【ドリム近郊にて”魔物進行”が確認されました!現在魔物たちはドリムへと向かい進行中!ドリム内に滞在するすべての人はすぐに頑丈な建物へと避難を!】
「”魔物進行”って……あの魔物の大侵攻!?」
「そうよ。休暇中だっていうのに……!」
”魔物進行”……大量の魔物の軍勢が街や村を襲う現象。しかもそれが私たちがいるドリムへと向かって来ている。キャンプ場にいた人たちもパニックになってみんな出口の方へと向かっている。
「マスター!」
「魔物進行……初めて見るな。非常に興味のある現象だけど今はそれどころじゃないんだナー」
少し離れた場所で片づけをしていたローコとカリスとも合流する。にしてもこれからどうすればいいの?ドリムにも王国騎士団が滞在しているから、騎士たちが魔物たちの対応をしてくれるはず。多分、いまごろ魔物進行が起きた場所へと向かってると思う。
問題は私たちだ。今回はただの休暇でこのドリムに来ただけだ。一応、王都でも警備の仕事をしているサンライト公爵家といえど、勝手に戦場に乱入したら場を混乱させてしまうかもしれない。
「どうするのカレン?」
「このまま見捨てるわけにはいかないでしょ。それに魔物進行が起きた原因が”魔女の残り火”による可能性もある以上いかない理由はないわ」
「了解!」
まぁ、そう言うと思ってたけどね。私たちは魔物進行が起きた場所へと向かう準備をする。私も魔導銃に弾を装填したり、動作に問題がないか確認する。
全員の準備が終わり、いざ行こうとしたその時……
…………ドンッ! …………ドンッ!
「? なんの音?」
「この音……あそこの城壁から?」
このキャンプ場はドリムを囲う城壁の近くにあり、壁を越えればすぐにドリムの敷地外になる。そんな城壁から一定のリズムで何かがぶつかるような音が聞こえる。それもかなり大きい音で。
私たちがその音に困惑しているとソレが城壁を突き破り姿を現わした。
『ブモォォォォォォォォォォォォォッ!!』
ダイナミックに私たちの前にエントリーしてきたのは黒い体毛を纏った豚か猪か分からない魔物だった。いや待って、確か豚と猪の違いって家畜か野生かの違いだったような……
「でも私の倍くらいの大きさの豚か猪がいるなんて知らなぁぁぁぁいっ!!」
「危ないっ!」
そんな馬鹿なことを考えていたら私たち目掛けて突進してきた。直線的な動きといえど、走るスピードは段々と加速していき、もはや小さいトラックと言ってさしつかえなかった。
私たちは横へと飛んだり、転がることで突進を回避する。魔物は当たらなかったのを認識するや否や急ブレーキをして止まる。その隙に私たちも急いで体勢を立て直し魔物とにらみ合う。
「ちょっ!なにコイツ!」
「あの突進……恐らく”ストライクボア”だと思われるナー。素早い突進と有り余る体力とタフネスが特徴の魔物だナー」
「強さでいえば、キメラベアと同等クラスの力を持っている魔物ね」
「うそんっ!」
あの熊と同じくらいの力あんのコイツ! 実際に闘わなかったとはいえ、いまだに結構トラウマなんだけどあいつ! あの時はあいつに見つかるか否かで生死が決まってたし。
「けどなんで城壁から……結界が張って、――まさか!」
カレンがストライクボアが現れた壁の方を見ると、突き破られた城壁の穴から多数の魔物が侵入してきていた。
「もうここまで魔物進行が進行してきていたなんて!?」
あんな数の魔物がいたらそりゃ結界も破られるよね……。――正直、状況はかなりよくない。あけられた穴から魔物が次々とやって来るし、目の前のストライクボアは私が鳴き声しか聞き取れない以上、意思疎通は不可能。そして完全にこっちに狙いを定めてる。
「毎度毎度こんなんばっか……!」
愚痴がこぼれるのも仕方ない状況だけどやるしかない。たった四人と思って舐めてたら痛い目みるよ。こっちは私を除いて強い人ばかりだからね!
今の小学校って合宿とかあるんですかね?私の時はあったんですが。
次回から出来しだい更新していきます。がんばります。




