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魔女と王国と声変わり  作者: 睦月はくろ
第一章 転移編
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腐敗した心を穿て その三

 みんなは”微生物”というものを知っているだろうか。現代日本で教育を受けた人たちならミジンコとかミドリムシのアレねという風に思うだろう。けど、ミジンコって微生物じゃないって言う人たちもいるらしい。微生物って名前は肉眼じゃ見えないような生物の総称だから定義として曖昧過ぎる……

 話が逸れてしまった。さっきも言った通り微生物は目で見えない大きさの生き物の総称である。細菌とかカビも微生物の一種である。微生物は我々の生活に大きく貢献している。酒とか発酵食品を作るのにも必要だったり、肥料を作るのにも使われたり、人間の体の中で病原菌から守ったりしている。だが、いいことばかりではない。食中毒を起こしたりするのも微生物のせいである。そう、…………食べ物を()()()()()も……




「マオっ!?」


 マコトに腕を掴まれている状況にカレンの悲痛な声が耳をつんざく。でもそれを気にしている暇は私にはない。


 腕を掴まれ、このままだと体が腐っていくというのに、マオは動揺するでもなく魔導銃をマコトに向ける。そして躊躇なく引き金を引く。破裂音と一緒に岩がマコトの目の前に現れる。この岩はマコトが生み出したものではない、この至近距離で(アウス)の魔法を喰らったマコトはマオから手を放してしまい、そのまま地面を転がる。


 よし手を離させた……、ここからは賭けだ!


 私は急いで掴まれた左腕の服の袖を二の腕らへんから破り捨てる。私のメイド服は長袖だから、実際に素肌に触られたわけじゃない。それならと思い、破り捨てた袖を適当に遠くの方へと捨て去る。捨てられた袖は地面に落ちると、瞬く間に虫食いのように何か所も穴が空いていったと思うとそのまま消えていった。残されたのはわずかな残骸と糸のかけらぐらいだった。私はその光景を見て、自分の予想に確信を持った。


「大丈夫マオ!! 腕は何ともないの!!」


「落ち着いて、大丈夫。ほら見てよ咄嗟だったけどなんともない」


 私に駆け寄ってきたカレンに半袖となった左腕を見せる。私の肌が変色しているとことかはなく、ギリギリで間に合ったみたい。それを見てカレンは胸をなでおろしてホッとしたような顔をする。でもこれって何度も使える方法じゃないし、あいつも今度はじかに体に触れようとしてくると思うし……一回きりだねコレ。


 それよりもマコトの混合魔法(デュアル)について分かったことを共有しないと。


「カレンもう分かったと思うけど、あいつのデュアルは触れた物を腐らせる魔法じゃない」


「……そうね、今も傷が塞がっていってるし、完全に騙されたわ」


 私たちの視線の先にはすでに起き上がっているマコトの姿があった。あいつが岩をぶつけられて、あざみたいになっているところに手を当てると、瞬く間に治っていく。ゲームだったらクソボスって言ってただろうなー。


「あいつのほんとの混合魔法(デュアル)は…………”微生物を生み出す魔法”だと思う」


『「微生物?」』


 カレンとリファが声がはもる。頭に疑問符を浮かべてるけど、まぁそうだよね。この世界ではまだ微生物は発見されていない……つまり概念としてないんだから。知らなくて当然だよね。


「めっちゃ簡単に言うと、目に見えない程小さい生き物のこと。私が元居た世界ではすでに発見されててね……私たちの体の中にもいるよ」


『なんと!?』


「けど、その微生物っていうのは、あんな風に一瞬で怪我を直したり、腐らせたりできるものなのかしら?」


「そこが微生物を操るじゃなくて生み出すと思ったところ。私の知識だとそんな一瞬で効果が出る微生物なんていない……はず。だからあいつが架空の微生物を生み出してるんじゃない?」


 あの線状に腐った跡も微生物が自分で移動したせいで出来たものだと思うから、私の予想はあってるはず。

 こんな使い方ができるなんて流石現代社会からの転移者。まぁ私だとそんな使い方思いつかなかった気がするけど。多分なにそのクソ魔法って思ったかも。


 それに使い方だけじゃなくて騙し方もうまい。最初に自らのデュアルをばらすふりをして嘘の情報を信じ込ませたのもそうだけど、なにより私の(フィン)の魔法の攻撃を喰らった時にすぐに回復させるんじゃなくて、相手が油断したときに体が動けるように回復さすとか……やっぱり油断できない。


『あやつのデュアルが分かったところでどうするのだ?もうすぐあいつも再生し終わるぞ』


 マコトの体にはすでにほとんど傷は残っていない。マコトはマオたちの方を警戒して見ているが、なぜ追撃してこないか疑問に思っている。


「やっぱりあいつの手袋を破壊するのがいい気がするわね。あれさえなければ腐らせることができないんだけど……」


『あやつがそれを許すと思うか?』


 やっぱりマコトの攻略に一番ネックになるのは、あいつの防御性能だ。反射神経もいいし、並大抵の攻撃は回避かガードされて終わる。ならさ……


「カレン【太陽】を使うときって魔力を練らないといけないの?」


「そういうわけじゃないわね。でも魔力を練らないで撃ったとしたら、あいつの岩は貫けないかしら」


「なら魔力練っといてよ。私とリファが隙を作るからさ」


 私は悪い笑顔をしながらカレンにそう言う。なんにせよ舞踊は切り札を見せてしまったからね、もう奥の手はないとみてる。なら私の()()()を使えば崩せると思う。


「…………分かった。頼むわね」


「任せて!最高の展開にしてあげるから」


 最初()()()()を見た時、私と相性良すぎと思ったんだよね。でも私じゃ適正ないから使えなかったんだけど、魔導銃があれば話は別なんだよねー。なんにせよ舞踊には驚いてもらおう。




◇◇◇




(どういうことだ……?)


 マコトは今の状況について理解できていなかった。自分が傷を治している時に邪魔しに来なかったのも気になるが、今は再び公爵家の連中が仕掛けにきていて考えてる暇がない。だが……


「さっきと同じなんだよ!それで勝てると思ってんのかっ!」


 魔法で岩を生成しながらあいつらへ発射する。チッ、躱されたか。だが、あいつらが今やっていることはさっきと同じように多方面からの攻撃のみ、それでは自分に勝つことはできないと分かっているはず。俺が治癒できることが分かったはずなのに長期戦はあまり望ましくないはず。なら……


(あいつがなにかしらの肝だな)


 さっきまでと違うことは一つだけ、あの公爵家の当主様がこっちに攻撃せずただ突っ立てるだけ。俺は魔力感知はできないけど、あーゆう奴は魔力を練ってる状態ていうのはオドさんとかに教えてもらったことがある。なんにせよ狙う奴は決まった。


 マコトはカレンの方へと向かって走り出す。だが、それでもカレンは慌てた様子はなく魔力を練り続ける。マコトの後ろから魔法が飛んでくるが何事もないように回避する。むしろカレンを守る動きをしていることがマコトの考えが合っているという確信を与えていた。


「リファ!お願い!」


『任せよ』


 止まらない俺に残った一人と一匹がしたことは目くらましだった。日本人のメイドが銃を俺の近くの地面に向けて撃つと、撃たれた場所から砂煙が広がる。さらにその砂煙をあの魔物が風でさらに広範囲にしたことで、視界が悪い。クソ、あいつら全員の位置を見失っちまった。この魔法……”デザートアウス”か


 ”デザートアウス”、言うなれば砂煙を生み出す魔法だが、生み出す範囲が狭い。魔法使いが接近されたときに距離をとるために使うことが多い魔法だ。覚えておいて損はないって感じの魔法。それと風の魔法を組み合わせるなんてな。


(だが、あいつらも俺の位置を見失ったはず……いや、あの魔物たしか鼻が利くよな。なら位置がばれてると思ったほうがいいか。だけどよ……)


 砂煙をマコトの横顔めがけて飛んできた火球をかがむことで回避する。俺の反射神経を甘く見すぎなんだよぉ!俺は火球が飛んできた方へと急いで煙の中を走り出す。そしてついにその姿をとらえる。


「まずはお前からだ当主さんよぉ!」


「くっ……」


 目の前に見える姿はあの公爵家当主と同じものだ。頭に巻かれた包帯。キツメな印象の顔。長い艶やかな金髪。所々汚れた高そうな服。そして声も。それらすべて煙に巻かれるまえに見た時と一緒だ。だが……


(なんだ……この違和感は……)


 だが、その違和感の正体がつかむことができない。いいようのない不安がマコトを襲うが、それでも時は止まらない。


 目の前の『カレン』が杖をマコトの方に向ける。その様子から魔法を使おうとしているのは一目瞭然だ。それを阻止しようとマコトがカレンの首目掛けて手を伸ばす。刹那の交差……先に魔法を発動させたのは……


「【太陽(サンライズ)】っ!………………()()()()


「お前その声っ!!?」


 マコトに聞こえたのはカレンの声ではなく……あのメイドの……それを認識した瞬間、別方向から砂煙を切り裂くように自分に向かってくる光と熱の光線に体ごと包まれる。視界が光一色となり、体のありとあらゆるところから焼かれている熱さを感じながら、マコトは意識を失った。






混合魔法【腐敗】 使用者:舞踊 真

土と闇の混合。微生物を生み出すことができる魔法。自らに都合の良い微生物を生み出すことができ、腐らせたり、細胞を修復させることも出来る。ただし手のひらからしか出せず、自分も微生物の影響を受けるので注意が必要。


マオがやったこと

魔導銃で”ドッペリアル”を使って、カレンの姿に変化して、自身の【声帯模写】も併用してマコトを騙して防御も回避も間に合わない程の隙を作った。マオは風と光の魔法しか適性がないので水の”ドッペリアル”は自分で使うことができないですけど、魔導銃なら事前に弾に魔法をこめておけば使えます。

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