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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第二章 イースの里編
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特定条件下における効果的な拷問の仕方

 結界が破壊されたアナウンスを聞いて私たちは【祭壇】の入り口まで急いで向かった。代り映えのない通路を走り抜け、とうとう外へと出ると、そこに広がっていた景色はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図といっていいものだった。武装した男たちがアゼ人たちを襲い、悲鳴が絶え間なく聞こえる。地面の土には誰のかも分からない赤い血の跡が水溜まりを作っている。そして、この騒動は【祭壇】の前だけではないようで、里の中心からは火事になった時に出るような黒煙がいたるところから立ち上っていた。


「これは……」


 中でもこの光景にショックを受けていたのはカリスだった。普段なら生き生きしているカリスも口を開けて呆然としていた。


『ようやく出てきたか』

「リファ!いったい何があったの!」

『どうやら里の結界が破壊されたときに賊が侵入したようだ』


 賊を魔法で吹き飛ばしながら、私たちが出てくるのを待っていたリファに状況を説明してもらった。結界が破壊された瞬間の襲撃……どうやら計画的な犯行らしい。このあと私たちがどう動くべきか……カレン達の方も気になるけどここは……


「……とりあえずこの場を何とかするのが先か」


 私たちの存在に気づいたのか何人かの賊たちが私たちの目の前に立ちふさがる。なるべく早めに終わらせないと……!




~~~~~




 まぁ、さすがにこの程度の奴らには負けないわ。私たちの近くには縄で縛られた賊の山ができている。それなりに人数はいたけど、私らのほとんどが女だと知ると下衆な笑みを浮かべて油断してたからね。連携とかせずに思い思いに攻撃してきたから割と余裕だった。……まぁ、ほとんど私以外の人たちが倒したんだけど。


「これからどうするんですか?」

「……とりあえず情報を吐かせようかな」


 私は唯一意識が残っている賊の方へと目を向ける。じつは一番何か知ってそうな男の一人を意識を落とさずに捕縛していた。


「てめぇらぜってぇに許さねぇ!この縄を引きちぎったら男は殺して女はぜってぇ犯してやる!」

「そんなことはどうでもいい、知っていることをすべて話すんだナー」


 怖い顔をしながら捕縛されている男の胸倉を掴むカリス。めっちゃキレてる……


「ハッ!言うわけねぇだろバーカ!」

「……爪を一枚ずつ剝がされたいようだな……!」

「やれるもんならやってみろよ!」


 あの男けっこう度胸あるなー。カリスの脅しが全く効いてない。まぁ、私たちを困らせたいっていう意地が大半かな。


「なら足の爪から……」

「待ってカリス」

「なんだナー?」

「そんなんじゃ情報を吐かないでしょ。時間もないし」

「ならどうするんだナー?」


 私はカリスを後ろに下がらせる。正直、来ると分かってる痛みって結構耐えられると思うんだよね。むしろ男が余計に意固地になって情報を吐かない可能性もある。なら……


「ローコ、拷問に必要なものってなんだと思う?」

「え?さっきカリやんがやろうとしたみたいに痛みとか水責めとか、そーいうやつじゃない?」

「そう、ようは相手の心を折る。相手を”絶望”させること」


 人によっての絶望って様々なことがあるけど一部の者たちにとっては共通する”絶望”はある。具体的には世界中の半分の人にとって……


 私はニコニコ笑顔で男の前に立つ。男は何をする気だと言ってるけど、私は無視する。私を見ている四人も私が何をしようとしているのか分からず、じっとコッチを見てくる。


「つまり……こういうこと!」


 私は男の股間めがけて足を思いっきり振り抜いた。


「~~~~っ!?~~~~っ!!」


 言葉にならないをあげた男は地面に芋虫のようにうずくまる。まぁ使える相手は限られるけど手っ取り早く相手の心を折るのにはちょうどいい。その光景を見たローコたちの反応は様々だった。

ローコは大爆笑。

ツァールはドン引き。

ナトちゃんは頭に『?』マークを浮かべている。

カリスは血が上っていた頭を急速に冷やされ、キレていた相手である男の方に少しの同情の目を向ける。


「てっ……めぇっ!…………よぐも!…………」

「少しは話す気になった?」

「んなわけ……ねぇだろ……」

「ふーん、じゃあ次からは本気でやるわ」

「え……」


 私の言葉をうまく呑み込めていない男を横目に私はナトちゃんを呼ぶ。そしてナトちゃんに片足を悪鬼のものにするよう頼んだ。


「おい……まさか……」

「ナトちゃんその足でさっき私が蹴った場所を思いっきり蹴って」

「分かりました!」

「待て……待て待て待て待て!」


 一気に顔を青ざめさせた男が喚きちらかす。ナトちゃんの悪鬼状態の足は細いけど、それでも人の骨なんて簡単に砕ける程の力を持っている。男も賊たちを相手に大立ち回りをしていたナトちゃんを見ていたのか、冷や汗を滝のように流している。


「待て!話す!だからやめろ!」

「いやー、そう言って嘘言うかもしれないし、一発ぐらい喰らっておくのも……」

「本当だ!嘘は言わない!だから……」

「じゃあ話して」


 男は額を地面にこすり合わせながら話始める。自分たちが【ヒュドラ】という盗賊団だということ。その【ヒュドラ】が革命軍に入り、今回の襲撃を起こしたこと。目的は高値で売れるアゼ人の角を奪い取ることなど聞いたことに関してすべて話した。


「俺が知ってるのはこれだけだ……」

「余はあまり知らんが角が目的だったのか」

「……そんなことのためにわたしたちを……!」

「まぁ、とりあえず目的が分かっただけでも収穫なんじゃない?それじゃあナトちゃん」

「はい!」


 ナトちゃんが男の前に立ち、蹴る練習をする。その光景を見て男は再び喚き始めた。


「待て!話せば助けてくれるって……!」

「そんなこと私一言も言ってないけど?それに人を数人殺しておいてそれは虫がよすぎない?」

「ふざけんな!このクソアマ……」


 男が私に何かを言おうとする前にナトちゃんの足が男の股間を蹴り上げた。男はまた悲鳴を上げるが、今度は白目をむき、口から泡を吹いて気絶した。まぁ、これからは女の子として生きるといい……


「これからどうするんだ?」

「そうだなー……」

『戻ってきたぞ』

「あ、リファ。おかえり。どうだった?」

『北と南の門に賊が密集している。あと【トナコ】の方にもな。衛兵どもが何とか食い止めている感じだな。他の奴らはそれぞれ手分けしてこの騒動の収束に当たっている』


 空から情報を集めてもらっていたリファからの報告を聞く。だいたい男が吐いた情報と同じだわ。まぁ、あの状況で嘘はつかないか。カレン達も動いてるし、私たちがすることは……


「私たちも別れてそれぞれの場所に応援に行こっか」


 それぞれ向かう先を決めようとしたとき、ツァールが待ったをかける。


「待て、こういう時のための魔導人形ではないのか?」

「その手があったか!」

「あぁ、だが全員を起こすのには時間が少しかかる。なにせ594機いるのだからな」

「じゃあ、ローコはツァールと一緒に魔導人形を全員起こしてきて」


 眠ってる場所知ってるのはツァールだけだしね。それに今は人手が必要すぎる。


「りょ」


 ツァールとローコが【祭壇】の中へと入っていくのを見送ると私たちも動き出す。これ以上被害を出さないために……






なんてむごいことを……!これが主人公のやることか!

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