”カリス”
「マオさん、あれなんですか?」
「しっ!見ちゃいけません!」
私はナトちゃんの目を塞ぎながら青年を遠くから観察する。いやほんと何してんの?なんで土下座しながら開けとか言ってんの?意味分からん……。ナトちゃんが変なことを覚えたらどうすんの。そうなったらあとからリリーさんに絶対なんか言われそうだし……
私が呆れのような視線で見ている間も青年は、開けとかオープンとか色んなことを土下座しながら言ってたけど、扉が開かないと分かると土下座をやめ、あぐらをかくように座った。
「ン~、これでもないナー。一体どうやったら開くんだこの扉?考え着くことはすぐやってきたし、やっぱり壊すしかないのかナー?でもそれやったら全員に怒られるし……言い伝えどうり危機が迫らないと開かないのかナー?気になるナー、中はどうなってるのかナー?」
青年は特徴的な喋り方をしながら独り言をつぶやいていた。土下座じゃなくなったから顔が見えるようになったけど、青年は眼鏡をかけたいかにもインテリみたいな顔をして、頭には龍のような角が生えていた。
「いや何を見てんだ私は……なんかめんどくさいやつの気配がするし、早くナトちゃんを連れてここから離れ……」
「ンー?そこにいるのは誰かナー?」
気づかれた!いやまだ、ここは無視だ……気づかないふりをすれば関わることも……
「はい!どうかなさいましたかそこの人!」
何やってんのナトちゃぁぁぁぁぁんっ!?目隠ししてたじゃん!確かに私ら以外に人はいなかったけどさ、そこで返事しちゃだめでしょぉぉぉぉぉっ!?
「君たちは……もしや外の人間なんだナー!?初めて見るナー!」
「はいそうです!王都からやってきましたナトといいます!」
あーもう完全に詰んだわ。ナトちゃんもいつの間にか私のもとから離れて青年と話してるし……仕方ないここは……
「初めまして私はマオといいます。サンライト公爵家のメイドです」
綺麗な外面で乗り切る!バイトで鍛えられた処世術を活かすとき!百戦錬磨のクレーマー対応の実績を見せてやろう!
「外の人間……こんな見た目なんだな!知識としては知ってるが実際に目で見ないと分からないこともあるんだナー。わたしも自己紹介”カリス”だ!よろしくお願いなんだナー」
いやよろしくしたくないです。適当に少し話をしてここから離れようと思ってます。
「カリスさんはここで何をしていたんですか!」
「ンー、この【祭壇】について研究してたんだナー。何故この【祭壇】が作られたのか、どうやったらこの扉を開けられるのか……他の全員は諦めたんだが、私は諦めないんだナー」
あーアゼ人の好奇心が発動したのね。けどアゼ人が約千年近く解き明かせなかった【祭壇】か……。祖先が時間をかけて研究しても分からなかったんだから、そりゃ他のアゼ人も一旦諦めるか。
「色んな研究をしたんだが、外壁に使われているのは一般的な石材なんだけど、なにやら結界が張られてるみたいでナー。壊すことも無理そうだから、入り口から入るしかないんだけど開かないし……中に入らないと始まらないんだが……」
そう言うカリスは顔をしかめる。だからあんなことしてたのね。でもあれで開いたら逆に怖いよ。
私は石で作られた扉の前に行く。
「鍵穴みたいなのもないし、壊そうと思っても壊せるようなものでもないような……」
私が扉にペタペタ触れていると……
「!? 地震!?」
「どうゆうことなんだナー!?この地域に活発な火山もないのだが……」
ゴゴゴゴゴ……、ゴゴゴゴゴ……
突如発生した地面の揺れに私たちが驚いていると、【祭壇】の扉が急に重そうな音を立てながら開く。やがて扉は開ききり、【祭壇】の入り口からは真っ暗な通路が姿を現わした。
「「「…………」」」
私たち三人は何かを言うでもなく開かれた【祭壇】の入り口を見つめている。いや何開いてんの?これじゃ、私が触ったから開いたみたいじゃん!これからどうすれば……閉じた方がいいか。いやでもこれで私がまた触れたことで閉じたら、開いたのは私が触ったからで確定するし、そうなったらまためんどくさそうな……
私が悩みに悩んで出した結論は……
「ちょっと用事思い出したわー!!じゃねっ!!」
逃走であった。知らない知らない、私は何も知らない!絶対このままここにいたらめんどくさいことに巻き込まれる!
兵法三十六計逃げるに如かず……逃げるは恥だが役に立つ……逃げるんだよォ!ス〇ーキー!偉い人達はみんな逃げることに関して名言を残している。私もそれに習うまで!最後だけなんかおかしい気がするけど気にしない。
「待つんだナー!!」
「っ!? 離せぇぇぇぇ!」
走り出した私をカリスが首元をひっ捕らえるかんじで捕まえる。やめろ!目を輝かせながら私を見るんじゃない!
「今君が触ったことで扉が開いただろ!」
「そんなはずない!きっとあんたの土下座開けが時間差で効いたの!私は関係ナッシング!」
「苦しい言い訳だナー!中に入った時また君が触れないと開かない扉があるかもしれないから、君を逃がすわけにはいかないんだナー!」
「それが目的か!私は中に入る気はなーい!こういうのは勝手に入る前にアードゥルさんとかに報告するのが普通じゃないの!?」
「それじゃ【祭壇】は調査のために規制されてわたしが入れなくなる!チャンスは今だけなんだナー!」
「ぐぬぬぬ……!ちょっとナトちゃん!助けて!」
私は必死に抵抗しながらナトちゃんに助けを求める。ナトちゃんは私の声が届いたのかこちらに近づいて来て、私に抱き着く。…………うん?私に抱き着く?
「マオさん……私あの中気になります!一緒に行きましょう!ロマンです!」
「え……ちょっ!?」
キラキラと目を輝かせたナトちゃんが腕を悪鬼のものに変化させ私を持ち上げる。裏切ったな!私の心を弄んだなナトちゃん!
「そう来なくては!よし出発!」
「おー!」
「いやだァァァァァァァァッ!!」
そのまま二人に持ち上げられながら【祭壇】の奥へと連れていかれた。この恨み覚えておくからな……二人とも……!
仲間に裏切られることに定評のある主人公です。




