一方そのころ……
「やぁやぁみんな揃ってるかな?」
会議室のように大きな円形のテーブルとそれを囲うように並べられた椅子が七つある部屋に、男性にしては少し高い声が響く。この場所はマコトとナイラとオドが王都の襲撃のまえに計画について話し合っていた場所だ。この場所は革命軍のアジトの中でもかなり大きい方で、会議ができるような部屋もあることから重宝されていた。声を発した青年……ナイラがここに来た理由はリーダーである自分と切り込み隊を交えた定例会議があったからだ。
軽ーい挨拶をしたナイラが部屋を見渡すと三つの席が埋まっていた。いやこれからナイラがもう一つの席に座ることになるから席は四つ埋まることになる。
「やっぱりあの二人は来ないね」
「二人ではなく三人ではないのか?」
席へと座ったナイラの発言に一人の男性が声をあげる。標準的な体格でありながら、見えている腕の筋肉の部分は鍛えられていることが分かるほど仕上がっている男性。しわが少し見える顔もダンディさを醸し出している。この席に座っているということはこの男も”切り込み隊”の一人である。
「あぁ、知らないんだねマコトくんは殺したから。ま、負けてこっちの情報を売ろうとしたからしょうがないね」
「ほう……あのゴミ、王国の奴らに負けたのか……実力は評価していたんだがな。その死体はあるか?我の薬の実験に使いたい」
「残念だけど回収はできなかったんだよねー」
そう言うとダンディな男は興味が失せたように目を伏せた。あーあ、もうやる気なくしちゃった。ダンディな男……”グラーキ”くんはマコトくんに研究の協力をしつこく求めてたもんね。にしても本当に薬バカだね。
「それでなんだけどマコトくんがいなくなったことで席が一つ空くだろう?代わりに”サト”くんを”切り込み隊”に加えようと思うんだけどキミたちはどう思う?」
「知らん、勝手にしろ」
「神に意見を聞くなんて何様?」
「…………」
うーん、この協調性の無さ。グラーキくんはもう興味ないから適当に返事してるし、自分を神だと思ってる精神異常者の”コス”くんは話し聞いてたか気になるほどだし、切り込み隊の紅一点の”ルリム”くんは会議には参加するけどずっと無言だし……まぁ反対意見がないから加える方向で行こうか。サトくんも問題児ではあるんだけど実力は申し分ないしね。
「じゃあ加える方向でいくね。あ、そうそう今回の報告はまだあってね実は【ヒュドラ】のみんながイースの里を見つけたんだよね」
「なんだと!?」
ボクが出した話題にグラーキくんが食いつく。だけど今回は他にも……
「へぇ……あの最近入った盗賊団の信者たちか……役に立つんだ」
どこかの宗教の教祖みたいな恰好をした男……コスくんも食いついてきた。コスくんが食いついてくるのは珍しいね、グラーキくんは薬に関しての知識が欲しいから、莫大な知識が眠っているイースの里に興味を示すのも分かるけどね。
「今すぐに向かう、これで完璧な”不老不死”に近づくかもしれんからな」
「あぁ待って待って」
席を立ちあがったグラーキをナイラが止める。急いでいるグラーキにとって自分の行動を邪魔をするナイラは鬱陶しく感じていた。振り返りながらナイラを見つめる目には殺意がこもっていた。
「死にたいのかゴミ」
「ハハハ、死にたくはないね。でも今あの里にはルート・ホープがいるんだよね」
「「「!」」」
ナイラの言葉を聞いた三人の顔が驚いたものになる。
「【ヒュドラ】から連絡が来たんだよね」
「ならば行くだけ無駄か……我に期待だけさせおって……」
「でも【ヒュドラ】のみんなはそんなことお構いなくイースの里に攻め込もうとしてるみたいだよ」
「救えぬ信者たちだな……やっぱりこの神を崇めない信者は愚かしい……」
「でも何にも対策してないわけじゃなくてね、アレを持って行ったんだよね」
まさかボクもアレを持ち出すとは思ってなかったんだよね。まぁ確かにアレの力は凄まじいし、それを制御できるのは【ヒュドラ】の”シャン”くんだけなんだよねー。ボクとしてはアレを王都の本侵攻で使いたかったんだけどね。
「アレって?」
「ほら最近発掘されたアレ」
「…………あぁ、アレか……だがそれでも厳しい気がするがな」
「ま、どうなるかは分かんないかな。ボクもイースの里には興味あるし、【ヒュドラ】と合流して一緒に行くつもり」
イースの里の捜索はみんなにさせてたけど、見つかってよかった。ボクの求める知識がまだあるかもしれないし、面白そうな記録も見れそうだ。お兄様たちがいるのは誤算だけど、ま、やりようはある。
「ふん、ゴミどもで勝手にしろ」
「たまたま近くにいたから来たけど時間の無駄だったね」
グラーキくんが部屋を出て行ったのを皮切りにコスくんも立ち上がってどこかに行ってしまう。会議の終了はしてないんだけど……もう伝えておくこともないし、いっか。
そして終始無言で座っていた、この国では珍しい大きな魔女帽子をかぶり、そこから見えるオレンジのメッシュが入った白髪の髪を揺らす女性……”ルリム”も席を立って部屋を出ようとする。
「あ、ルリムくんは一緒に来ない?キミがご執心のサンライト公爵家の当主もいるけど?」
「…………」
ドアノブへとかけた手を止めたルリムが後ろを振り返る。
「――あいつとは王都で決着をつけないと意味がないのよ」
その名を口にするなと言わんばかりに憎悪の籠った目でナイラを睨みながら、そう言い残した彼女は会議室を出て行ってしまった。
「うーん、やっぱり切り込み隊のみんなは来ないか……。仕方ないオドを誘ってイースの里へ行こうか」
部屋に残った最後の一人であるナイラも会議室から出ていったことで、革命軍の定例会議が終了した……




