真実
ボキボキと腕を鳴らしながら男に歩み寄るクラーク。
「早いとこ済ませちまうか」
クラークに迫られた男はナイフを拾い、後退り(あとずさり)をする。
「くっ……鏡が効かんなら、物理的に殺すまでだ!!」
ヒュン!!
と、男はいきなりナイフをクラークの方に投げてきた。
しかし、
「何!?」
クラークは右手の人差し指と中指で素早くナイフを受け止め、下にそれを叩き落とした。
「!!」
「しばらく寝てもらう」
ゴボッ!!
クラークに殴られ、男は気絶した。
クラークは、傍で気を失っている二人を見た。
(どうやら他に敵はいないようだな。見たところ、こいつらは魂だけ霊界に連れ込まれたようだ……とにかく、霊界の入り口を探すか……ジェシカがいれば探すのも楽だったが……)
クラークは、しばらく周囲の壁を触ったり床を叩いていたりしていたが、そうやっている内に、床に転がっている、男が使っていた鏡の中に霧のようなものが映っているを発見した。
(ここか)
クラークが鏡を拾って何回かそれを叩くと、鏡の中から歪んだ空間のようなものが漏れ出してきた。
「どうした? 逃げていてばかりでは終わりが来ないぞ」
「逃げていてばかりっつーか」
「反撃できる体が無い!!」
“切断魔”「ジョニー・ザ・カッター」と名乗る男から逃げ続ける二つの人魂。
「あんた達の目的は何だ!!」
「目的ね……」
呟くように言うと、ジョニーは着ている布から何かを取り出して二人に見せた。
「これ何だと思う?」
それは、一枚の紙だった。絵が描かれている。
「?」
「これが、これこそが、バーレノンの町民共が大切にしてきた宝さ」
「!!」
驚きの事実に、二人は動きを止める。
「そう、つまり俺達の自作自演さ。俺が宝を奪い、あの対魔霊師がガキを連れてくる。町民達に、約束を守れなかった後ろめたさを与えておいた方が、奴らは動きづらくなるだろ?」
「な……お前ら!! なんでそんな事を!!」
ケントの問いかけに、ジョニーは笑って答える。
「あの方からの命令さ。あの絵には何かしらの力があるらしく、ガキ共の魂はあの方の原動力になる」
「あの方!? まさか…………」
ジェシカが続きを言おうとすると、二人とジョニーの間に歪んだ空間ができ、中からクラークが現れた。
ケントとジェシカ、そして、気絶した対魔霊師の男の体を掴んでいる。
「クラーク!!」
「お前らの体だ」
クラークは魂だけのケントとジェシカに二人の体を投げ、二人は無事、魂を体に入れることができた。
「ふう……」
「危なかった……」
すると、いきなりジョニーが鋏とカッターナイフで襲ってくる。
「!!」
「会話なんてしてる暇かな?」
三人はギリギリ避けたが、服が破れてしまった。
「その姿は……」
服が破られたせいて、ケントとジェシカの腹とクラークの腕が丸見えになった。
そこには、青く光る傷と赤く光る傷が無数にあった。数で言えば、赤い傷の方が多い。
「くっ……!!」
「成る程。つまり、お前達は、我らの主に命を吸われたというわけだな」
「つー事は、お前!!」
ケントが叫んだ。
「ああ、私は、『血塗れ(ブラッディ)皇帝』様の部下の一人さ。見る限りでは、『死の呪い』を受けた当時の余命は三年、お前らの今の余命は半年といったところだな」
三人の対魔霊師は黙ってそれを聞いていた。
そう、全ては、三年前、『ブラッディ・エンペラー』が彼らの故郷にやって来た事から始まった。




