腐敗した心を穿て その二
Q、ガードも回避もうまいやつを倒すにはどうしたらいいか?
A、防御が間に合わない程多方面から攻撃する
正直これをやられると大抵の人も魔物も負けると思う。戦いは数って偉い人が言ってた気がするし。私たちの一番の利点は数がそろっていることだからね、それを活かさない理由はない。
マコトは腹を手で抑えてよろよろと立ち上がる。魔力での防御も間に合わず結構いいダメージが入ったっぽい。
「ハァッ……!ハァッ……!やるじゃねぇか……!」
マコトが怨嗟の籠った目で私たちを見てくるけど、額からは大粒の汗を流している。それでも、立ち上がることができている時点でやっぱりこいつは化け物だと思う。それに……
「ぜってー苦しませて殺してやるからな……!」
目の前のこいつはまだ勝つことを諦めていない。私ならこんな状況になったら逃げの一択だけど、それをしないということは私たちに勝つ可能性がまだ残っていると考えているってことになる。なにか奥の手があるのかもね。
切り札を最初から使う奴なんていない。大富豪でもスぺ3が出てないのにジョーカーを切るやつがいないのと同じ理屈だ。相手の底が見えていないっていうのに切り札を使えば負けるのはこっちだ。――奥の手は必ず殺せるときに使ってこそ意味がある。油断なんて一切できない。
再びリファの背に乗り、相手の出方をうかがう。次の瞬間、マコトがいくつもの岩を生成し私たちに向けて放つ。それを空へと飛び立つことで躱すリファ。カレンもちゃんとガードしてるみたい。
「死ねっ!!!」
「!?」
空を飛んでいる私たちに向かってマコトが迫ってくる。どうやらリファが一番厄介だと思って、真っ先に狙いに来たらしい。空中から一方的に攻撃される可能性があるしね。前にルートさんたちから逃げる時にやっていたカタパルトみたいにして空へと飛んできた。その勢いのまま私たちに触れようと手を伸ばしてくる。
『無駄だ』
その一言と共にリファの起こす風によってマコトは吹き飛ばされる。それでもマコトは宙に岩の足場を何個も生成して、パルクールみたいな動きをして私たちに迫ろうとするが……
『分からないか?空は我の領分ということが!』
流石に空中ではリファに優位があるようで、今度は地面に向かって風を起こし、マコトを叩きつけるように吹き飛ばす。落下中にも魔導銃で何発か魔法を撃ったんだけど、流石に岩でガードされた。うーん、やっぱり初級の攻撃魔法じゃ、あの岩を破壊することはできないか。
土煙をあげ地面へとぶつかったマコトを見て、私たちも地上へと戻り、リファが地面へと足をつけた瞬間……
『!? これは!?」
「どうしたの?」
『地面が沼のように……!』
「!」
あいつまさか地面を腐らせたの!? リファが地面に足を取られ動きにくそうにしていると、煙の中からマコトが飛び出してくる。
「次こそ!!」
「させない!」
動けないリファたちに迫ろうとしたマコトだったが、カレンに邪魔をされている。その隙に私はリファの背から降りて
「ちょっと痛いかも、我慢して」
リファの足元に風の魔法を撃ち、地面を破壊する。液体のようになった土が風によって吹き飛ばされ、リファは足を抜けることに成功した。私の魔法の余波でリファに多少傷がついたけど、あまり問題はなさそう。
「チィ……だめか……!」
それを見ていたマコトはそう呟くが、次の瞬間には炎の矢と火の球がいくつも迫る。マコトにとって見飽きたそれを、いつもどうり躱そうとするが……
「見飽きたのよそれは!」
「!?」
見飽きたのはマコトだけではなかった。いつぞやの狼の時みたいに、カレンが炎を破裂させ、全方位の炎の散弾を浴びせる。流石のマコトも全方位の攻撃ではかわすことができずに喰らってしまう。
「あっ……つぅ…………!」
マコトが火傷で怯んだのを見たのか、カレンはここで決めんとばかりに自身の混合魔法を使おうとする。勝利が見えたことでカレンは見逃してしまった、マコトが邪悪な笑みを浮かべていることに……
(なんかおかしくね?)
一連の流れを見ていた私の感想はそれだった。あまりにも上手くいきすぎている。あんなに苦戦した相手がこんなにも簡単に追い詰められるとは思ってなかった。
そもそもの話、翼生えてる奴に空中戦なんて挑むふつう?それにカレンの散弾喰らった時も躱すんじゃなくて、岩の壁作ってたら防御できてたんじゃ……なんていうか誘導されてる気がしてならない。
私が不安を抱えていると、頭の中から魔女たちの声が聞こえる。
(他にも変なところがあるぜマオ)
(サラ! 変なとこって?)
多分、戦闘が始まってからずっと見てたであろう魔女たちが言う変なとこって?こういう時魔女たちって便利だと思う。私よりずっと戦闘の経験があるから、その知恵を借りれるし。
(そこの建物の壁を見てみな)
(え?)
言われた通り壁を見てみる。よくある石レンガが均等に並べられた壁だが、今は戦闘の余波で崩れてしまっている。辛うじて残っている部分はあるものの、一部分だけ虫食いのようにボロボロになっている。多分、あいつのデュアルの跡だと思う。
(あれがなに?)
(実はその壁…………あの男は触れてないんですよマオさま)
「!?」
触れてない?どういうこと……あいつのデュアルは触れることが条件のはず。なのに壁が腐ってるなんて……。
…………もしかして
「あいつのデュアルは”触れた物を腐らせる魔法”じゃない?」
魔女たちの情報が正しいとそういう結論になってしまう。でもあり得ない話じゃない。なんせあいつ自身が自分のデュアルについてばらしてたし、嘘をついていた可能性がある。
だがここで疑問が出てくる。ならマコトの本当の混合魔法は何だという問題が。
(落ち着いて……あいつは何回もデュアルを使ってる。少しでも違和感に感じたことを思い出せば……!)
もしあいつが自分のデュアルを偽ってたとしたら……かなり危険だ。不意を突かれてそのまま殺される可能性がある。なにか……なにかおかしなところ……
「そもそもあれってどういう原理で腐っていってるの?」
んー、あいつの魔力が付いたところが腐るとか?だから触れて自分の魔力を相手につけないといけないとか。それに魔力は肉眼で見ることができないし。…………こういう時は
(一緒に考えて魔女たち)
(いいわよ~マオちゃん)
(まずさ、あいつの魔力が付いたところが腐る説はどう?)
(…………それはないと思うわママ。私が魔力感知で見てみたけど、腐った部分に痴れ者の魔力は感じないわね)
なら違うか……。流石にこの一瞬で魔力が霧散することはないし、この説はハズレか。なら一体……
私はさっきの腐った壁をよく観察すると、あることに気づいた。
(ん?なにこれ? なんか細い線みたいに腐ってる部分があるんだけど?)
壁には大きくボロボロになっているところから、線みたいに何かに繋がれてるように腐ってる部分があった。
(糸か何かを引きずったみたいってゆうか……なんかネズミみたいに小さい生き物が移動したあとみたいな……どゆこと?)
さらに増えた謎に頭を悩ませていると、ソティスから新たな情報が来る。
(その線みたいなの、さっきあいつが地面を沼みたいにするときに触れてた場所と繋がるね)
「マジ?」
思わず声に出てしまった。でもこれはなにかしら関係があると思う。結構、情報が出てきたんだ、考えろ……、考えろ……
腐らせる……、線みたいな跡……、目に見えない……
「もしかして…………」
私の脳に一つの考えが思い浮かぶ。そうじゃん、こんな条件を満たすのなんて一つしかないじゃん。
「あいつのデュアルが分かったかも…………って、マズイっ!?」
もし私の予想が当たってたらカレンが危ない!!
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私が【太陽】に使う魔力を練ろうとしたとき、急に加速したマコトが私との距離を一瞬で詰める。
「なっ!?」
そのまま私に向けて手を伸ばしてくる。不意を突かれた私は体が硬直してしまい動けずにいた。なんで……さっきまで痛みでうずくまっていたはずでしょ……!
カレンがマコトの体を見ると目を見開いて驚いた。マオによって負わされた腹の傷とさっきの火傷が見る見るうちに治っていく。なんで……治癒系の魔法は混合魔法しかないはず……
カレンとマコトの手がわずか数センチのところまで来た時、二人の間に影が割って入る。その影の正体は……
「マオっ!!」
カレンの目線の先にはマコトに左腕を掴まれたマオの姿があった…………
マコトを強く演出したいんですけど、読み返してるとそうでもない感じが……
でもこいつルートとウェンから逃げきってるんだよなぁ。




