最強の魔導人形
目の前で仁王立ちしている幼女こと”ツァール”……ローコの話では最強の魔導人形として造られた存在であるらしい。
「魔導人形って強くなると背が縮むの?」
「失礼だな貴様!」
今度は私の発言に頬を膨らませ、怒ったような表情をとるツァール。こういう子ってからかいたくなるよね~。打てば響く鐘っぽいし。
「マスター、ツァールをからかうのもその辺に……本題の試練について聞きましょう」
「! そうだ!試練についてだ!」
「結局試練って何をすればいいの?」
まぁ、なんとなく予想はついてるんだけど。
「ふっふっふっ……もう分かってるのではないか?試練という名……この闘うためにあるようなフィールド……そして目の前の最強……」
ツァールの右腕がライフルの形に変形する。
「さぁ!余を認めさせてみよ!」
そう言いながらツァールがライフルとなった右腕をこちらに向け、発砲してくる。
「いきなり過ぎない!?」
「マスターこちらです!」
ローコに引っ張られながら近くの壁へと身を隠す。やっぱり実力見せろ系の試練なのね。最強とか聞いた瞬間から薄々感づいていたけどさ……
「さてどうしたもんか……」
「考えてる暇は与えないぞ?」
「「!」」
宙からツァールの声が聞こえたかと思うと、再び発砲音が鳴る。クソッ!上からじゃ壁も意味ないじゃん!傘でも持ってこいっていうの!
「! 伏せてくださいマスター!」
上からの弾幕にローコがライフルとなった左腕で撃ち落とそうとするが……
「分かってるだろう?[MG-615]と[MG-26]ではスペックが違うと!」
「くっ……」
連射速度も弾の威力も速度も負けているローコのライフルではすべてを落としきれず押し切られそうになっている。落としきれなかったいくつかの弾が私たちの近くに着弾する。もはや当たるのは時間の問題だった。
「ローコ!とりあえず二手に分かれるよ!」
「了解です!マスター!」
このままだと二人まとめてハチの巣にされると思った私とローコは二手に分かれる。私は壁をうまく使ってツァールの射線に入らないように移動する。
「そっちが鉛玉ならこっちは魔法の弾で!」
魔導銃で火球や水球をツァールに向けて撃ったけど、ツァールは背中のジェットパックで空を縦横無尽に駆け回避する。これホントに当たるの?今になって舞踊がリファにキレてた理由が今になって分かったわ……
「そこか!」
ツァールが魔法が飛んできた方向に向かって連射する。私は近くの壁を盾にし、弾幕を防ぐ。これ開けた場所だったら確実に死んでるわ……。
しかし壁があるとはいえ、ツァールの弾幕を耐えていられる耐久力がないのか、壁からピシっという音が聞こえる。
「わーはっはっはっ!さぁ!どうする[MG-615]のマスターよ!」
「どうすることも出来ないからローコお願い!」
「了解しました!」
ツァールの意識が私に向いている隙に、ローコは背中からジェットパックの翼を展開し、ツァールへ急接近する。
「ほう、中々いい信頼関係だな!」
「会って一時間もたっていませんが……ねっ!」
ツァールの懐へと飛び込んだローコは右手の手の甲から刃を伸ばして振るうが……
「いでよ……『アルクトゥールス』!」
ツァールの左腕から烈火のごとく燃えるような赤色の盾が現れる。ツァールは振り下ろされる刃を冷静に見極め、盾を構える。
ローコの刃とツァールの盾がぶつかり甲高い金属音を鳴らす……ことはなかった。確かに刃と盾は接触している。だが、それで生じる音が一切なかった。このあり得ない事象に私とローコが呆然となる。
(今の……なに……まるで衝撃をかき消したような……)
もしかしてあの盾……
私が盾について考察していると……
「一体なにが……」
「呆けてる場合か!」
何が起きたか分かってないローコにツァールが地面に向かって蹴りを喰らわせる。ローコは動揺によってガードも間に合わず、そのまま地面へと落ちていく。
「さて、あのマスターは……」
「ここだよ」
「!!」
ツァールが左隣からあのマスターの声が聞こえ、急いでそちらの方を見ると、そこには宙を飛んでいるマオの姿があった。
(この人間、飛べるのか……!?)
マオがしたことは舞踊の真似だ。地面から岩で自分の体を押し上げるように土の魔法を使ったのである。
「その盾、物理攻撃を無効にするんでしょ」
「!?」
はい、今動揺したね。私の考察は合ってたみたい。
マオは今までのやり取りからツァールが顔に出やすいタイプだと判断し、カマをかけた。それにツァールはものの見事に引っかかってしまった。
「物理無効なら……」
マオは盾に狙いを定め魔導銃を構える。
「魔法でぶち壊す!」
正直、あの盾は厄介なんだよね。遠距離じゃツァールのライフルの性能が高くて、あまりしたくない。なら近接戦で決着をつけたいんだけど、それにはあの盾が邪魔だ。
私はあの盾に向かって魔導銃の引き金を四発引く。この早撃ちの連射は日課の練習の賜物だ。魔物相手に一発ずつじゃ威力が足らないことが結構あったから練習をして編み出した技だ。
私が撃った四発の弾はどれも中級魔法の威力を持つ魔法だ。たとえあの盾がすごい魔道具でも中級魔法を一気に四発も喰らえば破壊することができるだろう。
だが、マオの予想は裏切られることになった。
「『アルクトゥールス』”機能変化”……”退魔”!」
ツァールの盾が赤から緑へと色が変化する。そのままアルクトゥールスと呼ばれた盾に私が放った魔法がぶつかるが……
「!? 消滅した!?」
私が放った魔法はすべてあの盾に当たった瞬間、霧散してしまった。
「残念だったな!この『アルクトゥールス』には二種類のモードがある!あらゆる物理攻撃を無効化する”鉄壁”と触れた魔法を消滅させる”退魔”!この二つの力を持つ盾『アルクトゥールス』を機能にもつ余が最強の魔導人形である!」
「こんの……クソチート!」
ふっざけんな!ゲームのボスでもこういうのは物理と魔法どっちか一つでしょっ!?なに両無効してくるわけ?
ツァールのことを舞踊に負けず劣らずのクソゲーだと理解したマオに銃口が突きつけられる。
「さて人間の貴様は空中で弾を躱すことができるか?」
ツァールの銃口が火を吹く。このまま指をくわえて見ていれば私の体にいくつもの穴が空くだろうね。
「ちぃ……」
私は横に魔導銃を撃ち風の魔法を発動させる。それによって起こされた風に押されツァールの銃弾を回避しようとする。もしものために一発だけ残しといてよかったー!舞踊の一件で銃の残弾把握を意識するようにしてたのが役に立った。
「ほう!やるではないか!だが……」
ツァールの銃口はまだ火を吹いている。その銃口は風に押されている私を追って狙いを定めている。
「悪あがきレベルにすぎんぞ!」
「くっ!」
風のスピードが遅くなり始め、銃弾が頬を掠めるぐらいにまで近づいてくる。やっば……これからどうしようと思った時。
「!!」
「ご無事ですかマスター」
「生死の境を反復横跳びするくらいギリギリだったけど、まぁ無事」
突如、銃弾が飛んできたツァールは一旦銃を撃つのをやめ、回避に専念する。風がやんだ私の体は地面に自由落下していくが、待ち構えていたローコにキャッチされ助かった。多分、あの銃弾もローコのだよね、マジでありがとう……。
「マスター……どうしますか?」
ローコが困ったかのような顔をしている。二人がかりとはいえツァールに歯が立たないのが今の現状だからね。
私は少し考え、ある結論を出した。
「……やっぱあの盾が一番のネックかな」
正直あの盾をどうにかしない限り勝てないと言っていい。だけど攻略法が思いつかない……。だから今できることは……
「ツァール!その盾はあんたの機能なんだよね!」
少しでも情報を引き出す。次に活かすために。
「ふっふっふっ……そうだ!余の最強の機能である!」
ツァールが誇らしげに自慢してくる。さっき自身の機能って言ってたけど、一応確認ね。
「機能ってことはあんた自身の魔力を使ってるんでしょ。それほどの性能なら魔力の消費もでかいはず……」
「残念だが、余は【祭壇】と魔力のリンクがある!約千年ものあいだ貯め続けた魔力があるから魔力切れはしないのだ!」
その情報は聞きたくなかった……。魔力切れを狙うのも無理か……。
「さて、問答は終いか?なら……」
「そうだなー……とりあえず聞きたいことは聞けたし……」
「ラウンド2といこうではないか!」「逃げるよローコ!」
「…………え?」
私とローコはこの部屋に来るまでに降りた階段の方へと全力で走る。その行動にツァールもあんぐりと口を開けている。そう私がだした結論、今のままじゃツァールには絶対に勝てない。なにか策を練らないといけないけど、戦闘中そんな悠長な時間はないし、いったん審判の間の入り口まで戻ったほうがいい。
「……はっ!ちょっと待てぇ!試練はどうする!?」
「リセマラで」
「勝つまで何回も来るって意味か!?試練を途中で中断するなど聞いたことないわ!?」
うるさい、そんなルールはどこにも書いてないしー。人生なんてどれだけグレーな部分を攻めるかでしょ。まぁ、攻めすぎて黒認定されないよう注意が必要だけど。
背中からツァールの狼狽える声を聞きながら、審判の間と書かれた入り口の前にまで戻った……
いま出てる『アルクトゥールス』の性能だけみれば、ルートの【最高傑作】の上位互換に思えますが、全然そんなことはありません。それは多分、次回で説明すると思います。




