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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第二章 イースの里編
56/65

試練 後編


~~~~~


『”剣”の使い方を教えて欲しいだ?』


 夜、少しの明かりしかついていない宿の廊下で、私の発言を聞いたライハさんは嫌そうに顔をしかめる。まぁ起こされて機嫌が悪いのは分かるけど。


『なんで私がそんなことを』

『試練に勝つために必要だからです』

『……あの盾のことか?だったら魔導人形の奴に物理任せてあんたは補助でいいじゃねぇのか?』


 ライハさんの言うことは一理ある。現に私も最初はその方向で試していた。でももうそのことはツァールにばれてるんだよねー。私が魔法しか攻撃手段がないことも。でも逆に言えばツァールの隙を作ることも出来る。


『なんで私なんだよ。剣ならウェンさんやルー……ウェンさんがいるじゃん』


 いま一瞬ルートさんの名前出そうとした?けど直前で何か思ったのかキャンセルした。いや別にルートさんと二人きりになっても何も起きませんし、第一ルートさんのことをそんな風に見てないですから……


『ルートさんは教えるの下手くそだと思いますし……ウェンさんは適当そうだし、あと授業料取ってきそうで……』

『……流石にそんなことは……ないと……思うん……だが……』


 歯切れ悪いっすね。やっぱライハさんもウェンさんが授業料取ってこないって断言できないんだ。ルートさんは王城での会話から絶対に教えるの下手だし。


『なのでお願いできるのがライハさんだけなんです。お願いします!』


 私はもう一度深々と頭を下げる。正直、私もあの盾でガードせざるおえない物理攻撃ができるようになるだけで勝率がだいぶ違う。


『……悪いが他を当たってくれ。それに私はあんたのことが嫌いだし、第一……あんた”剣”を舐めてるだろ。一日そこらでマスターできるもんじゃねぇよ』


 ……私は頭を下げてるからライハさんの顔は見えないけど、多分冷ややかな目でこっちを見降ろしてると思う。それでも……


『……何もしないのは違うと思うんです』

『無駄な努力は違うだろ』

『それでも必要なんです!勝率をあげるのにも、強くなるためにも!』


 私は声を荒げて説得する。ツァールの隙をつくには私が物理を担当するしかないと思ってる。絶対に引っかかる自信がある。


『私のためじゃなくていいんです。ただ……ローコのために私に剣を教えてくれませんか?』

『!』


 私がそう言うとライハさんは眉をピクッと動かせる。試練を突破しないと【祭壇】の開放……ローコの魔導人形(姉妹)たちを解放できないからね。ライハさんも流石にローコのためなら動いてくれるかもしれない。


 ライハさんが形容しがたい難しい顔をして悩んでいる。うん……悩ませてすみません……。少しするとライハさんが大きなため息をつく。


『……分かった分かった!ほんっと嫌いだわあんた……いいぜ教えてやる』

『! ありがとうございます!』

『ただし、一日だけっていう短すぎる時間だから私が教えるのは一つだけだ』


 ライハさんは私の方を指さしながら言い放つ。


『基本中の基本である構えと斬り方……――腰の入った一撃だ』




~~~~~




 頭上から真っすぐに振り下ろすんじゃなくて斜めに……剣の重さを余すことなく伝えて滑らせるように斬る。腕だけで振るんじゃなくて体全体で振るうイメージ……特に下半身の力を伝えるには腰の回転が重要……何回も怒鳴られながら覚えた正しい剣の構えからくり出す!


「これがライハさん直伝……腰の入った一撃ぃ!!」


 マオが両手で振り上げた剣をツァールに向かって振り下ろす。綺麗な構えからくり出されるそれは確実にツァールの体をとらえていた。その鬼気迫る一撃にツァールはおもわず赤く光る『アルクトゥールス』でガードしようとする。そう……ガードしようと()()()()()()


 ぶっちゃけた話を言うと私の剣って見掛け倒しなんだよね。ちゃんとした剣を振るう形はできてるんだけど、一日そこらで完璧に振るうことなんてできるはずがないし、第一私の鍛えてない体じゃあの盾を壊すほどの力なんてあるはずがない。

 ツァールも冷静だったらそんなこと見た瞬間気づくはずだった。だけど私が剣を使ってきたこと……見せかけでも剣の型が綺麗にできていたこと……私とローコが()()()()()()()をしていたこと……さまざまな要因がツァールの思考を鈍らせた。さぁ、ここまでお膳立てしたんだから決めてよねローコ。






 訓練場の天井近くを飛びながらツァールとマオの一連の流れを見ていたローコ。


「本当に……マスターは最高ですね」


 ツァールの盾……『アルクトゥールス』に向かって狙いを定めるローコ。使うのはマオと交換した魔導銃ではなく自分に備え付けられた、魔導人形(マジックガール)共通の機能であるライフル。


「ここで決められない私に……マスターの隣にいる資格はない」


 ライフルへ自身の魔力を注ぎ込む。大一番という場面だというのに緊張も震えもない。あるのはただ……マスターに奉仕するその一点のみ。


「――貫け」


 その呟きとともにライフルの銃口が光る。淡い光を放ちながらすごい速度で空気を裂いていく魔力弾。その弾はマオの剣の力をかき消している『アルクトゥールス』へと向かい……――撃ち砕いた。






終わったよぉ~……え?ツァールのこと倒してないって?

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