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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第二章 イースの里編
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【祭壇】

「はたしてこれは偶然と言えるのじゃろうか」


 アードゥルさんの問いかけは困惑している私たちにとって、重い言葉だった。マオが元凶……たしかにこれだけ怪しい点があれば、アードゥルさんがマオを疑うのも分かる。でも……


「私は……それでもマオがそんなことしないと思うわ」


 そう言い放った私に部屋にいる全ての人の視線が集まる。ライハもウェンさんもこれだけの不自然な点を出されてはマオが犯人なのかもしれないと思っているのか、私が断言しているのに驚いた様子だった。


「なぜそう思うのじゃ?マオさんはこの本のことを知るはずがない。たまたま同姓同名の名前がだったと?マオさんが現れた時から増えた残り火の異常……偶然が重なれば()()じゃと思わんか?」

「理由なんて簡単よ、ただ私が信じてるだけ……マオはそんなことをしないって」


 アードゥルさんの目が見開く。私の言葉には証拠も何もない。ただの感情論。

 アードゥルさんは驚いたものの真剣な表情を崩すことはない。真っすぐこちらを見て、心を見透かすように真意を確かめようとしてくる。いや、ほんとに心を読まれているのかも、アードゥルさんの混合魔法(デュアル)は心を読むって言われてるし。


 少しの間、部屋を静寂が包む……。時間にして数秒だったが、部屋の中にいる人にとっては長く感じられた時間……最初に沈黙を破ったのはアードゥルだった。


「……ふぉっ!ふぉっ!そうか、そう思うのか……試して悪かったのう」

「え」

「実はのう、ワシも実際に会うまではマオさんが犯人じゃと思ってたんじゃが、あれは違うのう。一目見て分かったわい。少し話してみても嘘をつく様子や、やましい隠し事をしている気配もない……ワシのデュアルにも反応せんし、あれは白じゃのう」

「えぇ……今までの問答は何だったんだ……」

「一応、このことは伝えておくべきじゃと思うてな。マオさんが残り火の件には関係ないとしても、その本に書かれている名前と同じことは偶然じゃとは思えんしのう」


 私は再び最悪の魔女について記録された本を見る。”最悪の魔女”ソティス……コルヴァズ帝国……魔女狩り……そしてアザト・マオ……


(マオ……あなたは異世界から来たと言ってたけど……もしかしたら私たちの世界に()()()来たのかもしれない……)




△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△




「ん~……今何時?」


 カレン達が別室に行ってから、ずっと本を読み続けていたマオは座りっぱなしで凝り固まった体を伸びでほぐす。どうやら三時間ぐらい読み続けてたらしくもうお昼時だ。


「にしてもやっぱりすごい……王都の図書館とは情報量が段違い……。細かい部分の情報までちゃんと記載されてる……流石全ての歴史を記録してるとまで言われてるだけある」


 私はカロン王国の歴史を主に読みふけっていた。この世界についてまだ知らないことも多いからね。本を読んでいる時間は非常に有意義だったと言える。歴史の背景だけでなくそれに対する考察なんかも書かれていたからめっちゃ読みやすかった。


 後は魔物や魔法に関する本も読んでみた。


「中でも気になったのは”神獣”……【怪鳥】と【蛇皇】」


 この二匹は人族からは神獣と呼ばれている魔物たちだ。なんでもはるか昔から生きている魔物らしくとても強いらしい。この二匹が神獣と呼ばれている理由は主に二つある。

 一つは人に敵対してこないこと。魔物はリファみたいな例外を除けば、人を見たら基本的に襲ってくる。だけど、この二匹も例外側らしく人を見ても攻撃してこなければ襲ってこないらしい。しかしこれだけでは神獣と呼ばれるには弱いと思う。

 そこで二つ目の理由、なんとこの二匹は歴代五人の魔女を協力して()()()いるらしい。これが神獣と呼ばれている主な理由で私が気になった部分。この二匹は魔女が出現すると人の前に姿を現わして人の世を守ると書かれていた。唯一の例外はソティスで、のちに初代王国騎士団団長となるミゼーア・ホープとエル教の開祖エル・ノーティスの二人と二匹で協力してなんとか倒したらしい。いやソティス強すぎない?

 こんな理由で人からは神獣として呼ばれている。中でも獣王国ではこの二匹を崇める宗教もあるのだとか。なんでも獣人からは”生命の魔女”……グラスがめっちゃ嫌われているから、それを倒したこの二匹を崇めるようになったのだとか。


 とまぁ本にはこんな風に書かれていたんだけど、私は殺したのはおかしくない?と思っていた。だって魔女たちは自分たちが封印されてるって言ってたし……本の内容に矛盾する。このことを魔女たちに聞いてもなんも言わないし……


(”過去の旅行記”を探せってことなんだろうけど……魔道具の図鑑とか見てもそれらしいものがなかったんだよね。ほんとにあるのか怪しいんだけど……)


 思考に意識をとらわれていると、どこからかグぅ~~という音が聞こえた。音の鳴る方を見ると、あまりの活字の海に脳がパンクして、地面に倒れていたナトちゃんのお腹から鳴っていた。そういえばもうお昼だった。


「そろそろお昼ご飯にしようかナトちゃん」

「!! ごはんですね!……あ!他の皆さんはどうしましょう?」

「うーん、カレン達はさっきアゼ人の人が軽食を持って行ってたから、多分部屋から出てこないかな。リリーさんを誘っていこっか」

「はい!」


 私たちは【トナコ】から出て宿の方へと向かう。宿は塔に近い場所にあったから歩いて数分で着いた。


「リリーさーん、お昼食べに行きませんかー?」


 私が部屋の前で声をかけるが返事はない。おかしいな?流石に荷ほどきは終わってるだろうし……。そんなことを考えながらドアノブをひねると鍵が開いていた。私とナトちゃんが部屋の中に入るとそこにリリーさんの姿はなかった。


「あれ?いない……」

「マオさん!これを見てください!」


 そういってナトちゃんが差しだしてきたのは一枚のメモだった。どうやら机の上に置いてあったらしい。


「えーと、『少々用事ができたので、マオさんはナトさんと二人で昼食を取ってください』……エスパー?」


 完全に私たちがお昼を誘いに来るの見こしてたじゃん……。じゃあナトちゃんと二人でどこか食べに行くか。


「ナトちゃん、リリーさんは用事ができたみたいだから二人で行こっか」

「そうですか……残念です」


 ナトちゃんは少ししょんぼりしたような顔をする。ナトちゃんは私たちの中でリリーさんに一番なついているからねぇ。まぁリリーさんが構い倒してくるから接することも多いからなんだろうけど。


「アードゥルさんのお付きの人からおすすめのお店を教えてもらったからそこに行こうか」

「はい!」


 宿から出て目的のお店まで向かう。できれば料理の研究もしたいな~。他の国の料理とかあるみたいだし。




~~~~~




「美味しかったねー」

「はい!特にお刺身というものにはびっくりしました!まさか生の魚を食べるとは!」


 私とナトちゃんは店を出た後、食べた料理の感想を言い合いながら歩いていた。いやーまさかメニューに刺身があるなんて思ってもいなかった。カロン王国では生の魚を食べる文化はなかったし、この世界にはないのかなって考えてた。メニューから見つけた時は迷わずに注文したもんね。


 にしても刺身があったってことは、どこか他の国の料理ってことだよね。イースの里って他の国の文化を吸収して独自の文化を作り上げてるわけだし……もしかしたらほとんどの日本食がある国があったりして。【トナコ】に戻った後、他の国についてもしらべてみよーっと。


 すると前を歩いていたナトちゃんが振り向いて


「マオさん!どうやら近くに【祭壇】があるらしいですよ!少し見に行ってみませんか!」

「【祭壇】って……あー、たしかイースの里の二大建造物の一つだっけ?」

「はい!さっきのお店の店員から近くにあるって聞きましたので!」


 【祭壇】か……【トナコ】で祭壇について記された本を読んだんだよね。なんでも今から995年前に一人のアゼ人によって作られた巨大建造物らしい。その入り口の扉は固く閉ざされていて、製作者以外誰も中に入ったことがないのだとか。けど記録大好きなアゼ人としては珍しく、製作者のアゼ人の名前は書かれてなかったし、どのような理由で作られたかは全くの不明。言い伝えでは里に危機が迫った時、その扉は開かれる……とか。


「へぇ……この近くにあるんだ……じゃあ行ってみよっか」

「はい!楽しみです!」


 私たちが【祭壇】に着くとその大きさに目を見張った。【トナコ】の時には高さに驚いたけど、【祭壇】はその敷地面積に驚いた。王城と比較しても負けない程の広さはあるねこれ。流石二大建造物の一つだわ。


 ナトちゃんと生で見た【祭壇】について少し談笑したあと入り口の方も見ようって話になり、入り口の方へと向かうと……


「開け……【祭壇】ッ!!」


 威風堂々と立っている巨大な扉……その固く閉ざされた扉の前で土下座しながら扉の前で開けと言っている一人のアゼ人の青年がいた……






最後の文はド〇クエ9で塔に入るときお辞儀をしなければいけないのを思い出しながら書きました。みんな知ってるのかな……

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