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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第二章 イースの里編
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日記

前書きって書くことなくないですか?

 『アルクトゥールス』だったものが地面へと音をたてて散らばる。ローコの渾身の魔力弾の攻撃を”鉄壁”の状態で受けてしまえば流石の『アルクトゥールス』でも耐えることができなかった。


(まさか『アルクトゥールス』を破壊されるとは!)


 ツァールは心の中で驚嘆の声を漏らしていた。ツァール自身も『アルクトゥールス』を破壊されるとは考えてもいなかった。だが、目の前の地面に散らばる『アルクトゥールス』だったものを見て現実を再認識する。


 『アルクトゥールス』を破壊されたツァールの感情は自らの一部を破壊されたことによる怒りではなかった。ツァールが抱いた感情、それは……


(……ふふふ、よかろう認めてやる。このマスターこそ【祭壇】を解放する者にふさわしいと!)


 ”喜び”であった。995年待った、待ち人がついに来たという歓喜がツァールの心を埋め尽くす。


 『アルクトゥールス』を破壊されたツァールは二人に見えるような位置にまで距離を取る。そして二人へと話しかける。


「あーはっはっはっ!……よくやったぞ二人とも!よかろう!この試練の見届け人としてこのツァールが試練のクリアを……」

「やっちゃってローコ!」

「はい!」

「え、ちょ……まっ!」


 腰に手を当てながら高らかに試練のクリアを宣言しようとしたツァールに待っていたのは、通常弾による鉛玉の雨だった……






 ハッハー!作戦成功!これが試練に何回も挑んだことでできる一手!私が魔法しか使えないことが頭に刷り込まれてることを利用した作戦!絶対に引っかかると確信してた。だって私がツァールの立場だったら絶対に引っかかるし。

 でもこれであの厄介な盾はなくなった。あとは二人でゴリ押しすれば……!ツァールが何か言いかけてたけど気にしない。こんなチャンスはもう二度と来ないと思うからね!


「ローコ魔導銃プリーズ!」

「はい!受け取ってください!」


 空から落ちてくる魔導銃をキャッチしてローコと一緒に弾と魔法を撃ちまくる。それをなんか慌てた様子のツァールが走りながら躱していく。


「待たんかきさまらあぁぁぁぁぁぁあーー!!」

「くっ……すばしっこい……ゴキブリですか?」

「触覚みたいなツインテだしそうかも?」

「ちがうわぁ!好き勝手いいおって!試練は終わりよ!お・わ・り!!」


 逃げ回っていたツァールから叫ぶ声が聞こえる。その発言を聞いた瞬間、思わず私もローコも銃を撃つ手を止めてしまった。終わり?なんで?まだツァールは倒してないじゃん?


「どういうことですか?降参……ということでいいのでしょうか?」

「何を勘違いしてるんだ貴様らは……余はこの試練をクリアする条件を”余を認めさせよ”と言った。別に”余を倒せ”とは一言も言ってない!」


 え……あー……そうだっけ?なにぶんツァールの攻略のために頭使いっぱなしだったから、そこらへんあんま覚えてないんだけど……。ローコも覚えてないようで首をかしげている。


「貴様ら……」

「そんなこと言っちゃって、ほんとは負けそうだから認めるってことにしてうやむやにしたいんじゃないの?」

「まぁ、明らかこっちが圧倒的に有利な状況ですからね」


 今のツァールは翼も盾もなくなった状態。あるのは右腕のライフルだけだ。あのライフルがいかに強力でも、こっちは二人いるからお互いをカバーしあって手数の多さで戦えばこっちが勝つのは時間の問題だしね~。


 すると私たちの発言を聞いていたツァールが本来魔導人形(マジックガール)には現れない、青筋をうかべる。そして、足で地面をコンコンとノックするとそこがまるで床下収納の扉のように開くと中から新品のあの盾が出てくる。


「『アルクトゥールス』の予備ならまだまだあるし、なんなら背中の翼もあるぞ?今から試練の続きをしても……」

「何してるんですかツァールさん、試練はクリアしたんですよね?だったらいち早く【祭壇】を解放させましょう!」

「えぇ、それがいいです!行きましょうツァールさん!」

「貴様ら……ホントに……!」


 あっぶねーー!あのまま続けてたら負けてた!ていうか予備あるの!?


 青筋を浮かべていたツァールが大きなため息をつく。それで頭を冷静にさせたのか私たちの方へ落ち着いた声色で話しかけてきた。


「なにはともあれ試練はクリア。これからこの審判の間の奥……他の魔導人形(マジックガール)たちが眠っている場所まで案内する」


 そう言ってツァールが指をパチンッと鳴らすとさっきまで普通の壁だったところに扉が出現する。いや、どういう原理?


「あ、そうだ、審判の間の入り口にいる二人も連れてきてもいいぞ」

「え?あれって魔導人形とその契約者しか入れないんじゃ……」

「試練はもう終わったからな。それにその条件は余の匙加減でいつでも変えることができるし」


 あ、はいそうですか。じゃあナトちゃんとカリスも連れてきて一緒に行こっか。




~~~~~


 二人を呼んできた私たちはツァールが出現させた扉の前にまでいる。試練を突破したことを伝えるとカリスはめちゃくちゃ喜んでた。私たちが引くくらいに。カリスとナトちゃんが審判の間に入ろうと扉を開けようとするとすんなりと開いた。ツァールの言ってたことは合ってたけど、やっぱりどういう仕組みか分からない。魔導人形のことといい、この【祭壇】を作ったアゼ人の技術には驚かされる。もしかしたらこの扉を開けた先にその謎技術について分かるかもしれない。


「楽しみですね!」

「そうだね」

「では行くぞ!【祭壇】の本当の姿へと!」


 ツァールが扉を開くとそこは部屋になっていた。壁はいつもと同じように石材なのだが、奥の一面だけはガラス張りになっていた。そして一番目を惹くのは部屋の中心の台座に置かれている一冊の本。というかそれ以外この部屋には何もなかった。


「なんだこの部屋は……さっぱりしてるナー」

「なんかもっとこう……豪華な?部屋だと思ってたんだけど……」


 ちょっと困惑した感じで部屋を見渡す。ていうか眠ってる魔導人形たちはどこに居んの?


「みなさん!あれを見てください!すごいです!」


 そんなことを考えていたら、急に興奮したようなナトちゃんの声が聞こえる。何事かと思ってナトちゃんの方を見ると、ナトちゃんは一面ガラス張りの壁に向かって指をさしていた。


「これは……」


 私たちがガラスの向こう側は巨大な空間……一階と地下を合わせたぐらいの大きさだった。私たちがその空間の地面らへんを見つめるとそこには、私たちがローコと最初に出会ったように眠っている大量の魔導人形たちが軍隊のように規則正しく並んでいた。


「姉妹たち……!」


 その光景にローコは顔を綻ばせる。ようやく姉妹たちとご対面てことだしね。


「そこには[MG-26()]を除いた[MG-20]から[MG-614]の594機が眠っておる」

「あれ?えむじーいち?とかはいないんですか?」


 ナトちゃんが不思議そうにツァールに尋ねると『それはこの本を読めば分かる』と中心にある本を指さす。


「えーと、これは……」

「日記ですね」


 台座に置かれていた本はどうやら日記だった。著者がライアーって書かれてるから、どうやらこの【祭壇】を作ったアゼ人が書いたものらしい。


「五人で読むのもなんだし、誰か音読する?」

「ナトは読み物はあまり得意ではありません!」


 まぁ、ナトちゃんは村で暮らしてたから文字とかあまり使わなかったもんね。王都に来てからはリリーさんに文字を教えてもらってるけど。


「じゃあわたしが……」

「カリスさんは途中で読みふけりそうなんですが」

「そうだね却下で」

「そんナー!」


 残るは私とローコだけなんだけど……


「私はめんどくさいから読みたくないんだけど」

「私もです」


 急に私たちの間が静かになる。だってうまく読めるか分かんないし……ていうかローコは私の望むことをやってくれるんじゃなかったの?普通に拒否してくるじゃん。


 最終的にはナトちゃんを除いた三人でじゃんけんをすることになった。一連の様子を見ていたツァールが何してんのこいつら……って顔で見てきたけど気にしない。




◇◇◇


「じゃあ読んでくよー」


 結局じゃんけんで負けた私が読むことになった。くそっ!グーを出した自分が恨めしい……


 私が表紙をめくると、すでに文字がびっしりと書いてあった。


『初めまして【祭壇】を解放する者よ。私はこの【祭壇】の製作者および魔導人形(マジックガール)の生みの親”ライアー”である。この日記には私が【祭壇】と魔導人形を作った経緯が書かれているが……この日記を残す理由はこれを読んでいる者が私の意志を尊重してくれると思ってのことだ。さて……いよいよ本題といきたいところだが……まずこの日記を読むにあたって知ってほしいことがある。それは……




           ――私が異世界からの()()()であるということだ』


 そのような見出しで日記は始まった……






ちなみにルートさんと再契約して試練に挑んでもらった場合、ツァールがボコボコにされていじけてしまいます。そのせいで試練のクリアを認めてもらえません。

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